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15歳。  作者: 月森優月
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第54章 良かったぜ。

 里恵はそれからしばらく学校にも屋上にも来なかった。斐羅が心配して何度か電話をしたらしいが、用事があるの一点張りだった。

 杉沢によるいじめは今のところ収まっている。里恵の力だろうか? 今度会ったときに訊いてみようと思っていた。


 一週間後、里恵が登校してきた。


「あ、おはよ、里恵」

「おはよ」

「最近屋上にも来てないじゃん。どうしたの?」

「ちょっと忙しくて」

「ふーん……。斐羅ちゃんも心配してたよ」

「アタシは大丈夫」


 しかし里恵の目の下には酷いクマが出来ていた。


「あ、今井」


 直史が里恵の姿に気付いて声をかけてきた。


「よ」

「江川から聞いたけど最近屋上行ってないんだって? 俺も受験勉強で行ってないんだけど。どうしたんだ? 今井が受験勉強……なわけないよな」

「忙しいんだって」

「そうか……」

「スマイリー!」


 ナツキに呼ばれたので席を離れる。


「おは」

「おはよー」

「今井さん、久しぶりじゃん」

「だね」

「でも、このクラスも平和になったよねー。いじめもなくなったし、由紀たちも大人しいし」


 紀子が言った。


「あ、そういえば昨日の夕方今井さん見かけたよ」


 と、ナツキ。


「え、どこで?」

「学校の校庭。昨日は学校に来てないのに何の用事だったんだろう」


 どうして、里恵が学校の校庭に?


「私もナツキと一緒に見てたけど、誰か待ってるような感じじゃなかった?」

「あー、かもね」


 用事とは誰かと会うことだったのだろうか。でも、誰と?


「ちょっと里恵に訊いてこようか?」

「あー、止めた方がいいんじゃない?」

「どうして?」

「何か周り気にしてたもん。ねー」

「うんうん」

「そっか……」


 里恵が知られたくないことなら、訊くようなことはしない。でも、気になるのも事実だった。チャイムが鳴り、明たちは席に着いた。


 昼休み、明は体育着を忘れていることに気付き、体育の町田先生に言おうと職員室に行った。しかし町田先生はおらず、もう体育館にいるのかもしれないと思い体育館に向かった。

 体育館にはまだ誰もいない。町田先生の姿も見つからないので、一旦教室に戻ろうとしたとき、微かに声が聞こえた気がして足を止めた。


「……だよ。皆が来ちゃう……」


 女の子の声だ。どうやら倉庫から声が漏れているらしい。明は倉庫の扉に耳を当てた。


「まだ大丈夫だろ」


 低い、男の子の声。


「でも……あっ、あ……」


 明は驚いて倉庫から耳を離した。


「や……ん、あ」

「気持ちいいだろ?」

「ん……」


 誰かが……こんなところで……明の鼓動が速くなる。にしても、この二人の声、どこかで聞いたことがあるような……。




「今日はこの辺にしとくか。今日も良かったぜ、里恵」




 ……!


「杉沢……明日も?」


 里恵と、杉沢……?


「明日じゃねえよ。放課後、田宮神社で。分かったな」

「……うん」


 話が終わりそうだったので、明は急いで体育館を出た。鼓動がうるさい。顔が熱くなっている。どうして? どうして里恵と杉沢が? 二人が付き合っているという噂は本当だったのだろうか。もし、そうだとしてもあんないつもの里恵の声と違う艶めかしい声、聞きたくなかった。目をつむって頭をぶんぶんと振る。しかしあの声が耳から離れない。とりあえず、教室に戻らないと。

 教室に戻るとナツキたちが話しかけてきたが、明は上の空だった。

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