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今回短めです、すみません
体感では約10時間ぶりに彩華と目を合わせたことになるが、その姿は大きく変わっていて高校時代の彩華は大人時代と違い、可愛らしさが溢れていた。
ちなみに大人になってからの彩華はどちらかと言えば美しい系だった。
「私も兎オムライスだから」
「分かったよ~。ほらアヤちゃんは俊君の隣に座る」
「いや、そこまで仲良くない篠原さんは芽衣の隣で……」
「別に私はどっちでもいいわ」
おい、可愛い系の見た目しといて高校時代も中身は変わらないのかよ。
彩華は簡単に言えば細かい事はあまり気にしないタイプの人間だ。
だから隣が俺だろうが彩華だろうがオムライスが食べれるのならどっちでもいいと考えているのだろう。
そして彩華が俺の隣に座った。
座った時に生まれた軽い風に乗って彩華の匂いを少し嗅いでしまった。
いい匂いがしたと感じつつ俺は若干の胸の高まりを抑えきれずにいた。
何故だ、相手は元妻だぞ。
子どもだっていたのに何を今更この程度で俺は緊張しているんだ。
「なんで芽衣と川崎君はそこまで仲がいいの? 単純に気になったわ」
「元から割と私が話しかけてんだよ」
「確かにあなたは部活の仲間なら誰でも仲のいい友達だったわね」
「それに今日は俊君にピアノの調律をしてもらったんだ。それでね、俊君のピアノ滅茶苦茶上手かったんだからね」
「それは興味深いね。まさか全てにおいて全くやる気の無い川崎君のピアノの腕が芽衣が褒めるほどの腕前だなんて」
かなり言葉の暴力を感じた。
恨むぞ、昔の俺。
「確かに今までの俊君はやる気のないクソ野郎だったかもだけど、私のピアノを3時間もかけて調律してくれたから私は見直したよ」
「それは今までは考えられない行動ね。今度川崎君のピアノ、聞かせて貰おうかしら」
「高校に上がった後機会があったなら演奏します。俺も吹奏楽部に入る予定なので」
「別に変に畏まらなくて良いわよ。芽衣に話してるように話して頂戴」
すみません、ただ緊張しているだけなんです。
隣にいるだけで息遣いとか、微かに漂ってくる良い匂いとか、その他諸々を感じ取ってしまうせいで緊張してしまうのだ。
何故中身は子持ちのおっさんなのに童貞みたいな反応になってしまうのか、疑問である。
「アヤちゃん、俊君は少し緊張しているだけだから突っ込まないであげて」
「何故緊張しているの?」
なんだかんだ色々と鈍い彩華には分からないかもしれませんが、俺は彩華が好きだからです。なんて言える訳もなく、この話はオムライスが到着したことで流されることになった。
さて本題のオムライスだが20年後にはインスタでバズりそうなかなり面白いオムライスだった。
しっかりとメニューの写真通りに兎の形をしたオムライスで味も中々の出来栄えだった。
そしてそれから他愛の無い吹奏楽の話をして、今日は明日に入学式を控えている事もあり解散となった。
「ねえ俊君。一つ訊いていいかな?」
「なんだ?」
解散した後にわざわざ芽衣が俺に話しかけてきた。
「なんか大きな秘密抱えてたりしないかなって思って」
「別に秘密なんて無いけど」
芽衣のやつ中々鋭いな。
今の所は言っても信じて貰えないだろうし、タイムリープの話を他人に言うつもりはあまりない。
「そう?でもいきなりかっこよくなったり、アヤちゃんと少し緊張はしていたみたいだけど割と普通に話せてた。それにある程度の気配りも出来てた。今までの俊君じゃ考えられないくらい変わってると、何か理由があると思わない?」
「確かに俺は今までとは比べようもないくらい変わったのかもしれない。でも、変わった理由は特別なモノじゃなくてただの恋心だよ」
これは嘘ではなく歴とした本心だ。
前世の俺は彩華の事を本心から好きだったから変わることが出来たんだ。
「確かに俊君の恋心は本当だと思うだけど、なんか引っかかるんだよね。私でいいなら相談くらい乗ってあげるよ」
「そうだな、これから相談したくなったら助けてもらう事にするよ」
「じゃあそれだけ! また明日!」
「ああ、また明日。入学式で会おう」
俺の記憶が間違っていなければ明日の入学式の主席合格者は彩華で、俺と彩華そして芽衣は同じクラスになる。
前世とは違う高校生活の始まりの予感を感じながら俺はタイムリープ初日を終えたのだった。
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