改札のラブレター ~SIDE A~
君は何であそこに居たんだ?
あの日、天気が良かったよな。初夏の陽が眩しくて、改札を出て眩しかったのを覚えてる。
君は長袖の薄黄色のブラウスに、少し太めのベルト、チェックのスカートを履いてたね。
よく覚えてるんだ。
君は僕を見て笑った。
久しぶりの同窓会。お互いに東京から戻ったとは言え、待ち合わせなんかしてなかったのに…改札を出た所で君に会えた。
僕等はそこから始まったんだ。
お互いに東京で暮らしているのに、全く会う事無く過ぎて行った時間を取り戻す様に、それからは毎日会ったよな。
二年が過ぎて、君は僕の部屋に来た。
それから半年で、随分君の荷物が増えたっけ。そう、僕の荷物より君の荷物が増えた。
三年目、君の名字が変わった。君の荷物が二人の荷物になった頃だった。一年後には三人の荷物になるって分かって、二人で大喜びしたんだよな。
それから二十四年。僕の名字を持つ人が減った。
あの子は今、幸せなのか?
君は今、幸せか?
僕は今、幸せなんだろうか…
あの子は、僕等が子供の頃を過ごした街で暮らしている。
あの駅の改札は、また新しい家族を作ったんだな。