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15歳。  作者: 月森優月
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第65章 好き。

「えー、どうだろう」


 直史は里恵のことを心配している。それは、ただの幼なじみだからだろうか。その手のことに鈍感な明には分からなかった。


「明ちゃんは?」

「え?」

「なおくんのこと、どう思ってる?」

「うーん……好きだよ。でも、ラブじゃなくてライクの方」

「そっか」


 しばらく沈黙が続いたあと、斐羅が言った。




「私、なおくんのこと好き」




 明は驚いて、


「え?」


 と聞き返した。


「なおくんのこと、好きなの」

「って、ラブの方?」

「うん」


 斐羅が直史のことを好きだなんて、全く気付かなかった。


「斐羅ちゃん、杉沢のこと好きだったんじゃなかったの?」

「同じくらい好きな人がいる、って言ったじゃない。それが、なおくん」

「そうだったんだ……」

「私、明日なおくんに告白しようと思う」


 告白。斐羅が直史のことを好きなら、素直に応援したいと思った。


「そっか。頑張って。いい結果になること、祈ってるから」

「ありがとう」


 もし、直史が里恵のことを好きだったら。どうか、両想いでありますように。明はただ祈っていた。




 次の日、屋上に行くと里恵しかいなかった。


「あれ、斐羅ちゃんは?」

「まだ来てない。珍しいよな」

「告白はしたのかな……」

「告白?」


 つい、口にしてしまった。明は慌てて口を噤むが、時は既に遅し、


「告白って何のことだよ」


 と里恵が訊いてきた。この様子じゃ、斐羅は里恵に話していないのだろう。でも、どうして私に話したの?


「あ、もしかして斐羅のこと?」

「えっ」

「違うのか?」

「あー……」


 明は隠しきれないと思った。


「好きな人に告白するって言ってた」

「てことは、直史か」

「どうして知ってるの? 斐羅ちゃんが言ってたの?」


 明は驚いた。


「見てりゃ分かるよ。付き合い長いんだから。そっか、斐羅思いきったなあ」

「ちなみに、里恵は?」

「へ?」

「好きなの? 和泉のこと」


 里恵は一瞬きょとんとした顔になると、声を上げて笑った。


「ないない。アタシが直史を? ねーって」


 なら、斐羅に可能性はあるのかもしれない。


「アタシ、直史が誰を好きだか知ってるよ」

「え! 誰誰?」

「明、知らないの?」

「知らないよ」

「お前って鈍……」


 里恵が言いかけたとき、屋上のドアが開いた。そこには、斐羅が立っていた。


「斐羅」


 斐羅はまっすぐ明の元まで来ると、少しだけ笑って言った。


「悔しいな」

「え? 何が?」

「なおくん、下で待ってるよ。明ちゃんのこと」

「え? 何の用?」


 明は今置かれている状況が理解出来なかった。


「明って、本当鈍感」


 里恵が呆れた顔をしている。


「ほら、早く行ってやれよ。流されるなよ? 素直に自分の気持ちを言ってやれ」


 里恵に背中を押されて、明は訳が分からないままエレベーターで降りていった。


「よ」


 マンションの前には、斐羅の言った通り直史が待っていた。


「何?」

「安藤から訊いてないの?」

「何にも」

「何だよ、じゃあわざわざ言った意味ねーじゃないか……」

「斐羅ちゃんから、聞いた?」


 明は表現をぼかして訊いてみた。


「ああ」

「何て答えたの?」

「俺には好きな人がいる、って」

「え、斐羅ちゃんふったんだ! 酷ーい」


 斐羅が可哀想になった。もしかしたら、って思っていたのに。斐羅ちゃんと和泉の関係はよかったのになあ、と明は残念に思う。




「俺の好きな人、っていうのがお前なんだよ」




 時間が止まったような気がした。


「……は?」

「俺、江川が好きだ」


 明は混乱した。自分のことが好き? 和泉が? 斐羅ちゃんでも里恵でもなくて、私?


「……何をおっしゃっているのですか」

「友達思いで、優しくて。いつの間にか好きになってた」


 斐羅の言っていた言葉の意味が分かった。直史が自分のことを好きだったからだ。


「江川は、俺のことどう思ってんの?」

「どうって……好きだけど、それは友達としてっていうか……そんな、恋愛対象として見たことないもん……」


 明は戸惑っていた。


「すぐに恋人になりたいとかは思っていない。ただ、考えてみてほしいんだ」


 直史の顔は、今まで見たことがないほど赤く染まっていた。


「ごめんね、斐羅ちゃん」


 屋上に戻ってきた明は斐羅に謝った。


「謝る必要ない」

「和泉、馬鹿としか言いようがないよ。よりによって私? 謎すぎる」

「いやー、斐羅も長年の思いを告げたんだな」


 と、里恵。


「そうそう、何で今になってって告白したの? 付き合い長いのに」


 明が斐羅に訊いた。


「本村くんが好きじゃなくなって、本当になおくんが好きだって気付いたから」

「そっか……」

「思いを伝えてすっきりした。明ちゃん、私に気を使わなくていいんだからね。好きなら好きって言えばいい」


 明は分からなかった。直史のことは嫌いじゃない。でも、恋愛感情なんて……。


 そんな中、明たちは模試を受けて、初めて自分の偏差値を知ることになる。

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