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15歳。  作者: 月森優月
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第30章 スマイリー。

「え……」


 ナツキと紀子が口にした。


「私は好きだよ、今井さんのこと」


 明が再び言った。それには里恵も驚いた様子で、


「マジかよ……」


 と言った。


「みんな、今井さんのこと誤解してる。いい人だよ、今井さんは」


 明がきっぱりと言った。


「そんなこと言って大丈夫なのかよ」


 里恵が心配した様子を見せた。こんなことを言ったらグループからハブかれる可能性があることは、明が一番良く分かっていた。


「いつのまに今井さんと仲良くなったの?」


 紀子が訊いてきた。


「少し前。今井さんの家にも行ったことあるよ」

「スマイリー……」

「私、トランプ止める。今井さんの隣に戻るね」


 そう言って明は唖然としている二人を横目に、里恵の隣に座った。


「いいのかよ。あんなこと言って。グループに戻れなくなるぞ」

「いいの。もうスマイリーは止めにした」


 斐羅のことを聞いたときに芽生えた決意。彼女が気になってしょうがなかった。


「なあ」

「ん?」

「明、って呼んでもいいか」


 明が里恵の目を見た。里恵はまっすぐ明を見つめていた。


「いいよ。私も今井さんのこと、下の名前で呼んでいい?」


 里恵は前髪をかきあげた後、「いいよ」と言った。明は嬉しくて、ガッツポーズをした。


「里恵、安藤さんに仲直りしたって報告しようよ」

「まだだ。直史と仲直りしていない」


 明は直史の姿を捜した。すると彼は、後ろの方の席で隣の男子と話していた。


「んじゃ、突撃しますか」


 里恵がにやりと笑った。


「はいっ」


 明は敬礼のポーズをした。里恵は立ち上がると、何の迷いもないように一直線に直史の元へ行った。明も後に続く。


「直史」


 直史は目を丸くさせた。


「何だよ、今井」


 そういえばクラスメイトの前で里恵と直史が話しているのを見たことがない。周りの目を気にしているのだろうか。直史が明を見た。明は目をそらさなかった。


「話がある。ちょっと来い」


 そう言って里恵は直史に背中を見せて歩き出した。


「お願い。来て」


 明も頼んだ。すると直史は頭をかきながら席を立った。


 里恵は自分の席に座ると、


「この前は殴って悪かった」


 と始めに言った。


「今井が謝るなんて雪でも降るんじゃねえのか」

「うるせえよ」


 里恵が笑った。


「京都に着いたらアタシのいる部屋に来いよ」

「え、ヤダよ。勘違いされそうじゃんか」

「もう遅いんじゃねえか」


 直史が周りを見渡した。すると明たちの方を見ている生徒が沢山いた。ナツキと紀子もこちらを見てなにやらひそひそ話をしている。


「和泉、私たち勘違いされてるよ」


 明が眉をひそめた。


「……分かったよ。行きゃいいんだろ」

「よし、じゃあ話は終わり。自分の席に戻りな」

「和泉、ごめんね」


 自分の席に戻る直史をみんなが不思議そうな顔で見ていた。

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