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15歳。  作者: 月森優月
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第79章 受験。

 斐羅が学校へ復帰出来たことを喜んでいるうちに、私立の高校の受験日が訪れた。明と直史は私立を滑り止めとして受験する。明は面接だけだったが、かなり緊張していた。


 面接、開始。


「あなたは何故本校を受験しようと思ったのですか」

「えっと、在校生の方の明るい雰囲気と独自のカリキュラムに惹かれてです」

「中学時代、一番楽しかったことは何ですか」

「友達と過ごした放課後です。色々な事情を抱えている子もいましたが、今では前を向いて歩いています。最初は全然仲良くなかったのに、親友と呼べる仲になれてとても嬉しかったです」


 勿論、里恵たちのことだ。


「あなたの将来の夢は何ですか」

 それは考えてきていなかった。焦る明。


「あの、まだ……分からないんですけど、人の笑顔が見られたらいいなあ、なんて」


 思っているままのことを口にした。自分は、人の笑顔を見るのが好き。どういう仕事があるのかは分からないけれど。他にも二、三質問されて面接は終わった。元スマイリーなだけに、スマイルは完璧だったと思う。


 そして公立の高校受験が始まる前に、滑り止めの合否は出た。


 合格。


 明はとりあえずほっとした。直史も無事合格した。あとは、本命だ。


「皆、頑張ろうね」


 公立高校の受験前日、明たち四人は手を重ねた。


「エイエイオー!」


 里恵が言った。皆の思いは一緒だろう。全員、受かりますように。皆で幸せを掴みたい。笑って卒業を迎えたい。


 当日。明は痛む胃を押さえながら川田総合高校へ斐羅と一緒に向かった。試験問題はやはり難しくて、でも、なるべく空欄を残さないようにした。斐羅は緊張からか終始真っ青な顔をしていたが、「学校、どう?」と訊くと「楽しめてるよ」と笑って言った。明の母親は斐羅が不登校から抜け出せたことで、付き合うことを許してくれた。もう、何も問題はない。あとは皆が合格すれば……。誰の泣き顔も見たくなかった。


 長い一日が終わった。皆屋上に集まり、自分がした解答を言ってゆく。一番正解率が高いのは直史だろう。直史の解答と自分が書いた答えが違う度、明は落ち込んだ。でも、望みは捨てたくない。ここまで自分は頑張ってきた。努力はきっと無駄にならない。例え、落ちてしまったとしても。


「早く合格発表してほしいよ。アタシ、毎晩眠れなくなりそう」

「今井は大丈夫だろ。定時制なんて名前書けりゃいいだろ」

「あっ、今直史定時制馬鹿にしただろ! 里恵キーック」

「痛え! マジ痛え」


 お尻を押さえる直史を見て明と斐羅は笑った。


「そういえば、直史と斐羅のご関係は今いかがなほどで?」


 里恵がニヤニヤしながら訊く。


「別に、普通だよ」

「まさかまだ恋人同士になってない、とか言わないよな?」

「それは……」

「なってないのかよ! よし、直史。今コクれ」

「は!? 無理だろ」


 斐羅は顔を赤くして俯いていた。


「和泉、早く告白しないと他の狼に取られちゃうかもよ? 斐羅ちゃんを」

「そうだそうだ」

「……分かったよ」


 直史は半ばやけくそ気味に、


「安藤。好きだ。付き合って……下さい」


 と言った。


「ありがとう……いいよ。私も好き。なおくんのこと」

「おー、両想い!」


 里恵が拍手をしたので明も手を叩く。ほんの少しだけ、寂しくなりながら。


「私がこうやって学校に行けるようになったのも、笑えるのも、全部皆のおかげだよ。私、皆が大好き。ありがとう」


 今度は里恵が顔を赤くした。


「あれ~? 里恵、顔が赤」

「だ・ま・れ」


 明は里恵に口を塞がれてしまった。こんなじゃれあいがとても楽しい。ナツキと紀子ちゃんも受かればいいな。見上げた空は、雲一つない晴天だった。

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