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篠原さんをもう一度振り向かせたいっ!  作者: 柴木雨月
#1 タイムリープとオムライス
4/39

3

「そう言えば俊君のお母さんって元プロピアニストなんだよね」

「ん?たしかに母さんはそうだけど」

「実はおばあちゃんから古いピアノを貰ったんだけど、長年使ってなかったみたいで調律が必要になっちゃって困ってるんだよね」

「なるほど、それで俺の母さんの名前が出たのか」

「折角貰ったからしっかりと使ってあげたいんだよね」

「分かった。俺で良かったら今からでもやってあげるよ」

「えっと、俊君のお母さんじゃなくて俊君がやってくれるの?」

「そうだ。実は今まで隠してたんだが正直ピアノはフルートよりも自信がある」

「本当!? それは楽しみだなぁ。今からでも私の家、来る?」

「そうだね、まだ時間に余裕はあるしお邪魔させてもらおうかな」


 そう言うと嬉しそうな表情をした芽衣がクルっと一回転して小走りで走り出してしまった。


「善は急げって事で早く~!」

「分かった分かった!」


 肉体は若くなっているはずなのに走ってみると体力が無さ過ぎて直ぐに息切れしてしまった。


「ちょっと体力無さ過ぎ。私の家はすぐそこなんだから元気出して」

「わ、分かった。はぁ、はぁ。もうすぐなんだよな?」

「そうそうあそこの曲がり角を曲がった所」


 春の北海道の肌寒さを20年ぶりに感じながら、俺は芽衣の実家へと入っていった。

 芽衣の実家に訪れたのは前世を合わしても初めてだ。

 芽衣の実家は2階建ての一軒家で、中もしっかりと整えられていた。


「上がって上ってー。例のピアノは私の部屋だから2階にあるけどまずは水でも飲む?」

「ああ、そうさせてもらおうかな」

「それと一応私のお母さんにもあいさつしないとね」


 中口家の居間は白を基調としているとてもお洒落なものだった。

 そして初めて見る芽衣の母親は芽衣に似てかなりの美人さんだった。


「初めまして、私が芽衣の母の美香子です。うちの娘がいつもお世話になっています」

「いえいえ、世話になっているのは俺の方ですよ」

「そうだよ、お母さん。私が俊君の面倒を見てあげてるんだから」


 なんで芽衣は偉そうなんだ? 高校時代の彼女は35歳の時と比べてどこか謎な部分が多いし、陽気すぎるので時々理解が追い付かない。


「それで今日はピアノの調律の話を聞いてお邪魔させてもらいました」

「俊君のお母さんは元プロピアニストだから安心して」

「そうなの? 我が家のピアノの調律、お願いしますね」

「任せてください」


 俺は用意してくれたコップ一杯分の水を一気に飲み干した。


「じゃあ結構時間かかっちゃうし早速始めるか」

「えっと、ちょっとタンマ。私の部屋今汚い」

「別に俺は気にしないけど」

「いや、私が気にするでしょうが。ちょっと待ってて、直ぐに片付けるから」

「分かった、待ってるよ」


 早速準備に取り掛かろうとした俺ととめた芽衣は急いで会談を駆けあがって彼女の部屋の中へと入って行ってしまった。


「俊君であってるかな?」


芽衣がいなくなると直ぐに芽衣のお母さんである美香子さんが話しかけてきた。


「は、はい。川崎俊と言います」

「川崎俊君ね、覚えたわ。随分と娘と仲がいいみたいだけどデキたりしてるのかしら?」

「いえいえ、芽衣さんはただの友人ですよ」

「そう、変な質問をしちゃってごめんなさいね」


 俺としては本当にただの友人としか思ってないのだが他人から見れば今の俺と芽衣は恋仲に見えてしまうのだろうか?

 まあ、思春期の男が女の家に上がってる時点で恋仲と見られても仕方ないと思うべきなのだろう。


「片付け終わったよ! 来て来て!」

「分かった」


 俺はゆっくりと中口家の階段を上っていく。

 2階には芽衣の部屋と彼女の両親の部屋、そして物置のような部屋が存在していた。

 俺はゆっくりと芽衣の部屋の扉を開く。

 何気に彩華以外の女子の部屋に入るのは初めてだったので少し緊張してしまった。


「ここが私の部屋。あんまり色々見られると恥ずかしいからやめてよね」

「サンリオキャラクターが好きなのは前から知ってるし隠さなくてもいいのに」

「な、何故それを!?」


 しまった、彼女がサンリオキャラクターの大ファンだと知ったのは確か大学に上がってからだった。


「まあ知ってるものは知ってるんだな」

「理由になってない」


 芽衣は俺の事をジト目で見つめてきたが、俺は気にせず部屋の奥にあったピアノの蓋を開ける。

 少し触っただけでかなり古い物だと分かったけどかなり高価なアップライトピアノだという事も同時に分かった。


「確かに年季は入ってるみたいだけど、中々いいピアノだ……、それとそこの棚からプリキュアのグッズがはみ出してる」

「う、嘘ー!?」


 今度はプリキュアのグッズが棚から少しはみ出していた。

 無視すると言う選択肢もあったが反応が面白そうなので一応指摘してみた。


「棚に押し込まれているグッズが可愛そうだし。俺に隠しても無駄だから素直にグッズを解放してやってくれ」

「ねえ、絶対に秘密にしてくれるよね」

「涙目と上目遣いで見つめられたら、断る気は無いけどとても断りにくい……」

「本当? 絶対秘密だからね」

「分かってるよ。芽衣がサンリオとプリキュア好きなのはここだけの秘密な」

「アヤちゃんにも言わないでね?」

「そもそも今の俺は彼女とまともに話せない」

「今の?」

「気にしないでくれ、言葉の綾だ」


 学年でも屈指のモテ女だった中口芽衣の秘密はサンリオとプリキュアの大ファンであるという事だ。

 個人的には別に隠す事ではないだろうと思ってるのだが、本人は何がなんでも隠したいらしい。

 本人としては高校生にもなってプリキュア好きって広まるのは恥ずかしいのだろう。


 俺は涙目になりながら必死にグッズを元の場所に戻している芽衣を眺めながらピアノの音を確認し始めるのだった。

ここまで読んでくれてありがとうございます!!!

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― 新着の感想 ―
芽衣の隠れたオタク趣味と、それをからかう主人公のやりとりが微笑ましくて最高。ピアノ調律という静かな題材の中に、青春の空気とじんわり距離の縮まる感じが詰まっていて、一気に読めました。
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