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N-156 大戦への計画

 

 ディーさんが席に戻るとラミィさんが席を立つ。

 腰の小さなバッグから同じようなレーザーポインターを取出す。


 「次に、エイダス島周辺の状況とエイダス島内の状況です……」


 大陸の西端が映し出される。その橋から南西に200km程の距離に俺達のエイダス島がある。

 こうして見ると、敵軍にそれ程離れていないのが分かるな。

 直線距離では500kmを切ってるぞ。

 

 「西からの軍勢はまだ、エイダス島の存在を知らないと考えます。それを知るのは、この西の王国と戦闘状態に入り、この島の存在を捕虜等の洗脳過程で知ってからになるでしょう。連合王国と小競り合いを生じてから数年が経過していますが、未だに敵軍の兵器は槍と棍棒等それに魔法が主力です……」


 槍と棍棒、それに石斧というところだな。石器時代の戦みたいだ。だが、魔法ははるかに威力がありそうだ。火炎弾の色が赤ではなく白に近い。それだけ熱量があるってことなんだろうな。

 【メルト】も飛距離、威力共に5割増しに見えるぞ。

 接近されたらひとたまりない。明人さん達が銃にこだわる理由はこれなんだろうな。


 「現在、大陸に近いこの大きな島に集結していますが、その規模はガレー船200隻を超えつつあります。このままで推移すると、今年中に300隻を超える軍勢がこの島に集結するでしょう。

 この島での食労調達は殆ど不可能。何れ限界定数に達する筈です。その直前に一気に東に侵攻すると考えています」


 島に駐屯する兵士を食わせねばならないからな。次々と食料を積んだ輸送船がやっては来るんだろうが、何れ限界が来る。

 30隻のガレー船に積める荷物の量はそれ程多くはないだろう。


 「そのように考えると敵軍の侵攻時期がある程度推測出来ます。

 これが、昨年のガレー船のサーマル画像。そしてこれが現在この島に向かっているガレー船のサーマル画像です」


 一目瞭然だ。今向かっているガレー船の発熱量が殆どないぞ。


 「以上から、今年中には大陸西部への侵攻が開始されると推測出来ます。

 その侵攻ルートですが、仮に5万を想定するならば南北に陽動部隊が先に出て、主力が中央と言うことになるでしょう。

 これは現在の東の戦闘から推察が可能です。

 もし、大陸を南に回りこむ船団が出て来た場合、この島を9割の確率で発見されると推察します。次の年以降も継続して侵攻してきますから、早ければ来年。遅くとも数年以内にエイダス島は敵に存在が知れることになります。

 そして、この王国との戦闘によって得た捕虜から、エイダス島の内情が分かることになります」


 2、3年でエイダス島の内部情勢まで敵に知られるという事か。

 それだったら、悠長に結婚式を挙げてる閑などないはずだ。

 ……だが、待てよ。今の内にって事か?

 つかの間の平和を謳歌することも大切だと言っているのか?


 「そして、エイダス島の状況については現在4つの勢力が入り乱れています。

 パラム王国はエイダス島の四分の一を版図にしましたが、これ以上版図を直ぐには増やせない状況です。そして、他の3国は貧弱な武装で互いに睨みあっています。

 もし、敵がエイダスを狙うなら内海に船を入れて一気に3方向に軍を進めるでしょう。

 東のサンドミナス王国は瓦解します。西の旧ガリム王国に展開している軍勢も同じです……」


 基本は人海戦術だが、厄介なのは威力のある魔法だ。そして彼等には空を飛ぶことが出来る。

 上空からの【メルト】は爆撃並みに効果があるだろう。それに呼応して地上の兵が白兵戦を挑んで来たら、パレト装備の軍隊では防ぎようがないだろうな。


 「これが侵攻一月後の勢力図になります」


 エイダスの四分の三が敵の勢力に変わっていた。

 残ったのは俺達のパラム王国のみだ。


 「どれ程の難民が流入すると……」

 「約5万を推測しています」


 俺の質問にラミィさんが即答で答えてくれた。

 色々とシュミレーションした結果なのだろう。となれば、偏差を加味して4.5万~6万程度に集束したということかな。


 「現状ではこの状態で100年程度拮抗して、その後敵に飲み込まれることになります。

 その要因は食料の欠乏と弾丸不足によるものと推測します」


 ジリ貧になって飲み込まれるという事だな。

 

