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15歳。  作者: 月森優月
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第60章 案。

 次の日から明は杉沢のことを調べ始めた。クラスの男子に話を聞いたり、杉沢の後を付けたり。情報を集めているうち、カツアゲや薬をやっているという噂は信用性が高いと感じ始めた。でも、まだこれだけじゃ足りない。証拠さえ掴めれば……。


「なあ、江川」


 ある日、直史が話しかけてきた。


「何か最近、杉沢のこと調べてるんだって? どうして?」


 まさか、里恵と別れさせる為に警察に捕まるような証拠を探している、とは言えない。


「うーん、ちょっとね」

「そういえば今井、まだ屋上に来てないのか?」

「うん……」

「どうしたんだろうな」


 本当のことを言ってしまえたらどんなに楽だろう。でも、これは里恵の為にも言っちゃいけない。


「もしかして、杉沢のことと関係あるのか?」


 ドキリとした。


「関係ないよ。全然」

「そうか……」


 ナツキたちも同じことを訊いてきた。


「スマイリー、何で最近杉沢のこと調べてるの?」

「ちょっとね」

「もしかして、今井さんのことと関係ある?」

「……」

「それなら、うち協力するけど」

「え?」

「私も協力するよ」

「……本当に?」

「紀子と話してたんだ。もしかして今井さんは、そんなに悪い人じゃないんじゃないかって」

「今井さんね、この前私に言ってくれたの。『直史のことが好きなら早く告白した方がいい。彼女がいない今がチャンスなんだから』って」

「そうなんだ……」

「今井さんはスマイリーにとって大切な人なんでしょ? なら、協力してもいいかなって。ね、紀子」

「うん」

「じゃあお言葉に甘えるけど……。杉沢が逮捕されるような証拠を掴んでほしいの」

「ああ、薬をやってる証拠とか?」

「そう」

「任せとけ!」

「私も頑張ってみるよ」


 ナツキと紀子の力強い言葉が明は嬉しかった。駒は揃った。あとは、どうやって駒を進めるかだ。


 杉沢のことを調べてから二週間。未だに明は証拠を掴めずにいた。カツアゲをする気配もないし、薬をやっているという証拠もない。こうしている間にも、里恵は傷付いているというのに。


「もー、何で証拠見つからないんだろう」


 明は焦っていた。


「もしかして、ただの噂だったのかも」


 斐羅が言った。


「そんなことない。絶対いけないことやってるに決まってる。あと一歩なんだけど……」

「……案は一つだけあるんだけど……やっぱり駄目、危険すぎる」

「どういう案?」

「本村くんの仲間に入れてもらうの。そしたら薬だって手に入るかも」

「どうやって、仲間に入れてもらうの?」

「簡単だよ」


 そう言って斐羅が話した方法は、確かに危険だった。でも、これしか案はないんじゃないか。問題は、どっちがその方法を試すかだ。


「私、試してみるよ」

「駄目。明ちゃんにこんな危険なことはさせられないよ。私が、やる」

「私だって、斐羅ちゃんにそんな危ないことさせられないよ。だから、私が」


 しばらく押し問答が続いた。結局答えが出ないまま、話し合いは終わった。しかし、明の中ではもう結論が出ていた。


 次の日、明は杉沢の仲間の矢野のげた箱に手紙を入れた。


『放課後、裏庭で待ってます

       江川 明』


 約束通り、矢野は来た。


「何だよ、江川」


 ごめんね、斐羅ちゃん。これは、私がやらなくちゃいけないんだ。


「あの……実は私、矢野のこと好きなんだけど」

「は?」

「お願い、付き合って!」

「……マジかよ。ははは!」


 矢野が声を上げて笑った。


「オーケーオーケー。付き合ってやるよ」

「本当? 嬉しい」


 誰が嬉しいかよ、ボケ。明は心の中で呟いた。


「これからは、なるべく矢野と一緒にいたいな」


 本当の感情を押し殺し甘えた声を出してみせる。


「オーケー。あ、悪ぃ、これから杉沢たちと遊ぶ約束してるんだ。もう少ししたら江川も仲間に入れてやるからな。じゃ」


 よし、作戦通りだ。仲間に入れてもらえれば、全てが分かる。なのに、この流れてくる涙は何……?

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