表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
水底の記憶  作者: (//∇//)もじ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/17

13話 祭りの終りに


「お待たせー。ね、神楽はどうだった?」


 神社の裏手に、明るい声がひびく。

 少年たちと合流したツヅミは、いつのまにか浴衣に着替えていた。

 舞台で舞っていたときの凛とした気配は消えて、年相応の少女に戻っている。


 少年たちは、落ち着かない様子で視線を泳がせていた。


「……うん、まあまあ、だな」


 ぶっきらぼうに答えたのはカゲロウだった。  

 腕を組み、そっぽを向いている。


「初めて見たけど、すごく綺麗だった」


「うん。ツヅミちゃん、キレイだったよ」


 少年ふたりが思ったままを素直に口にすると、カゲロウはぎょっとして。


「お前ら、よくそんな恥ずかしいこと平気で言えるな!?」


 湊音の横腹をひじで小突いた。


「あら。カゲロウだって、もっと素直にほめてくれてもいいのよ?」


 ツヅミはうれしそうに笑っている。


「はあ? 調子に乗んなよ」


「なによ、照れてるの?」


 二人が顔を突き合わせていると。


「なんだ、こんな所にいたのか」


 白い装束に身を包んだ神主がやって来た。


「みんな、腹減っただろ?」


 と、屋台で買った人数分の焼きそばを少年たちに配っていく。

 

「ツヅミ、お疲れさん。今までで、いちばんの出来だな」


 娘に手渡すときには、その成長を心から喜ぶように笑った。


「食べたらみんな、そろそろ家に帰るんだぞ」


 そう言うと、忙しい神主は社へと戻っていった。


 ソースの香ばしい匂いが立ちのぼる。

 みんなの腹の虫が、一斉にぐうと鳴った。


(……帰るって……どこに帰ればいいんだろう)


 そんなことを、湊音が考えた時。


 ガサッ、ガサッ。


 足元の茂みが揺れ、丸い顔のタヌキがひょっこりと姿を現した。


 ガサッ。

 少し遅れて、もう一匹。

 子ダヌキが、親の後を追うように出てきた。


「かわいいでしょ。この子たち、ここに住みついてるタヌキの親子なの」


 ツヅミはそう言いながら、焼きそばの中から豚肉とキャベツを取り分けると、平たい石の上にそっと置いた。


「みんなで大切に見守っているのよ」


 他愛ない話をしながら、みんなで焼きそばを食べた。

 ソースの香ばしい匂いが漂い、笑い声が重なる。


 ザー……。


 その中に、かすかな雑音が混じった。

 湊音の耳がそれをひろう。


 ほかの三人は変わらず話し続けている。

 気のせいだろうか、と湊音は小さく首をかしげたが。

 胸をざわつかせる、落ち着かない音は、少しずつ大きくなっていった。


 ついに会話が聞き取れなくなって、湊音が眉をひそめた時。

 カゲロウと目が合った。


「どうした?」


「……ううん、何でもない」


 カゲロウの声だけは、なぜかはっきりと聞こえる。


「嘘をつくな」


 獣のように、縦に細くなった瞳孔。

 その目でじっと見つめられると、湊音は頭の中が真っ白になった。


「祭りは終わりだ、もう帰れ。……水に囚われたら帰れなくなる」


 その言葉と同時に。

 ザーという音が、一気に膨れ上がった。


 世界が歪み、足元の感覚が消えていく。


 闇が視界を覆い。

 湊音の意識は、そこでぷつりと途切れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