6、リベンジウサギ2 兎
俺は今にも飛び込んで殺そうとしてしまいたかったが、まずは仲間に報告だ。
その標的は人間と一緒にいた。魔力が見えるほど溢れかえっていて、到底俺らには勝てなさそうだ。
怯えながら茂みの中に潜んでいると、その魔女は先っぽに枝がたくさんついている杖を浮かべ、空を飛んでいった。俺の真上を通って、その足が耳の先の長い毛をかすめた。
「きゅうううっ!?」
思わず鳴き声をあげてしまう。バレたか?と思って慌ててにげたが、追いかけてくるようすもない。たぶん気づいてないようだ。
と思ったらすぐに何か茂みから走ってくる音がして、俺は慌てて横道にそれ、猿のように木の上に登った。あまりの焦りで体中があったまって呼吸が早くなってハァハァと犬のようになってしまう。肉球にも汗をかいていて、油断したら滑り落ちそうだ。
その標的、ドラゴンの子供は、普通の人間のように走っていたが、その速度はとんでもなく、あっという間に林の中に消えて行ってしまった。どうやらさっき上に登っていった箒にまたがった人間を追いかけているようだ。
ドラゴンの子が走っていったのを見ていると、つい深く覗きすぎて落ちそうになった。ここから落ちたら流石にただじゃ済まないだろう。無事に体制は整ったが、その緊張感はなかなか消えなかった。
まぁおそらくあの様子じゃあ、恋でもしたかまたは心配になったかのどっちかだろう。
俺は急いで仲間のところに駆け寄った。
すると仲間たちが俺を見つけた途端すぐに駆け寄ってきてハグをしてくれた。
「いた!」
「おかえり、大丈夫だった!?」
「うん、ギリギリで生き残ってきた」
「さっきいた場所からものすごい風の音と大きな気配がしてみんな心配で」
「ごめん、心配かけちゃって、すぐに降りようとしたけどなかなか降りられなくて……」
「木に登ったの!?」
「すごい!木に登れるのはジャウさんだけだよ!」
ジャウさんとは、さっきまでさんざん紹介したドラゴンに傷をつけられた兎だ。
兎界では気に登るということは一人前を意味している。
「気づいたら登ってて、降りるのたいへんだったんだよ」
「やっぱりそうなんだ、ジャウさんも登るのは簡単だけど降りるのはむずいって言ってたの本当なんだ!」
後ろで聞いていたジャウ本人はしっかり不機嫌で口をとんがらせて手を体に隠して休んでいた。あまり怒らせるとあの兎はこわいので、俺はズレていた本題を戻すことにした。
「あっ、それよりも、緊急集合だ。標的を見つけた!」
「見つけたの!?それを先に言ってよ!」
「悪い悪い!さぁ!早速行くよ!」
俺らが話してる間に数人集まっていたので、すぐに出発することにした。後から焦って来る兎たちもいるが、正直今は構っているヒマがない。なぜならあれは二度とほっといてはいけないものだと思っていたからだ。
もし途中で迷子になっても匂いを辿ってくると思うのでそれを信じて森の中を後ろも確認しないで進んでいく。
しばらく進んでいると、切り開かれた道ができていて、そこにアイツの匂いがぷんぷんと染み付いていた。
それに沿っていくと、木陰に座り込んでいるアイツがすぐに見つかった。
俺はまだ茂みの中に隠れていろと後ろに合図を送り、その後横に広がれと横に手を大きく振り手信号で合図すると、今いる茂みや他の茂みの中にもうさぎが、合計11体潜んでいる。
さすがのドラゴンの子でも、この人数なら簡単に切り刻む事ができるだろう。
だが油断したら死ぬだろう。ドラゴンはずる賢い者が多いらしいから。
みんな俺を見ている。合図を待っているのだろう。
俺がまずそのドラゴンの子めがけて飛び込むと、あとからどんどんと兎が出てくる出てくる。
ドラゴンは慌てて逃げようとしたが、戦い慣れていないのかあっさり俺の爪の餌食となった。
……ように思われた。
だが俺は気がつけば地面に横たわっていた。
どうやら飛ばされて頭を打ち付けて一瞬意識を失ったらしい。あまりにも呆気ない一撃で、唖然としてしまった。
他の仲間も俺と同じく。みんな吹っ飛ばされてしまったようだが、ドラゴンに傷つけられたやつがたった一人で奮闘していた。ドラゴンの子は防御体制で首と頭を守っている。
俺はそれに続くように走り出し、また飛び込んだ。