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15歳。  作者: 月森優月
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第72章 好きなの?

 明と里恵は斐羅のお見舞いに来ていた。


「怪我の調子はどうだ」

「ちょっと痛いかな」

「斐羅ちゃん、本当にごめん!」

「明ちゃんが謝ることないよ。私が勝手に飛び出したんだから」

「でも……」

「まあまあ。悪いのはクボタさ」


 里恵は続けて、


「それと、クボタに酷いことをして精神をおかしくした杉沢もな」


 と言った。


「なおくんは?」

「今日は来れないらしい。事情聴取とかで」

「……そっか」


 少し躊躇したのち、明が斐羅に問う。


「斐羅ちゃん……まだ、和泉のこと好きなんでしょ?」


 斐羅は何も言わずに、目を伏せた。


「気を使わないでって言ったのは斐羅ちゃんじゃない。だから、私に気を使わないでよ」

「……」

「私もね、考えたの」


 明は学校にいる間も斐羅と直史のことをずっと考えていた。斐羅は直史が好き。直史は私が好き。じゃあ、私は……?


「明は、直史のことが本当に好きなのか? 男女間の好きなのか?」

「……自分でも分からない。友達の好きと恋愛の好きの違いって何?」


 里恵はうなった。斐羅が、


「なおくんは明ちゃんが好きなんだもん、例え明ちゃんの気持ちが変わったとしても、なおくんは私の隣を歩いてはくれない」


 そう言って明は腕をめくった。前に見たリストカットの痕と、大きな痣が見えた。


「これは、お父さんに殴られたときの痣」

「斐羅……辛かったな」


 里恵は斐羅をぎゅっと抱きしめた。


「父親は多分警察に捕まるだろう。そしたら、もう殴られることも罵られることもない」

「うん……結果オーライってとこかな」


 斐羅はそう言って笑った。


「で、好きなの?」


 明は悩んでいた。髪の毛先をいじりながら、


「少なくとも、私には身体を張ってまで和泉を助ける勇気はなかったな」


 とだけ言った。


「なあ、斐羅、もう一回アタックしてみたらどうだ?」

「いいよもう。明ちゃんが好きなら、私に邪魔する権利はない」

「……今なら、大丈夫だよ」


 明の言葉に、斐羅が「えっ?」と声を出す。


「今なら、諦められる。私は斐羅ちゃんには勝てないもん」

「明ちゃん……」


 直史と別れることになるのは少し寂しいが、自分は直史より斐羅の方が大事だ。


 そのとき、病室の扉が開いた。


「おっ、主役の出番だ」


 里恵が言った。


「待ってたよ、和泉。斐羅ちゃんが伝えたいことあるんだって」

「え、ちょっと明ちゃん」

「伝えたいことって何だ?」


 言えと言わんばかりに里恵が斐羅の肩をつつく。


「あの……なおくん」

「何?」

「なおくんは、明ちゃんのこと……好きでしょ?」


 斐羅の問いかけに、絶対うんと頷くであろうと思ったのに、直史は腕を組んで考え込んでいた。


「……江川は好きだよ。好きだけど、これが恋愛感情なのか分からなくなってきた。代わりに、安藤が気になってるって言ったら……怒るか?」


 斐羅は目を丸くした。


「でも、明ちゃんはなおくんが好きだし……」

「好きじゃないよ!」


 明が言う。


「よく考えてみれば、私も恋愛感情なんかじゃないっぽいわ。斐羅ちゃんとくっついてほしいと思ってるもん」


 直史がまっすぐこちらを見ていた。


「本当か?」

「本当だよ」

「なら……これから、安藤を意識したいと思う」


 斐羅が刺されたときから覚悟は出来ていた。私には、もっといい人がいるさ! と思い込むことにした。


「よかったね、斐羅ちゃん」

「明ちゃん……本当にいいの?」

「武士に二言はない」

「明、いつから武士になったんだよ」


 里恵が笑った。恋愛の話はそこで一旦終わった。


「明日から冬休みかあ」

「皆で遊びに行って来なよ」


 と、斐羅。


「受験生は遊んじゃ駄目だろうよ」


 直史が言った。


「あ、じゃあ皆で神社行こうぜ。合格祈願」


 里恵の案に皆は賛成した。


「まあ、私は行けないけどね。当分入院生活だから」


 斐羅は少し哀しそうな顔をした。


「結局明は川総にしたのか? 志望校」

「うん。里恵は?」

「定時制。直史は浦高だろ?」

「ああ。安藤は?」

「私も、川総」

「えっ!」「何で!」「どうしてだよ」


 三人が言った。


「内申悪いし、お父さん、逮捕されちゃったら家計苦しくて滑り止め受けられないから」

「そっか……それは大変だな」


 里恵はそう言ったあと、


「目指せ、全員合格!」


 と拳を上に突き出した。もしかしたら、斐羅と同じ高校に行ける。本人は残念がっているだろうが、明にはそれが嬉しくもあった。

入院していた為、更新が遅れました。申し訳ございません。

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