8、リベンジウサギ4
遅れてごめんなさい
とりあえず魔法の使い方はなんとなくの感覚でわかったものの、問題はそれがずっとできるかだ。
この足のはやさも魔力量とかそういう感じの制限があるのは当たり前だろう。なのでなるべく早く対処法を考えたいところだ。さもないと死んでしまう。
とりあえず俺は、決心したところで止まり、後ろを向いて粘着する壁を作るようにイメージした。
なんとなくで手を出し目の前で左手の甲と右手の平を合わせながら、熱いものをそこに誘導すると、六角形の組み合わせの幾何学模様が目の前に薄く貼られ、あとから猛スピードで追いかけてきていた兎たちはそれにまんまとはまった。
くっついた兎がきゅーきゅー!と鳴き声をあげても、みんなそれに気づくも勢い余ってくっついてしまった。
体がもふもふだからベトベトから抜けるのはさぞ辛いことだろう。無理やり抜け出そうとしたら体中の毛が抜け落ちそうな痛みが走っていて、助けを求めて今度はピーピーと鳴いている。甲高い鳴き声が頭にじんじんと響き、強い頭痛が起きた。
それを聞いた仲間が集まってきたようで、周りからあっという間にウサギがじゃんじゃん湧いてくる。だが捕らえられている仲間を見て、恐れているのか、一向に警戒してばかりで近寄ってこない。
もしかしてこいつリーダー格のウサギなのだろうが、だとしたら相当強いのも納得だ。
だったら、こいつをやればたぶん、みんな退散していくだろう。
だが最悪、復讐のためにみんなで一斉に襲いかかってきたとしたら、俺は間違いなく死ぬだろう。どうしようか。
色々考えてしまっていると、魔力が切れかかってしまい、体の内側に衝撃が走って体の筋肉がピタリと止まってしまった。透明なベトベトな壁も解けてしまい、うさぎたちが一斉に俺に襲いかかる。魔法を使ったり、ひっかいたりして俺のことを傷つけようとしてきた。
その間全く動かないが、なんとなく死ぬという気はしなかった。
さっきまで怖くて動けなかった傷の深いウサギの歯は、目を狙ってくるが、目にはすでに薄い膜のようなものが貼られていて、目をつむらなくても目を守ってくれていた。爬虫類にはみんな備わっている「瞬膜」というやつだろう。
それは完全無意識で動くので、普段は見えないもののようである。
もう一つの弱点である口も、歯と歯茎を引っかかれてもびくともしないため、俺はそのウサギに倒されることはなかった。あまりにも固くて齧られたくらいだ。
だが、これ以上動くにも動けなかった。
この後ウサギをやってしまっても良いのだが、なるべく血を体につけたくない。さっきみたいに川で洗うことが出来ないからだ。
仕方なく、魔力切れを待つしかなかった。唯一動く尻尾をふりふりしながら、俺は暇を潰していた。
尻尾を右に、左に、時には鞭のようにする練習をしてウサギを叩いて遊んでたりした。
なんでだろう、誇ってもいいのにとても虚しい気持ちになる。
本当はコイツらとなかよくしたいが、ミスって仲間を殺めてしまった分の償いなのだろう。きっとウサギたちもそれがきっかけで襲ってきているのだろう。
やがて魔力がよみがえった頃、ウサギは疲れ果ててひっくり返っていたり逃げてしまったりいろいろだった。
唯一体力のある強いウサギだけが俺を必死に叩いてなんとか鱗一枚剥がしたようだった。
俺は起き上がり、のんきにあくびする。
するとそこをチャンスだと思ったのか一匹のウサギが飛びかかってきた。舌を切られるかと思ったその瞬間、俺はかぶりついていた。
口の中に溢れんばかりの液体とよだれが流れ込んでくる。顎の力でウサギ一匹を齧ったのだ。すこしの力を入れただけなのに、こうとあっさりと。
「ギィィイィィアッ!」
ウサギの悲痛な叫びが喉の奥と頭に直で伝わってくる。周りにいたウサギたちは絶望し、逃げた。一匹も死に急ぐものなどいなかった。
そしてすぐに、驚くほど静かになった。
俺はウサギを咥えたまま、驚いて固まってしまった。ただ鼻からは生臭い匂いが流れてきて、同時に少しの虚しさが襲ってきた。
諦めてウサギの首を噛みちぎり、だれにも取られないように速く口の中に詰め込んで飲み込み、その死体を貪り食う。
まだ生暖かいが、それがまさかのおいしかった。新鮮な生臭い匂いと同時に、まるで焼き肉を食べているような旨味がひろがった。って咀嚼するたびそれが広がっていった。
この様子はさすがに、傍から見たらただのモンスターだろう。
俺はウサギの肉を食べきってしまい、口もとについた血をそこらへんの草に擦ってなんとか隠した。
「うわ……」
やはりその血は青色だ。
黒の混じった青で、それがグロさを醸し出しているように見えた。
「さて、行かないと。」
ウサギに気を取られて忘れかけていたが、本来の目的はあの人だ。見失ったが、だいたいの方角は覚えている。
軽い足取りで、その方向に走っていった。




