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N-142 レムナム軍の動き


 季節はすっかり秋だな。

 それでもって、この別荘はすっかり西部劇の風景に変わってる。

 腰にリボルバーを下げて颯爽と闊歩してるアイネさんの背中にはテンガロンハットが付いてるし、ドアの近くの銃ケースには数丁のウインチェスターが立てかけてあった。

 アルトスさんなんかは肩に薄い毛布を畳んで掛けてるから、完全にその世界に入ってるぞ。

 何でも、正式の軍装にするんだとか言っていたが、ちょっと違うんじゃないかな?

 銃が届いた時に、古い西部劇の映画なんか上映するからこんなことに成ってしまった。


 まぁ、士気が低下してる訳ではないんだが……。ユングさん達のように体に張り付いたような戦闘服を着られるよりはマシかも知れないな。

 そう思って我慢しよう。とは言うものの、俺も気に入っていることは確かなんだけどね。

 腰の後ろのホルスターの代わりに、ガンベルトを作ってもらってそれを腰に巻いている。ベルトに付いた弾丸は全てウインチェスター用だ。

 何となくこのベルトだと弾が付いてないとしっくりこないからな。


 そんな服装で金属製のカップでコーヒーを飲むと、映画スターになった気分だな。

 なんか、あの映画が凄い人気だったから、自分達で作ってみるのもおもしろそうだ。でも、全員が主役をやりたそうだし……。

 ここは、輸入することで何とかしよう。映写機とフィルムがあれば簡単だしな。


 「アルトス殿とエクレム殿が来ております!」

 「通してくれ」


 護衛の兵士もウエスタンルックだ。

 そして、入ってきた2人も当然のように似合ってるぞ。

 

 「現在の状況を報告に来たぞ」

 「どうぞ座ってください。……それで、何とかなりそうですか?」


 テーブルの上にあるエイダス島の北東方面の地図にアルトスさんとエクレムさんが駒を修正しながら伝えてくれた。


 エクレムさんの守る森の南は、歩兵2個中隊とバリスタ兵2個小隊が配置されている。

 

 「サンドミナス王国には俺達を襲撃するだけの兵力が足りん。現在確認されている兵力は歩兵6個大隊。こちらを狙うにはボルテム砦に左を突かれかねない。2個大隊を襲撃部隊にするなら、1個大隊を左への備えとせねばなるまい。

 そうなると、海岸地帯を守る兵力が3個大隊……。これでは、レムナムの上陸部隊を防ぐには難しいだろう。そして、レムナム王国が俺達を狙うならば、旧ガリム王国を奪取する良い機会でもある」


 もし、兵力が後3個大隊あれば、話が違ってくるだろう。

 俺達からは攻撃に出る事など到底出来ないが、襲ってくる事も無いだろう。森の南に作った砦と柵それに堀を有効に使えば、突破されるにしてもかなりの時間的余裕を俺達は持つことが出来る。その間に、部隊を派遣すれば良い。


 「王都の西は歩兵3個中隊とバリスタ3個小隊、それに榴弾砲1小隊だ」


 バリスタ1小隊はバリスタを8基装備している。榴弾砲1小隊は105mm榴弾砲が4門だ。

 

 「機関銃が配備されれば、バリスタを2個小隊に縮小して機関銃小隊を1つ作る」

 「そして、北の砦はメイヒムが担当だ。歩兵が1個大隊、バリスタ1個中隊に榴弾砲が1個中隊だ。このバリスタ隊は、2小隊が1分隊2丁の機関銃を装備している。さらに屯田兵が1個中隊に民兵が同じく1個中隊」


 兵力的には2個大隊だが、火力はとんでもないな。

 

 そして、王都守備隊が2小隊いる。

 武装は歩兵がボルト式ライフル銃で、他の部隊はウインチェスターだ。中隊長以上が45口径のリボルバーを持っている。

 どうにか、これで対応が出来るだろう。エイダス島の他の王国がこれを破るには5倍の兵力が必要ではなかろうか?

 となれば、鉄壁の備えに近い筈だ。


 「ラクトー山はどうなっていますか?」

 「ライナスがハンターを20チーム率いて、ラクトー山の西を見張っている。常に10チームが見張っている筈だ。武装は全てボルト式ライフルを装備している。狩りには向いていないから、半数装備で対応しているらしい。全員が散弾銃を持っているから、イザとなればそれなりに対応できるぞ」


 「問題は、レムナム軍です。やはり傭兵部隊がやってきました。規模は予定より多くて4個大隊。前進を始めるのは俺達の予想を裏切って初冬になると思います。それが出来るのは北に作った集積所のお蔭でしょう」


 問題はその傭兵部隊にレムナム軍をどれだけ投入するかだ。現在はむりな徴兵を敷いているようで兵力が6個大隊程存在する。

 サンドミナスとのにらみ合いがあるから精々、投入出来るのは2個大隊。

 旧ガリム王国の版図には旧ガリム王国の王族達がまだ少ない兵力を使って襲撃をしているようだ。

 この部隊とサンドミナス王国は連合関係にあるから、レムナム王国はかなりの部隊を残さざる終えない。

 それとも、傭兵の半分をこれらの掃討に使うのだろうか?