 「以上を鑑み、港を1つ新設することをお勧めします。位置は東岸のこの場所になります」

 

 ラミィさんが次の画像に切り替える。

 そこに映し出されたのはパラム王都の東岸だ。

 

 「波が荒く港には適しませんがここに隠蔽形の港を建設します。また、王都までの掩蔽壕を作って物資の補給路を確保します。波は消波装置を設けて入港時のみ作動させます」

 

 港は崖を利用した地下構造だ。隠蔽壕は四角形の管を並べたような感じさが、一辺は2m程だぞ。

 

 「周囲を森に変えるならこれで十分に隠匿できます。

 そして王都ですが、航空攻撃に耐えるように、また対空攻撃が可能なように改造する必要があります。更に、洞窟の村への避難ルートを2つ作ることをお勧めします。

 洞窟の村を補給基地として使えますし、非戦闘民を避難させる事も出来ます」


 とんでもない工事だぞ。そんな事が出来るのだろうか?

 

 「この状態まで工事が終れば、永続的に敵と対峙することが可能です。年間の死傷者数およそ1500程度で推移するでしょう」

 

 ゼロには出来ぬという事か?

 その1500人でさえ俺達には貴重な人材だ。

 ラミィさんが席に戻り、今度は明人さんがその場でレーザーポインターを握る。


 「以上の工事は連合王国で対応しよう。少し手伝ってもらえれば早く出来るだろう。その見返りを今から説明する。

 俺達の見返り条件は2つだ。

 1つ目は、内海を睨む旧ボルテム王都の砦の一部を貸して貰いたい。

 2つ目は、ここから北東の山間に10M四方の土地を貸して貰いたい。

 この2つだ」


 「上手くいけば、死傷者を二桁に出来るわ」


 美月さんが明人さんの言葉に続ける。

 

 「ひょっとして、航空基地ですか?」

 「そうだ。ある意味、エイダス島は理想的な位置にある。砦に併設した基地で島全体をカバーして、北西の基地を使って大陸西部を攻撃する。一応、連合王国の西部には防衛線を構築しつつあるが、連中の攻撃は半端じゃないからな。事前に刈り取れればそれに越したことはない」


 それ程の敵という事か?

 そして、明人さん達には、敵への憐憫が全くない。

 まるで害虫駆除に思えるぞ。

 ユングさんも核で攻撃したって言ってたからな。

 

 「血も涙も無しか……」

 「彼等が勝利を得たら、人間は家畜だ。狩られて餌にされる。戦闘員は全て洗脳だ。形を変えて悪魔にされる。何度か接触したが意思は通じなかった。そして戦だ」


 アルトスさんの呟きにユングさんが応えた。そして立上がる。


 「大きく3つの種族がいる。先ずは戦闘員のサルだ。サルには2つの種類がいる。この大柄な奴はガトルを素手で倒せるぞ。そしてこの小柄な奴は【メル】を使える。

 次に悪魔だ。サルを率いる士官だな。背中の翼で空を飛べる。そして【メルト】を使う。かなり厄介な奴だ。

 最後に、これがルシファーになる。こいつが来るとは考えにくい。そしてこいつが悪魔やサルを作っている。

 かなり特殊な体を持っていえるらしく、こいつらは俺達と同じような食物を食べない。

 人間を何か巨大なものに食べさせ、そいつから体液を吸い取っている」


 「人間を食べさせているのか?」

 「俺が見た時はそうしていた。周囲の獣はサル達が狩りつくしたんだろう。それ位の数がいたからな」


 吐き捨てるようにユングさんが呟いた。現場を見ている感じだな。

 さぞかし凄惨な光景だったに違いない。

 

