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N-115 後は待つだけ

 

 エルちゃんに起こされ、衣服を整えてタオルを手に司令室に向かう。

 司令室付きのレミー達やちびっ子通信兵達は何時もの場所で待機している。皆早いな。

 「お早う!」って挨拶すると、「お早うございます!」って元気に応えてくれたぞ。

 そんな彼等に片手を上げて、外に出ると階段の隅においてある桶の水で顔を洗った。

 

 レミーが準備してくれるんで助かるけど、桶の水は離れた場所にある食堂脇の井戸から汲んで来たらしい。

 さっぱりしたところで、先ずは一服だな。


 指令建屋の前の広場に向かって歩きながらタバコを咥えて火を点けた。

 朝日が真横から当ってるから、かなり朝早い時間じゃないかな。

 前の世界ならば絶対にベッドの中で熟睡している時間に違いない。

 

 部屋に戻ると、レミーに礼を言って、タバコを暖炉に投げ捨てる。

 そして、暖炉際のベンチに座りながら少年兵達に通信の有無を確認する。


 何も無いことを確認して、大きな作戦地図を前に座ると、部隊の配置を確認する。

 たとえ昨夜と同じでも、改めて気が付くこともあるからな。


 特に思い浮かばない……。

 次に、端末を立ち上げて科学衛星からの画像を確認する。

 先ずは、ボルテムの王都だ。


 座標をあわせると黒い煙に覆われた王都の姿が見える。

 東西それに北に布陣していた軍が王都の城壁に押し寄せていた。それを牽制するサンドミナスの軍が南にいた筈なんだが、……影も見えない。

 王族がいない軍ならば士気すら失われているだろうな。

 早ければ今日の内に王都は廃墟になるだろう。


 「エルちゃん、全軍に連絡だ! ボルテム王都への攻撃始まる。王都の火災は拡大中。」

 「始まったの!」


 「いよいよだ。どちらになるかはこれから分る。偵察部隊との連絡が取れるならそちらにも連絡しといてくれ。

 アルもガイネンさんとアイネスさんに伝えて欲しい。この関所が直ぐに攻められることはないんだが、その可能性が始まったからな」


 子供達が一斉に行動を開始する。

 そんな俺に食事を運んで来たシイネさんがお茶を入れてくれた。


 「食事は暖炉で暖めておくにゃ。そろそろ姉さん達を起こさないと、兄さん達の面目が立たないにゃ」

 そう言って、ミイネさんと奥の部屋に向かって行った。

 だけど、そんな天真爛漫な性格が俺は好きだけどね。亡くなった兄さん達もきっと妹達を可愛がっていたんじゃないかな。

 

 バタバタと皆が集まってきた。

 アイネさんとマイネさんは直ぐに部屋を出て行ったが、しばらくすると帰ってきた。

 さっぱりした顔だからどこかで顔を洗ってきたんだろうな。


 皆が机に着いた所で、状況を説明する。

 それ程差し迫った問題は無いが、いよいよ始まった事は確かだ。

 

 「全軍に伝達終了。村の長老にも駐屯地経由で伝えて貰います」

 「ありがとう。これで、当座の仕事は終了だ。後は、アルトスさんの部隊が出した偵察部隊からの知らせを待つことになる。何時来るかは分らないから、誰かかならず、無線機の傍にいるんだ。そして通信が入ったらランプが光るから、直ぐにエルちゃんに連絡してくれ」


 テーブルの全員が頷いた所で朝食が始まる。

 レミー達は食事に出かけたが少年兵はテーブルの端で俺達と一緒だ。ある意味特権かも知れないな。

 でも、本来なら遊び盛りの子供に仕事をさせてるんだから少し位は便宜を図ってあげても全体の士気に影響は無いだろう。


 「森の伐採を継続中だが、作業を急ぐ必要は?」

 「大丈夫だ。元々伐採しなくともそれなりに戦える関所だったからね。今回の伐採は、それを更に高めるだけに過ぎない。もっとも、伐採した木々で柵を作る位は始めてもいいだろう。そして、乱杭を打て。なるべく森から真直ぐ走って来れないようにするんだ。それだけ銃を射撃を浴びせる事が出来る。

 今なら、3回は可能だろう。それを5回にしたい。白兵戦で倒すのではなく銃撃で倒すんだ」


 「了解した。確かにネコ族は俊敏ではあるが力に劣る。兵達もその考えを聞けば士気を高められるだろう」

 「沢山、切り倒したから建屋をまた作れるにゃ。それに薪も十分にゃ」


 「エクレムさんが岩山の上にいるはずだ。あっちの方も柵を作るなら融通してほしいな」

 「ちゃんと確認して欲しい量を上回って送ったにゃ」


 なら安心だ。向うだって低い石塀だからな。柵は欲しいに違いないが、森から離れているのが難点だ。

 大軍をラクトー山の斜面に沿って移動させることはないと思うが、絶対ではないからね。


 「……で、傭兵が動くのは?」

 「早ければ明日の昼。遅くとも3日後には動く。だが、5日経っても動かない時は覚悟を決めてくれ。そして、出来るだけ沢山の木を切り柵を更に増やす。ここまで来るには一月は掛かるはずだ」


 9割以上の確率で動く筈だ。

 総攻撃の知らせは今日中に傭兵部隊に届くだろう。だが尖塔の略奪を夜間やるとは思えない。実行するなら明日、もしくは明後日だろうな。

 そして、少なくとも王都の部隊が移動を始める前には駐屯地を去ることが必要だ。微妙なタイミングで行なうことになるぞ。

 俺達の村を攻略するために、後続部隊がレムナムの王都を出ているんだからな。

 たぶんその知らせも受けている筈だ。

 

 朝食を終えると皆がそれぞれの場所に去っていく。

 今日はマイネさん達が頼んだお菓子の材料が届くらしい。それに少年兵達の装備もだ。

 お姉さん達4人が出掛けたのは、荷車をそとで待ってるのかな?

