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魔道具屋クロノス

魔道具屋クロノス:ポーション

作者: 黒の巣
掲載日:2025/11/03

人生初投稿です。

暖かくお読みください。

雨が降っていた。


細く、冷たく、

まるで世界が自分を拒絶しているかのような雨だった。


佐野悠さのゆうと

23歳、独身

サッカーのクラブチームに所属する

冴えない控えの2軍選手。


高校時代はエースストライカーとして注目されていたが、

膝の靭帯を痛めてからというもの、

思うように動けなくなった。


医者からは

「これ以上無理をすれば選手生命は終わる」

と言われ、悠斗の中で何かが静かに崩れ始めていた。


「もう、限界かもしれない……」


そう呟いた帰り道、悠斗は路地裏の奥に、

見慣れない古びた扉を見つけた。


看板には


「クロノス」


とだけ書かれている。


普段はこんな怪しい店には入らないのだが、

無性に気になってしまい扉を開けると、


店内は薄暗く、

どうやら壁はレンガのようだ。

奇妙な器具や瓶などが所狭しと並び、


空気はどこか甘く、

重い香りに満ちていた。


「いらっしゃい」


黒色のローブを深く被った、

声だけでは年齢も性別も判断がつない

そんな怪しげな人物が声をかけてきた。


コスプレ?

この人が店主かな?