 「数百年の調査で、ある程度のことは分かっているが、謎の種族である事は変わらない。そして、2千年以上前に彼等とお前達の先祖が戦ったことも事実なのだ。

 魔族との戦いとして、伝説にもなっている。聞いたこともあるだろう」


 確か、カラメル族の協力で何とか追い払った。という話だよな。

 その時に爆裂球を多量に使ったらしい。

 そして、再びカラメル族は水中に帰って行った。ということになる。

 基本的に、あまり俺達には干渉しない立場を取っているのだろう。

 その理由は、彼等の科学力が戦に使われないようにする為だとも聞いたぞ。

 地上の全住民を根絶やしにするような大戦は、俺だって望まない。

 だが、力を得たものは使いたがることも確かなのだ。


 「問題は、彼等がこの地で生まれた種族ではないということだ。そして俺達はこの地で生まれた種族。この地は俺達のものだ。

 仮に、彼等が小さな版図で平和に暮らしているなら、俺達だって彼等を許容することはできるだろう。

 カラメル族はこの地で生まれたものではないが、俺達を常に見守り続けている。

 だが、彼等はこの地で生まれたものを根絶するつもりなのだろう。僅かに自らの食料源とする者達を除いてな」


 「俺達の地は俺達で守るという事か……。基本ではある。だが難しいことも確かだ」

 

 明人さんの言葉にエクレムさんが呟く。

 平和が大切なのは俺でも分かる。だが平和は与えられるものではなく、俺達が自ら作るものだ。精鋭部隊が版図の境界を守っているからこそ、版図の中が平和でいられるのだ。


 ある意味、俺達は連合王国の武力の傘の中にいるようなものだ。

 だが、甘んじることは俺達の矜持が許さない。

 いくら美月さんが理想的な社会を目指そうとしても、それが俺達の理想とは限らないのだ。

 

 「この場では即決出来ません。俺達の社会組織は元老院制に近いものがあります。俺はそれでも良いと思っていますから、一度皆で話し合ってみます」

 「それで良い。権力の集中は危険なものだ。だが、戦の最中にそれを持ち込んではダメだぞ」


 それは承知している。明人さんに頷いておく。

 

 「それでだ。航空基地には各々2小隊分、8機のイオンクラフトを提供する。攻撃機と言えば分かるな」

 「設計はユングさんですか……。という事は、襲撃機に近いものですね」


 俺の言葉ににこりと笑みを浮かべる。

 敵の掃討に特化した機体ということだ。爆弾も積めるが、それよりは機関銃を多数積み込んで地上を掃射するものだろう。

 

 「乗員3名。機関銃は供与したものが8丁積んである。地上掃射は6丁で固定だが、機体の左右に1丁ずつ機銃があるぞ。爆弾は爆裂球を使ったものだが1個30kg程の重量だ。火炎弾と炸裂弾、いずれかを機体内に4個積める」


 「それが8機ずつ供与されるということですか」

 「そうだ。版図を守るには十分だと思う。俺達は北の航空基地を万全の体制で維持する。ここからなら敵の東進を妨害出来るからな」


 阻止することは出来ないってことだな。

 たぶん中隊規模でやって来るんだろう。一度に攻撃する機体数を8機とすれば、横一列に並んだ機体からは64丁の機関銃で地上を掃射することになる筈だ。

 あの機関銃に付属する弾装は120発だから7千発以上が敵に降り注ぐことになる。

 だが、全て当たったとしても一度に削減できるのは7千人。実際には千人に届かないだろう。

 かなりの頻度で出撃することになるな。

 そして、それだけ敵の的にもなるだろう。基地を万全の体制で維持すると言うことは、どんな兵器を持ってくるのだろう。


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