 

 「すみません。遅くなりました!」


 そう言って、部屋に入ってきたのはエルちゃんよりも年下の女の子だ。

 にゃが語尾に付かないからハーフなんだろうな。

 とことこと俺の所にやってくる。


 「通信機を使うエリィです。皆、こっちに来てると聞いてきたんですけど……」

 「それなら、あそこだ。エルちゃん。頼んだよ!」


 俺の声にエルちゃんが女の子においでおいでをしている。

 エリィちゃんはエルちゃんの所に走っていった。


 2人じゃなくて3人だったんだな。アイネさんは知ってるんだろうか?

 1人だけ服装が違うと可哀相だしね。


 そんな所にアイネさんとマイネさんが大きな袋を持ってやってきた。

 タイムリーというか、間が悪いというか微妙だな。


 「届いたにゃ! あにゃ? 1人増えてるにゃ。でも大丈夫にゃ5人分買い込んで置いたにゃ」


 そう言うと、3人を連れて奥の部屋向かった。着替えをさせるんだろうな。

 大雑把な性格が吉と出たようだ。ちょっとホッとする。


 「ミイネ達は食堂にゃ。早速作るって張り切ってたにゃ」


 マイネさんが俺に教えてくれると、アイネさんを追って奥へと向かった。

 それは楽しみだな。

 どんなお菓子か想像できないけど、兵士の中には女性もいるんだから少しは士気を上げることが出来るかも知れない。


 そんなことを考えながら、暖炉に傍にあるベンチに腰を下ろしてタバコに火を点けた。

 エルちゃんが隣に腰を下ろすと大きなポットからカップにお茶を注いでくれた。


 「あれ? アル達もどっかに行ったのかな?」

 

 「アイネ姉さん達と一緒になって朝出掛けましたよ」


 ふ~ん。伝令役も兼ねてるんだけどね。

 俺とエルちゃんだけにするのは問題だぞ。


 「貰ってきたにゃ!」


 そんな声とともに扉が開いてアル達が大きな箱を2人で運んで来た。

 そして、俺の傍にドンと置くと早速箱の梱包を開く。

 

 何か注文したっけ?

 出て来たのは時計だった。しかも鳩時計ってのがなんとも……。どこの世界に作戦室に鳩時計を置く奴がいるんだ!


 早速、エルちゃんとアル達が場所を選んでいる。

 そして、北の壁に付けることにしたようだ。俺の意見なんて聞いてもくれないのが寂しいぞ。

 だけど、エルちゃん達は時計を読む事が出来るんだろうか?


 その下には、数台の通信機が入っている。エルちゃんの持っているよりも遥かに小さい。ティッシュボックス位の大きさの無線機が丈夫な革のケースに収まっている。

 これは、エルちゃん担当だな。一緒に入っていたマニュアルを早速読んでいるから大丈夫だろう。俺も1つを手にとって読んでみると、通信範囲が10kmほどある。

 岩山の通信兵にも送ってやれば、その上に作った見張り所との連絡も容易になるな。

 

 「お兄ちゃん、これ便利だよ。基本は私のと同じだけど、本体に付いた電鍵とライトで通信が可能だから、直ぐに通信が送れる!」

 「皆で、どう使うか考えて運用すればいい。出来れば岩山にも何台か送ってあげたいね」


 俺の言葉にエルちゃんも頷いた。そうすれば一々外に出て通信を送る必要が無いからな。

 段々と司令室らしくなってきたな。

 2中隊というのが少し寂しいけどね。

 万が一の場合はハンターの応援が期待できるが、それでも小隊規模だろう。

 此処は、約300人で守る事のなるな。約3kmを300にんだから、10mおきに1人の勘定だ。かなり苦しい戦いになる可能性があるな。

 ここは、俺達のためにも傭兵の行動を期待したいところだ。


 そんな事を考えていると、奥の部屋からアイネさん達が少年兵を連れてやってきた。

 薄い革の長めの上着を幅広のベルトで前をあわせている。ベルトにはロアルのホルスターと弾丸ポーチ、それに腰には小さめのバッグが付いている。

 ちょっと気取ったハンターに見えるな。

 俺にも似合いそうな気がするぞ。


 「中々に似合うぞ。銃には此処にいる者が、許可するまでは絶対にカートリッジを装填しないこと。だが、万が一の時には慌てずに銃を使うんだ。アル!3日程数発撃たせて感触を掴ませて欲しい」

 

 ヒューって口笛を吹いてたアルにお願いする。

 

 「了解です。的当てじゃなくて、装填の仕方を中心に教えます」

 

 そういうと、3人を連れてアイネさん達と出掛けてしまった。

 まぁ、今は急いでする事も無いから、問題はないけどね。

 それに、装填は大事な作業だ。焦って多重装填でもしようものなら、銃が爆発しかねない。それを真っ先に教えるということは、アル達もそれをみっちり仕込まれたんだろうな。


 「村で、真似をする人も出て来ますね。中々格好が良いです」

 「そうだね。エルちゃんだって資格があるぞ」


 「私は、その前にハンターですからこの格好で問題ありません」

  

 そんなことを言ってるけど、ちょっとは食指が動いたんじゃないかな。

 エルちゃんの格好はアイネさん達と一緒だ。服は革の上下だけど装備ベルトの小物類は殆ど同じにしている。

 片手剣も、アイネさんに見立てて貰って王家伝来の片手剣は大事に保管している。

 意外と、お姉さん達と仲が良いんだよな。



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