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N-112 南の関所


 次の日、俺達の部屋に30近い壮年の男とアイネさん達より年上のお姉さんが訪ねてきた。

 エルちゃんがコタツに案内すると早速自己紹をしてくれた。


 「俺はガウネン。こっちは、アイネスだ。第2大隊第3中隊と第4中隊の指揮を執っている。今回、レムル殿が我等と共に関所を守ると聞きまして、出発前に一度会っておこうと参った次第」

 「私も同じにゃ。サンドミナスの侵攻を頓挫させて、昨年はレムナムのガトル族を敗走させたと聞いたにゃ」


 「実際に戦ったのはアルトスさん達です。俺は助言をしただけですよ。ギルドレベルも低い駆け出しハンターです」

 「それでも、長老の左手に座り、アルトス殿の幕僚の資格を持っている。我等は明日にも出発するが、用意するものがあれば手配する」


 意外と硬い人だな。

 真面目すぎるから部下は苦労しそうだな。任務に誇りを持ってるのは判るけどね。


 「そうですね。出来ればガルパスと荷車を2台に大量のロープを用意して置いてください。爆裂球も欲しいですね。ところで、武装は?」

 「第3、4中隊とも全員が散弾銃を装備。バリスタ4台を分隊で運用。カートリッジは各自が30個、バリスタの矢は1台当たり50本。更に関所の弾薬庫にカートリッジを2千個と爆裂球200個を保管している」

 

 「もう少し、在庫を増やした方が良いですね。各兵士に30個のカートリッジを配布できる量は必要です。そして、最初から兵士に爆裂球を1個配布してください。予備も500は必要です。

 防備も少し変更した方が良いかも知れません。土工具もあると助かります」

 「新たに柵を作ると?」


 「柵は多ければそれだけ敵の接近を遅らせる事が出来ます。その分だけ敵に銃弾を浴びせることができますからね」

 「了解だ。手配した後に出発する。で、レムル殿は?」


 「明日出発します。何分新米ハンターですから、到着は夜になるかもしれません」

 「関所の門の左手に大きな建物がある。そこに俺達は待機している」


 2人は立ち上がって、俺達に頭を下げると部屋を出て行った。

 

 「今夜にでも出掛けるにゃ!」

 アイネさんの言葉に、皆が頷いてるけどまだまだ春には程遠いぞ。


 「テントを買ってきたにゃ!この中で皆で寝れば大丈夫にゃ!」

 エルちゃんまで、頷いてる。

 これは、出掛けないと何を言われるか分らないぞ。

 

 「分ったよ。でも、ひょっとしたら荷車が南の柵に出掛けるかも知れない。乗せてもらえるかも知れないから、先ずはそっちを当って。無ければ、昼からでも出発しよう」

 「その手があったにゃ。直ぐに調べてくるにゃ!」


 アイネさんがタタターっと部屋を出て行った。

 そして、残った俺達は出発の準備だ。基本の装備は昨日の内に終ってるから、お弁当の手配位だろう。

 それはマイネさんが出掛けて行った。

 ミイネさん達3人は何やら相談していたけど、行ってきますと言ってやはり出掛けたぞ。

 

 午後から出掛けるといってもまだ間があるな。

 バッグから端末を取り出して関所の状況を見ておくことにした。

 

 上空からの画像が仮想ディスプレイに表示された。

 丸太を1m程の感覚で並べた柵が東に続いている。西にもあるんだが300m位で岩山にぶつかるから、それ程長くない。

 たぶん横木もあるんだろうがその辺りはこの画像では分らないな。

 門も木造だ。門から50m程北に柵が続いてその中に建物が1つある。これが関所の役目をするんだろう。

 その北側の門の東西に建物が並んでいる。左側の一際大きい建物がガウネンさんが言っていた建物だろう。屋根には4台のバリスタが並んでいる。

 関所から、南の森までの距離は300m程だ。そして北側には荒地が広がっている。

 ここで、敵を食い止めないと一気に雪崩れ込んでくるな。

 できれば、関所を中心とした100km程の範囲の地図が欲しいところだ。商会で手に入るかな? エルちゃんに頼んでみよう。

 少しはなれた岩山近くの建物から煙が見える。これが食堂なんだろう。岩山の近くだから泉があるのかも知れないな。

 関所から街道を200m程の所に岩山に上る木造の階段が出来ていた。確か見張り所や拠点にはライフルを回すと言っていたな。

 狙撃が出来るからかなり優位に立てるだろう。


 もう少し森を遠ざけたいな。先ずはそこからだろう。

 後は、この門の守りだ。森から道が続いているから軍団の移動はこの道が使われるだろう。切り払った森と違って横幅3m程の道はそれなりに踏み固められている。走ってくれば森から関所の門まで1分は掛からないだろう。その間にその間に倒すことが出来るのだろうか。

 来るとなれば激戦になりそうだな。

 欲に眩んだ連中が、南の尖塔を破壊してくれるのを祈りたくなってきたぞ。

               ◇

               ◇

               ◇


 アイネさんは、上手くガルパスが曳く荷車の隊列を見つけることが出来たようだ。

 明日の早朝、港を出るらしいから、俺達も早朝村を出ればその隊列に出会う事が出来るだろう。

 マイネさんは2食分のお弁当を手に入れたようだ。魔法の袋に入れておけば長期間持つから、明日の朝食をお弁当にしてもう1食は荷車で頂こう。もしも、荷車に出会わなかったら夕食にすればいい。

