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N-125 新しい町へ


 俺達6人の乗る馬車は、新しい町に向かって道を急いでいる。

 だけど……、ガルパス2匹が曳くこの乗り物を馬車と言って良いのか、ちょっと疑問だな?

 それでも、板バネの付いたこの馬車は座席のクッションと相まって揺れがあまり気にならない。あまり、曳き手を詮索するのもね。亀車きしゃと呼ぶのはどうかと思うし……。


 「たった、1年で町が出来たんでしょうか?」

 「連合王国の戦闘工兵部隊がそれだけ優秀なんだと思うよ。それに、ネコ族の人だって沢山協力してる筈だ」


 「でも、旧パラム王都が解放されたら、そっちに移動するにゃ。勿体無いにゃ」

 「だから、仮宮なんだ。あまり立派じゃなくて、実用本位に作ってあると思うよ。調度品は移動すれば良いしね」


 「でも、もうすぐ新パラム王国にゃ。兄様達も嬉しいに違いないにゃ!」

 

 シイネさんは窓から身を乗り出して、前方を見ながらそう呟いた。

 たぶんそうだろうな。パラム王都から民衆を逃れさせるために必死で戦った連中の最後の望みは、逃れ出た民衆達による新王国の建国だったに違いない。流浪の民ではいつしか民族の結束が無くなる。そうなったら新国家建設なんて無理だろう。

 上手い具合にあの洞窟を利用した村があり、且つネコ族を纏められる長老立ちが脱出出来たことが幸いだった。


 「旧パラム王都の魔物討伐を請け負ってくれるハンターは出て来たのでしょうか?」

 「それなんだけど、連合王国のハンターが名乗りを上げてくれた。

アルトさんとディーさんが30人のハンターを率いてくるらしい。こちらも10人程何とかならないかって言っていた。もう着いてるらしく、遺跡の迷宮に練習がてらに潜ってるらしい」


 「優秀なんでしょうね」

 「見て驚くな!って言ってたぞ」


 それが何なのかは教えてくれなかった。

 筋骨隆々な連中をあつめてきたんだろうか?

 最低でも黒6つと言ってたからな。相当凄い連中であることは確かだろう。


 「見えてきたにゃ! 大きいにゃ!!」

 

 シイネさんの言葉に全員が馬車の窓から前方を見る。

 確かに大きい。防壁の丸太の列が横一列になって続いている。相当、森が伐採されたんだろうな。どう見ても500mはあるぞ。

 そして、その防壁を越える高さの建物は少ない。

 此処から見えるのは門の櫓位だ。

 精々2階建てだとすると、木造建築が多いのだろう。

 俺達を乗せた馬車は、防壁に開いた楼門に向かって走り続けた。

               ◇

               ◇

               ◇


 楼門を抜けると広い通りが続いている。100m程の間隔で十字路が出来ている。区画整理は、火事対策でもあるから通りは10mを越す道幅がある。

 そして通りに面した建物はレンガ作りだ。これも耐火を考えたんだろうな。大火事になっても区画を越えて広がらないようにしているようだ。


 ガルパスの曳く馬車はそんな通りを曲って進んでいくと、正面に大きな建物が見えてきた。建物は他と同じようにレンガ作りの2階建てだ。


 建物の前に作られたロータリーで馬車が止まると、迎えに来たのは長老の世話係の若者だ。


 「お待ちしておりました。こちらにどうぞ」


 石作りの階段は横幅だけで10mはある。数段上ると、大きな扉があり拳銃を下げた衛兵が左右に2人ずつ控えていた。

 

 大扉から奥に向かって真直ぐに通路が伸びている。

 通路を歩いて行くと、左右に扉が幾つもある。話し声が漏れてくるから、誰かの仕事場なんだろうな。


 「さぁ、この先が謁見の間です。この部屋の左が王族の間で右が長老の間になります」

 

 大きな扉を開くと体育館位の大きさがある。その真中にはコの字型に開いたテーブルがあり、椅子が30程並んでいた。正面の椅子が他と比べて少し立派だから、あの席にエルちゃんが座るんだな。


 その後ろの壁には、大きな旗が飾ってある。

 白地の中心に大きな菱形が黒で描かれている。菱形の上下は旗の上下に届いているぞ。

 これが、パラム王国の旗だったんだな。


 「王族の間にご案内します」


 部屋の左手には扉が2つある。

 手前の扉を開けるとそこには2m程の通路が左右に延びていた。


 「ここが身辺警護をする者達の部屋でございます。クァル様達が暮すことになります」

 

 3部屋あるようだ。2つが私的な部屋であり、手前の部屋が執務室になるようだ。

 奥には扉があり、この扉の先が王族の間になるようだ。

 

 ちょっと、広すぎないか?

 これだと、誰がどこにいるのか分らなくなってしまうぞ!


 「食事は、とりあえず執務室に運ぶようにします。専属の侍女を2人派遣します。あの扉の最初の部屋が侍女達の控え室になっています」

 「あのう……、侍女はいらないと思うんですが」


 「各国の賓客の手前、体裁もあります。元は影としても働いた者達ですから護衛としても安心です」

 

 どんな人なんだ? 忍者みたいなことを言ってるけど。


 「クラリス達にゃ。これで少し楽になるにゃ!」


 アイネさんが喜んでるけど、今までだって楽だったんじゃないかな?

