23:00~1時間経過~
ポストには、配達代わりに野間野の首が入っていた。
ただの首ではない。約12秒おきに斬撃が入っていたのだ。
斬られるたびに血が流れ続け、やがて失血によって止血した。斬撃は止まることはなかった。
23:00の時刻を確認しながら俺はくらげに安否確認の電話をかけた。1コールですぐに出てきた。
「くらげか?」
「もちろんくらげだよ。どうしたの調君。そんな焦った声出して」
少し嬉しそうなその声を聞く感じ、危険な目には遭っていないようだ。
「いや、何でもない。なぁくらげ、一つ聞きたいこととお願いがあるんだが」
「いいよ。調君のお願いなら何でも聞いてあげる」
「今、何か変なことは起きてないか?」
「変なこと? そうだなぁ、ここ最近の記憶がないとか!」
「最近って言葉は過去であって現在のことじゃないだろ! 今だよ今! 今変なこと!」
思わず叫んでしまった。
「そうだなぁ、あっそうだ。時計が携帯も含めて両方とも動かないんだよね。秒針は動いているんだけど」
「そうか。教えてくれてありがとう」
「どういたしまして。それで、お願いっていうのは?」
「何があっても外に出ないでくれ。ベランダも庭もダメだからな」
「もうこんな時間だし、言われなくても外には出ないよ。でも、心配してくれてありがとう。おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
電話が切れた。やはりそうか。恐らく時間、いや、厳密には時刻だけが動かない状態になっているのだろう。
時間が止まるのと時刻が止まるのとでは大きな違いがある。時間が止まるということは、空気も景色も何もかもが停滞し、あらゆる変化をしないということ。何もできないがゆえに、何も困らない。
しかし今の状況は、ただ時計という人間の生活の標が無くなり、分や時間周期で動く機械が壊れる。ある意味では時間が止まることよりも問題である。
何より、野間野の復活が起きないというのが一番の問題である。彼女は、死んでも現実時間での0:00には生き返る。だが時刻が停止した今、彼女は蘇るという絶対的な安心が覆る。
彼女は、あれでも、世界を救い、人を救い、自分を救った人だ。どうにかして復活させなければならない。
方法は決まっていないが、行先は決まっている。秦水神社。彼女がこの前まで居た場所だ。
当然だが、彼女の別の肉体を探すのではない。あそこにはまた違う彼女。いや。少女と言うべきか。今日の帰り、あの時には謎の発言だった予言をした少女に会いに行くのだ。
数分後 23:00 何回目かの60秒後。
前のように階段を上り、賽銭箱を見ると、やはりあの少女は俺を見て黙っていたのであった。
「はじめましてでおひさしぶり。半端者のおにいさん。九九の名前は九九で十二の九九十二。おにいさんとおねえさんをくたばらせてもらうね」