 エルちゃん達は毛糸球を沢山買ってきたようだ。

 待機状態が続くから良い暇潰しになるな。アイネさん達も覚えればいいんだけどね。


 そして、次の朝。

 お茶で黒パンサンドを流し込むように食べると、コタツを畳んで部屋の入口に鍵を掛ける。

 俺は、何時もの籠を背負うと小さな籠を背負ったシイネさんの後に続いて歩き出した。


 村の門を動かして貰うと、道に沿って東に歩く。

 ようやく東の空に日が昇り始めたところだから、ガルパス部隊はまだ港を出発していないだろう。

 南への分岐路を右に曲れば、後は関所まで道なりだ。

 

 2時間程歩いた所で、携帯コンロでお茶を沸かして一休みしていると、北から荷車の隊列が近付いてきた。

 

 アイネさんが道の真中で手を振ると、荷車が停車する。

 御者に走りよって話をすると、直ぐに俺達の所に帰ってきた。


 「早く乗るにゃ。1台に2人までにゃ」


 俺は籠を背負うと、エルちゃんを連れて後ろの方の荷車の御者に声を掛けた。


 「すみません。お願いします」

 「あぁ、気にする事はねぇ。お互い様ってことだ。後ろの荷物はライ麦の袋だ。シートの上に乗って良いぞ」


 俺達が乗り込んだことを確認して、ガルパスは爪音を立てながら街道を進んでいく。

 まだ春には程遠いから荷台の上は結構冷える。籠から毛布を取り出してエルちゃんと包まりながら辺りの風景を見ていると、何時の間にかエルちゃんは寝てしまった。

 荷車の振動が心地よいのと朝が早かったからだろうな。

 俺まで寝ると荷車から落ちそうだから、俺は寝る訳には行かないな。

 たまに、タバコを楽しみながらのんびりと荷車は進んでいった。

 

 3時間程進んだところで、荷車が停車する。

 荷車の下にある籠から薪を取り出して、焚火を作り始めたから一休みするようだ。

 俺達も断わって、焚火の片隅におちゃのポットを置いた。


 「此処から隊列が2つに分かれるんじゃ。先頭から5台がこのまま南に向かい。後ろの7台は荒地を南東に進む。あんた等は南じゃと聞いたから、前の荷台に乗るんじゃぞ」

 「分りました。お手数をお掛けします」


 俺達が乗っていたのは一応、南に行く荷車のようだ。

 それでも、念の為に教えてくれるのはありがたい話だな。


 お茶を飲んで一休みした後で、再びガルパスが曳く荷車が進みだした。南東に向かう隊列に手を振ると、御者達も手を振ってくれる、何でもないちょっとした挨拶でも互いを思いやる気持ちがあれば届くってことなんだろうな。

 

 そういえば……、直ぐにやらなければならないことがあったんだよな。

 エルちゃんに頼んで、南の森の関所を中心とした半径100kmの地図を商会に注文して貰う。


 揺れる荷車の上でエルちゃんは電鍵を叩いてどうにか発注することが出来たようだ。

 何と、明日にも届けるって返事が返ってきたらしい。

 プリンターを商会は持っているという事だろうか?


 そんな事を考えていると、荷台の手摺に掴まって前を見ていたエルちゃんが見えてきたよ!って教えてくれた。

 エルちゃんの傍に寄って前を見ると、遠くに横一列に並んだ柱が見える。そして道の延長上に数個の建物が見えてきた。

 あれが関所か。立派に作ったな。


 荷車が関所から少し離れた小屋の前に止まる。

 俺達は荷車から飛び下りて御者に礼を言うと、門の左手にある建物へと歩いて行った。

 

 建物の前には2人の若い兵士が立っている。

 俺の名前と来訪の目的を告げると、1人が俺達の先になって木製の3段の階段を上って扉を開けてくれた。


 「参謀のレムル殿一行が到着しました」

 

 大声で部屋の中に告げると、数人の男女が俺達の方に顔を向けて、直ぐに姿勢を正した。

 

 「待ちかねたぞ。ここはレムル殿に指揮を任せると先程アルトス殿より伝令が来たところだ。此処が関所の司令室になる。先ずは座ってくれ。皆に紹介する」


 司令室付の若い兵士の案内で大きなテーブルの奥に俺とエルちゃんが席に着いた。アイネさん達はエルちゃんの後ろにあるベンチに座る。

 俺の前には、ガウネンさんとアイネスさんそれに始めてみる若い男女だ。

 「先程の伝令で分ったと思うが、此方が此処の指揮官となるレムル殿だ。副官のエル嬢、それに護衛のクァル4姉妹。此方の2人は左から俺の副官のヘイラムとアイネスの副官のカルネラだ」

 「皆はヘイムと呼んでいます」

 「私はカーリーにゃ」


 「この部屋には常時2人の兵士を置く。伝令と雑用係だと思ってくれ。レミネスとアルムンドだ」

 「レミーにゃ」

 「俺はアルで!」


 エルちゃんが名前をメモってるから、大丈夫だな。間違えるのも問題だし……。

 

 「それで、現在は1小隊を使って俺達の守備範囲南に20M(3km)までを哨戒中だ。これは継続しても良いと思うのだが?」

 「そうですね。継続をお願いします。ところで通信はどうなってます?」


 「発光式通信機で常時岩山の見張り所と交信が出来る。アルトス殿の司令部にはそこを介して連絡が可能だ」

 「南の方には監視所が無いんですか?」


 「15M(2.2km)南に監視所がある」

 「ならば、先ずはその監視所の規模を大きくしましょう。関所から南の森が近すぎます。明日から出来れば4M(600m)先まで扇型に森を伐採してください。その木材を使って2小隊が常駐出来る監視所を作ります」


 「了解だ。明日から始める。例の発注分は10日もあれば用意出来るとの商館からの返事だったぞ」

 「ありがとうございます。使わなければ良いんですが、どうもそうは行かない気がします」


 どうやら、機材は間に合いそうだな。

 とりあえず守りを固めなければ。侵略は軍隊だけとは限らないからね。



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