 毎日退屈凌ぎに散歩してた位だし……。


 夕食は執務室に運びます。と念を押して若者は帰っていった。

 アイネさん達と分かれて、奥の扉を開ける。直ぐ左に扉があったが、これが侍女の部屋って事だろう。更に奥に進むと扉が2つある。


 手前の部屋を開けると教室2つ分位の広さがある。

 大きな机が奥にあり、手前には10人程が座れるテーブルがある。

 暖炉の傍には柔らかそうなソファーがあった。


 右手に扉がある。そこを開くと、教室程の広さがある部屋で暖炉があるだけだ。床には丸い絨毯が敷いてあった。更に奥に部屋がある。開けると、キングサイズのベッドがある。寝室だな。


 最初の部屋に戻るとちろちろ燃えている暖炉の傍で、床に胡坐をかいてタバコを取り出した。


 「いやー、驚いた。もうちょっと簡素なものだと思ってたけどね」

 「簡素ですよ。規模は半分にもなりませんし、装飾だってありません。でも、ここが新王国の出発点になるんです」


 何時の間にか大きくなったな。

 王都から2人で逃げ出したのは10歳位だったんだろうが、今では16歳だからな。

 時の流れが経験と見聞を広げた訳だ。

 王都の一室で過ごすよりも遥かに、王族としての役割を自分で学んだに違いない。


 「それで、これからは?」

 「もうすぐ、私の誕生日です。それを機に新王国の宣言をすることになります。各国と言っても連合王国とレムナム、サンドミナスの3カ国ですが書状を出したようです。果たしてくるかどうかは判断に迷いますが連合王国からは王族が参加すると言っていました」


 連合王国は俺達を承認するという事だろう。はたして、レムナムとサンドミナスがどのような人物を送ってくるか……。ちょっと楽しみだな。


 「俺はその場で旧パラム王都から魔物を駆逐すると宣言する。果たして、あの2カ国が来てくれるかな。来てくれればその話を聞いてどんな反応をするか楽しみだ」


 夕食を運んで来た侍女を見て驚いた。確かに影と呼ぶに相応しい。だって、クラリスさんとケイリンさんは黒い姿だったんだ。そういえばエルちゃんは白猫みたいだし、アイネさん達は三毛猫みたいだよな。

               ◇

               ◇

               ◇


 「それでは、レムナムとサンドミナスも国王代理を派遣してくれるのですか?」

 「書状にそうある。じゃが、それは名ばかり。軍の指揮官それも次官じゃな」


 「我等の様子見と言うところでしょう。場合によっては降伏勧告文書を持参する可能性もあります」

 「なぁに、その辺は抜かりない。彼等の宿泊施設は港の宿じゃ。連合王国の庇護にある宿ではそうそう不埒な振る舞いは出来んじゃろう。式典直前の謁見は全て多忙の一言で切り捨てられる。持参した書状は無駄じゃな」


 謁見の間の反対側にある長老達の間で、俺達は今後の計画を確認している。


 「じゃが、南の森を焼き払うことは我等も考えもせんかった。しかし、その時期を間違えるととんでもないことになりかねん」

 「重々承知しています。旧パラム王都を過ぎた辺りが最適だと考えています」


 「森の半分を焼いて後にか?」

 「はい。今は森も葉を茂らせています。焼くのは大変ですよ。確かに油を相当入手したようですが、森の半分も焼けばそれらは尽きはじめるでしょう」


 「我等が手に入れた油は少し代わっているようじゃな」

 「燃える水と呼ばれる種類のものです。遥か東方より手に入れるようですが、火がつきやすくそれでいて何時までも燃え続けます」


 それをバリスタのボルトにくくりつけたツボに入れて投射するのだ。

 バリスタ50台で万遍なく森の端から焼き払う。

 火に驚いて森を逃げ惑う魔物が多いから森に近付くのは困難だろう。

 

 「既に50樽を森に運ばせた。精々1M(150m)ですが、現在の状況ではこれ以上森に深く入る事は困難だ」


 アルトスさんが報告してくれる。

 

 「すると、残りは100樽以上あるのか。俺達のところも20樽は森の中に運んでおいたぞ」

 

 できるだけ大きな火の手を上げる必要がある。

 それで足りるかどうかは疑問だが、爆裂球を結んで置いたそうだから、周辺に飛び散って火炎が広がるだろうな。

 

 「問題はその後じゃ。2個大隊で旧王都の西に陣を張るとなればレムナムと正面から対峙することになるぞ」

 「それは考えております。仮の防壁を作ります。足を止めれば敵軍が2倍程度なら対処出来るでしょう」


 「サンドミナスも同じか?」

 「基本は変りません。ですが、そっちは逃げ出した魔物が戻らないようにすることが主になるでしょう。正規軍2個中隊に民兵を2個中隊で守ることになります」


 「懸念はないのか?」

 「2つほど。

 1つは、サンドミナスが北を回りこむ可能性です。一応念の為に民兵を1個中隊派遣します。そして、北の石塀付近には連合王国の移民がおります。彼等は屯田兵出身。十分な備えになります。

 もう1つはラクトー山を強行突破してくる部隊ですが、猟兵部隊を配置しましたから、万が一の場合は岩山から中隊規模で応戦に駆けつけさせることができます」


 懸念ではあるが、対応措置は考えてある。

 

 「ふむ。エクレム達に疑問はないのか?」

 「しいてあげるなら、パラム奪回の後のこの町をどうするかですかな。旧パラム王都の復興には時間が掛かるでしょう。ですが完成した後には、この町に住む住民がいなくなるのではないかと心配です」


 「確かにな。我等ネコ族は王都は持っておったが町はもっていなかった。それは人口がそれ程無かったことにもよるが、人口を維持できなかった最大の理由は農業ができなかったからじゃ。この町は農業の拠点として残すつもりじゃよ。移民の募集も継続しておる。豊かな穀倉地帯に将来は変るに違いない」


 自給自足が出来なくとも魔石で穀物を輸入できた。

 だが、それには限度があるようだ。少しずつ、自給できる体制に持っていければネコ族の国は発展するんじゃないかな。


 

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