 その見極めは難しいが、やはり遠征軍に使えるのは最大で4個大隊と見るべきだろう。

 

 「かなりな数だな……」

 「その上、アルトスの砦にも陽動を掛けるんだろう?」


 「一応戦略ですからそうなるでしょうね。アルトスさんの部隊への陽動はかなりの大きさで行う筈です。俺達の部隊を集結させるためにね。その隙を狙うわけです。予想もしない初冬にです」


 俺達が科学衛星の画像を見ることが出来なければ、かなりの確立で成功する作戦だろうな。

 だが、俺達はこの島全てを見ることが出来る。

 その目論見の裏をかくなど簡単なことだ。


 「弾丸はその後も供給されているんですよね」

 「十分過ぎる数が供与されている。長老の話では、低位魔石が足りないらしい。2つの迷宮に残りのハンターが潜って対応しているそうだ」


 ライフル銃やリボルバー等の弾丸は形こそ俺の知る弾丸に似ているが、雷管を魔石の粉末で代用しているようだ。

 火薬自体は黒色火薬を使っているのだろう。硝煙が結構出るようだ。


 「低位の魔石ですか……」

 「昔の銃を分解して魔石を交換している始末だ。ハンター連中からそうやって数百の魔石を取り出して、商会に提供している」

 

 「前の戦で鹵獲した敵の銃も使えそうですね」

 「とっくにそれは終了してる。これからは迷宮で得られる魔石が貴重な資源となるだろう」


 2つの迷宮に常時10ずつのパーティが潜っているそうだ。

 平均レベルが白の高位って所らしい。バリアントやケルバスを倒して魔石を得るには丁度良いな。

 遺跡の迷宮には連合王国からのハンターも訪れているらしいが、やってくるのは黒の連中らしく、低位魔石を余り手に入れる事は無いようだ。

 

 「商会の話では、商人を使ってサンドミナスの迷宮から算出する魔石も手に入れているようだ」

 「確か砂漠地帯に迷宮があるんでしたよね」


 「深くは無いがな。それでも中位魔石は得られるだろう。だが、あまり数が出ないらしい」


 それでも、ある程度は数を揃えられるだろう。

 連合王国には迷宮はないが、魔石を得られる魔物はそれなりに生息しているようだ。

 連合王国としては、幾つあっても足りないくらいだろう。

 だが、エイダス島の迷宮が、果たして何時まで存在するのかも疑問なところだ。

 やはり、産業を考えておくべきだ。

 最低限の自給自足が出来ないと俺達の王国は何時か無くなってしまう。


 「とりあえず、弾丸の備蓄は進めないといけないでしょう。擲弾銃は接近戦では威力があると思います。それにあれは俺達の国で作れますからね」

 「歩兵部隊に分隊毎に支給してある。それを支給できたから、エクレムのところの部隊数を削減できたんだ」


 とっくに対応済みか……。ならば、特に言う事も無いな。


 後は、レムナム王国の動きを見ているだけで良いだろう。

 初冬に攻め入るのであれば、そろそろ動きが見える筈だ。

               ・

               ・

               ・


 ある日、情報端末の画面を眺めていると、レムナム軍の軍団が東に動いているのが見えた。

 予想に違わず、5個大隊が列をなしている。

 キチンと整列しながら行軍しているところを見ると、傭兵は他国の正規軍と見て良いだろう。

このまま進めば、10日程でいよいよ戦が始まりそうだ。

 指揮所の片隅で通信機を睨んでいる通信兵を呼び寄せ、簡単なメモを渡す。


 「急いで、全軍に通達してくれ。港近くの町にも連絡して欲しい。長老がまだあの町にいるはずだ」


 メモを受取った通信兵は、もう1人と通信先を分担して電鍵を叩き始めた。

 エルちゃんがお茶を持ってきて俺の隣に座る。


 「動いたんですか?」

 「ああ、動いた。俺達に後3個大隊があれば、一気に湖周辺を版図に出来るんだが……」


 「版図が大きくなれば、それだけ兵力を維持しなければなりません。無理をしないでとフラウさんが言ってました」


 ユングさんは俺をけしかけていた様な気がするな。

 あの2人のコンビもおもしろい取り合わせだと思う。もう1人のラミィさんは大人しく2人の意見を聞いているけど、フラウさんってユングさんをマスターと呼ぶ割には、結構自分の意見をユングさんに伝えるんだよな。

 ユングさんには相棒に見えるんだろう。どちらかと言うとラミィさんが従者と言う感じに見える。


 「確かに、ユングさんの言う事よりもフラウさんの言葉の方が間違いはないと思う。それは分ってるんだけどね……」


 現状をどう見るかについては、フラウさんの言葉は正しいと思う。だが、将来を考えるならユングさんの言葉に重みが出てくる。

 情報分析と戦略と言う点ではいいコンビだよな。


 俺達もただ状況に合わせて対応するだけではなく。パラム王国の将来像をしっかりと考えねばなるまい。

 なにせ、将来的には悪魔にも備えなければならない事も分かっているのだからな。


 「とりあえずは、連絡だけしておけば問題はないと思う。サンドミナスが呼応してくると厄介だけど、この画面で見る限り、北への侵攻軍を組織しているようには見えない」

 「旧ガリル地方に侵入するのかと思ってました」


 「それは無理! 俺達はこの画像を見る事が出来るけど、レムナムやサンドミナスでは不可能だ。レムナム王国の軍隊がパラム王国に向けて進軍してるなんて全く分らないよ」


 そう言って、ちょっと気が付いた。

 お茶を飲みながら少し考えを纏めてみる。


 もし、レムナム軍がパラム王国に向けて進軍を始めたことをサンドミナス王国が知る事が出来たらどうなるだろう?


 少なくともボルテム王都の砦には圧力ぐらい掛けるかもしれない。

 いや、そんなことより旧ガリム王国へ進軍するんじゃないか?

 ガリム王国の残党は今でも活動をしている。その軍勢と呼応して動けばガリム王国に橋頭堡を作る位は出来そうだな。



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