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4、スピードスター

 一体何があったのか定かではないが、とにかくその白い光が印象に残っているらしく、俺に尊敬も含んだ驚きの眼差しをずっと向けていた。口は笑顔で、瞳孔が開いているためちょっと不気味である。


 俺はずっと見つめられて相変わらず首をかしげて戸惑っている。たまに反対側に向けてもなんの反応もない。どうしてしまったのだろうか。がぁっと鳴いてみても手を顔の目の前にやってみても、またなにもない。


 そこで軽く触ると、やっと自分が止まっていることに気付いたようで、ハッとして我に返り慌てて俺から数歩離れた。

 爪が警戒されてしまっただろうか。


「はっ……ごめんごめん。つい夢中に……。」


 その人はさっきの俺のように恥ずかしがって顔が赤くなりながら頭の後ろを掻いていた。続けざまに何かを思い出し、本を持っては周りを見渡した。


「あっ!そういえばモンスターと戦ってる最中だった!まずい!速く行かないと!」


 その言葉を聞いて、そういえばこの人そらの上から箒と一緒に降ってきたっけ、と思い出し、さらにその先を思い出して吐きそうになった。なんとか抑え、彼女を見ると、なにか魔法を唱えて、本を開き謎の力で光らせながら、ここがどこかを把握しているようだ。どうやら知っている場所のようで、うんうんと頷いていた。


「こんなところに飛ばされてしまったのね……あのモンスター許せないわ!早く行かないと」


 どこに?というように「がぁ」と鳴いてみせる。服を引っ張り俺の丸い目でその人の目を見つめた。するとその様子に気付いてしゃがみこみ、俺の頭を撫でた。優しく包みこまれているようで、つい自分からその手を求めて頭で手を押し返してしまった。


 するとまたふふふとその人は笑って、手を俺の上に置いたまま顔を上げてきた。


「心配しなくても大丈夫だよ、私はこれでも結構すごい魔法使えるんだから!さっきのハイレストもそうだしねっ!」


 と腕をまくり筋肉を見せつけ、ウインクをした。それは自信を表していたが、その腕の筋肉は無いに等しかった。魔法に全振りなのだろう。

 その後、じゃ、と言って森の中に本を持って隣に置いてあった箒を棒有名映画のように「上がれ!」と言い魔法で浮かべさせてからそれに座り、そのまま森のなかに入ってしまった。そのあまりの速さに突風が吹き、葉が飛んできた。

 俺は思わず頭を抑えてその強い風をうけるしかなかった。


 そして風がやっと止んだかと思うとすでにその人は空高く舞い上がっていて、木々の隙間からいくらかその空を走る姿が見えるくらいだ。


「はっや……」


 俺は唖然として数秒その場に立ち止まってしまった。

 その間温かい日差しが俺に指し、強い紫外線を感じて体が温まっていくのを感じる。

 

 生まれてからまだ3時間くらい、人助けをした。

 俺はその瞬間、魔法に憧れた。


ーーー

 

 その後俺はその人が気になりすぎて、ついその人がまっすぐ飛んでいった方向に走っていってしまった。

 ずっとずっと長く、いつま全力で走っても追い付かないほどにそのホウキは速く、ついていくのがやっとであった。


 だがお腹の中がまだ水だけなので、体のエネルギーはじわじわと蝕まれ、しかも卵のから以外何も食べてないため、体力はないに等しかった。


 案の定走っていると途中で体力がなくなり、そのまま近くの木陰でひっそりと休むしかなかった。


 なにか食べ物でももらえばよかった、と後悔しながら木に倒れ込んでいると、その時モンスターらしき鳴き声がした。

 きゅっ。というかわいらしい鳴き声、それを俺は聞き覚えがあった。

 

 あのときのウサギだ。


 たしか轢き殺してしまってぺしゃんこになったあのウサギだ。

 


 その瞬間、木陰からなん十体ものウサギが飛び込んできた。


「キャーッ!」という雄叫びのような叫び声をあげた。耳をつんざき、意識を削がれるレベルの雄叫びを聞いて、反応がおくれた。


 そして、俺はそのウサギの爪を無数に受けた。


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