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11、オークの血

 オークはパタリと力尽きて倒れ、ついに倒したようだった。随分と動き回って疲れたようで、俺はオークが倒れたと同時に足に力が入らなくなってしまった。

 これも魔法を使った代償だろうか。どうにか立とうとしても、全く足に力が入らない。かろうじて力を入れたとしても、両足の筋肉がそこらじゅう収縮して、いわゆる「足が吊る」ような状態になり、ただ押さえて耐えるしかできなかった。

 

「ガァッ!」

「大丈夫!?今手当してあげるからね!」


 えっ、手当?筋肉痛をすぐに治す方法などないんじゃないか?と思って戸惑っていたが、ちょうどさっき直してもらったのを思い出してちょっとだけ恥ずかしくなった。

 それを隠すために急いで顔を隠す。


「ん?どうかした?どこか痛いところ触っちゃった?」

「が、ガゥ……」


 ど、どこも。というように首を振りながらそう言った。すると彼女はすぐに納得してくれたようで、不思議そうにしながらもそのまま回復魔法を当て続けた。


 その緑色の光は、まるで湯たんぽのようにちょうどよい温かさを感じさせ、傷や疲労感が癒やされていくのが感覚でわかるのが、とても気持ちよかった。ずっとこうしていたいが、おそらく魔力にも制限があるのだろう。さっき森で倒れたみたいに、本の中であった「魔力切れ」を彼女が起こしたら大変なことになってしまう。


 そうしてしばらくその緑の光に当たっていると、オークの血がこちらにまで流れてきていたようで、彼女の足元に青い血がついてしまっていた。

 俺はそれを指さし、一回鳴く。

 

「ガッ」

「ん?」


 その青い血を彼女が見た瞬間、彼女は魔法をやめてしまいとびあがって、数歩ほど小走りで離れた。


「いやぁっ!汚い!最悪!オークの菌がついちゃう!」


 彼女は悶えていたが、俺はまだ完全には動けないため、その血に体が浸かってしまった。

 必死に足を水魔法で洗い、俺も洗濯機のように水の球の中でぐるぐる洗われ、その血からは避けられた。だがもう一人の仲間、ラスがその血にどっぷり浸かっていた。

 

 しかもよく見たら靴が溶けている。


「ラスー!」

「ん……んぁ?ってうおっちょ!」


 彼も俺と同じように洗濯機みたいにぐるぐる回され、体中の服が濡れてた代わり血は完全に洗い流されていた。だが水が体中の穴に入ったのか、体を捻らせ振りまくっていた。


「うげっ……今のオークの血……ってことは」

「そう。倒したよ。でもドラゴン君一人でほとんど倒しちゃった。」

「まじかよ、あのオーク集団パーティーで倒すのがやっとなのに!?」

「ガァァ……」


 俺は不意に褒められてつい照れてしまった。

 種族が違うので当たり前だが、こんな屈強そうな男に驚かれるほど強いなんて思ってもいなかった。なんだか自分の尊敬してる人に褒められた気分だ。

 彼はふと足もとを見ると、先っぽが少し焼けてなくなっている事に気がついた。


「えっ!俺の新品の靴!」

「オークの血液で溶けちゃったんだよ、ごめんね気づかなくて」

「ガ、ガァ……」


 つい褒められて照れてもじもじとしてしまう。それを見て彼女は無邪気に笑った。


「ハハハ!やっぱかわいい」

「面白いドラゴンだな、まるで人間みたいだ」


 彼も豪快に大きく笑ってくれた。

 俺がもじもじするだけでこんなにも面白いのか、と嬉しくなると同時に吊り下げ晒されているような気持ちになった。


 すると、二人のお腹が同時に鳴った。

 さっきの俺のように今度は二人が赤面し照れた。気まずくなって顔を会わせた後、二人は吹き出してしまった。


「あっ……ハハ」

「ハハ、腹減ったな、なにか食べに行くか!」

「たくさん戦ってたしね」

「ガウ!」


 内心、男の人はずっと寝てただけだろ……と思いつつも、俺はそれを隠すように元気に鳴いてみせた。


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