そんなことを考えながら、

店内を見渡すとなにかの干物が目に留まった


「怪しい漢方にでも手を出してみるのもありかもな、、、、」


悠斗が呟いた。

そんな呟きはどうやら店主にきこえていたようで、


「ポーション製造機。怪我にはこれがおすすめだよ。

 ただし、使いすぎには注意しないといけないがね」


その言葉は、どこか芝居がかっており、

どう考えても怪しさしかないのだが、

悠斗はなぜかその言葉にあがらえなかった。


———————————————————————————


翌朝、目が覚めると

机の上には見慣れない怪しい機械が置かれていた


「何やってんだろうな僕は、こんなものまで買って、、、」


そう言いながら

ポーション製造機に触れたところ、

付属の瓶の底から青く輝く液体が現れ瓶を満たしていく。


「まさか、本物、、、?」


震える手で瓶を取り出し、恐る恐る口をつける


「あまい?」


これならと一気に飲みほすと、

途端に身体が内側から熱くなっていき、


気づけば、

あれほど煩わしかった膝の痛みが

嘘のように消えていた。


練習に復帰した悠斗は、

かつてのように走り、蹴り、

久しぶりにゴールを決める高揚感を味わった。


監督やチームメイトたちもからは驚きと賞賛の声が上がる。


「やった!僕は、まだやれるんだ……!」


なんと、

ポーション製造機は一度きりではなく、

何度も使うことができた。

怪我に怯えることなく試合に専念できる事が心から嬉しい。


ある日、

泥酔して帰宅し、

ふと製造機に触れてみた、


すると、

いつもとは違う澄んだ緑色の液体が現れた。


「なんだこへ?こんないろはったか?」


酔っ払いながら、

フラフラな手で瓶を掴み一気に飲み干す。


「なんだこれ?」


飲み干した瞬間、

酔いも気持ち悪さも瞬く間に無くなった


「もしかして、ケガを治すだけじゃないのか?」


その後もポーション製造機は様々な効果のポーションを作り続けた。


「回復ポーション」


「解毒ポーション」


そして、「強化ポーション」


どんな怪我をしても

慣れない料理で体調をくずしても


そして、

自分ではけっして勝てない相手にあたったとしても


ポーション製造機は悠斗の欲望を満たし続けた。


悠斗は試合で活躍をし続け、

念願叶ってついて1軍に昇格を果たす事ができた。


メディアにも頻繁に取り上げられるようになり、

固定のファンがつきファンクラブも作られた。


かつての自信を取り戻し、

そして悠斗の中で何かが変わり始めていた。


———————————————————————————


ポーションの効果は一時的だった。


試合前には必ず強化ポーションを飲み、


疲れたら回復ポーション、


飲みすぎたら解毒ポーション、


イライラして気持ちを鎮めてくれるポーションも飲んだ気がする。


生活のすべてがポーションに支配されている気がする。


「ちがう!俺が活躍できるのは、俺の才能の結果だ。

 ポーションはただの補助だ」


そう言い聞かせながら、

悠斗は製造機に触れる手を止められなかった。


ある日、

ポーションに違和感を感じ、目を凝らす

心なしか液体の色が濁っているように感じた。


「こんな色だったか?」


飲むと確かに効果はあったが、体が重く感じた。

そういえば、最近は疲れが取れていないような気がする。


そう考えながら鏡を見てみると、

顔色が悪く、目の下にはくまができ、

やや頬のこけた男の顔が写っているて。


「使いすぎないようにね」


怪しい店主の言葉が脳裏をよぎり、


馬鹿馬鹿しいと思いながらも、

どこか拭いきれない不安が残っていた。


———————————————————————————


数ヶ月後、

悠斗の動きはどんどん鈍くなり、

監督からは2軍に戻れと告げられた。


1日に飲むポーションの量を増やしても焼け石に水で、

効果は弱まっていくばかり

むしろ飲めば飲むほど悪くなっている。


さらに数ヶ月後には3軍に落ちてしまい

もう後がない状態まで来てしまった、、、、


『日本代表目前、エースの栄光と転落の真実』


メディアには面白おかしく記事を書かれる始末


「なんで俺がこんな目に……! 俺はこんなに努力しているじゃないか!」


何かにつけて他人を責めるようになり、

やがて心配してくれた人たちも彼の元を離れていった。


心身共に疲弊していき、

ポーションを飲む量も加速度的に増えていった。


もっと、もっと、もっと、、、


もっとすごいポーションがあれば俺はやり直せる、、、、


そんな気持ちでポーション製造機にふれる。


中から現れたのはいままで目にした事のない

金色に輝くポーションだった。


「これで、もう一度……」


彼はそれを飲み、目を閉じた。


———————————————————————————


気づけば、

彼は日本代表のユニフォームを着ていた。

スタジアムは満員で、観客の歓声が響き渡る。

彼はゴールを決め、仲間たちに抱きかかえられた。


「佐野選手、MVPおめでとうございます!

 何か一言いただけますか?」


インタビュアーがマイクを向ける。彼は笑顔で答える。


「ここまで来られたのは、

 幼い頃から努力を続けた賜物です!

 これからも俺が日本を支えていきます!」


ワールドカップの立役者、周りにはファンの大歓声、

観客席には誰もが羨む可愛い彼女、まさに人生の成功者、

誰もが羨む順風満帆な人生



だが、、、



その栄光は、どこか薄っぺらく、現実味がなかった。




———————————————————————————


ある日、

彼は向かいの窓に映る老人がみえた。


そこに映っていたのは、

干からびた肌、抜け落ちた髪、骨ばった手を持った人物


「……誰だ、こいつ」


気づいてはいけない気がする

無性に不安を掻き立てられる


そして、


震えながら自分の手に目を落とす


そこには


窓に映った老人と同じ、頬張った手が見える


「ちがう、、ちがう、ちがう、ちがう、、」


目の前の景色が崩れ始めた。

スタジアムは廃墟に変わり、

歓声は風の音に変わった。


俺は路地裏の隅で、空の瓶を抱えていた。


「ちがう、、、俺は、、、まだ、、、」


そう呟きながら

彼は製造機に手を触れる、


空の瓶に、再び黄金色の液体が満ちていく


止まらない欲望と彼の生命力と引き換えに

金色に輝く『幻覚ポーション』を飲み続ける


———————————————————————————


棚に大量に並べられた、

青白く光る不思議な瓶を見つめながら、


店主は静かに呟いた。


「使いすぎにはご注意を。まいどあり」


扉の外では、次の客が雨に濡れながら立ち尽くしていた。












魔道具があれば便利だけど、

結局使い方次第だよな、

自分だったら上手く使えないだろうなと

ふと思い立って作ったお話です。



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