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 迷子のリク君はすっかり泣き止み現在は彩華と手を繋いで楽し気に水族館を回っていた。

 本来の目的である、はぐれてしまったお母さんを探すのを忘れていそうなはしゃぎぶりのリク君だったのである。


「わあ! お姉ちゃん見て! さかな~」

「すごい、魚だね」


 結果的に、気が付けば俺と彩華はリク君を連れて水族館の出口まで辿り着いていた。

 最後までリク君のお母さんは見つからなかったので、水族館の迷子センターが近くにあったからそこに行こうとした時、急いでこちらに向かってくる女性が現れた。


「すみません! そこのお二人!」

「あ! ママだ!!!!」


 どうやらこちらに向かってきた女性はリク君のお母さんだったようだ。


「リク!! 大丈夫だったの?」

「うん! そこの夫婦の二人が一緒にいてくれたの!」


 あ、お母さんの前でも夫婦って言っちゃうのね。


「本当にありがとうございます。実はトイレに行っている間そこで待っているように言ったのに気が付いたらいなくて困っていたんです」

「そうだったのですね」

「本当にありがとうございます」


 そう言ってリク君はお母さんと手を繋いだ状態で俺らの元を離れていった。

 最後には満面の笑みでこちらに手を振ってくれたので俺も手を振り返しておいた。


「なんだか前にもこんな出来事があった気がするわ」

「そうだな。……え、前にも?」

「なんとなく頭の片隅にあるって感じかしら? 別に夢の中の話とかそんなレベルよ」

「そうか、変な事を訊いたな」


 たしかに俺の記憶の中には彩華とのデートで似たような経験をしたことがある。だから俺は最後にリク君が迷子になったかの理由を聞いて『偶然にも前と同じだな』と言う感想を抱いた。

 でも彩華にはそのデートの記憶は残っていないはずだ。


 ――――もしかして俺が死んだ世界線の記憶を断片的にでもみんなが持っているのか?


 俺は途端に前回の人生で俺がしでかした失敗を全て彩華に思い出されてしまうのではないかと言う不安が頭の中に膨らんでいく。


「ごめん彩華。本当にごめんなさい」

「ちょ、急にどうしたのよ」


 溢れ出した不安はやがて罪悪感に代わり俺は感情の制御が不安定になってつい泣いてしまった。


「もう、よく分からないけど泣きたいなら胸を貸してあげるわ」


 彩華は空気を読んだのか、それとも持ち前の性格からか急に泣き出してしまった俺を優しく抱き寄せてくれた。

 俺はその空気感が心地よくて、懐かしくて、更に感情が膨らんでいく。でもそれと同時に徐々に自分の感情を整理していき、少し時間が経った後に俺は顔をあげた。


 もうこんな暖かい場所を壊したくない。

 今度こそ俺は君に恩返しがしたいし、君を幸せにしたい。


「次こそは頑張るから、次こそは――――最後まで一緒にいてくれないか」

「えっと……どういう意味かしら?」

「別にただの独り言だよ。ありがとう、篠原さん。このままここにいてもカッコ悪いし帰ろうか」

「そうね、今日はもう疲れたわ」


 そう言った二人は水族館を一緒に出ていった。

 その頃にはもう雨は止んでいて、空に浮かぶ夕日が綺麗な輝きを放っていた。

 少しだけ距離が近くなった二人ははたから見ればカップルに見えていただろう。


「そうだ、篠原さん。これ、ちょっと時間見つけて買ったんだ」

「ペンギンのストラップ?」

「そう、俺の分もあるからお揃いだぞ」

「いつの間に買ってたのかしら……。まあ、ありがたく貰っておくわ」






 そして気が付けば金曜日になっていた。


「明日から校外学習だなんて信じられねえな」

「ああ、そうだな達也。準備するものが多くて大変だ」

「そうだね、二泊三日になると美容品も結構持ってかないとだよね」


 あ、陽太はそっちの心配ですか……。やっぱり彼は女に生まれるべきだったのではないだろうか?


「このメンバーで初めてのお祭りみたいなモノだろ? すっごく楽しみだぜ」

「僕も楽しみだなぁ。みんなで夕食作ったり、夜に恋バナしてみたり、ワクワクが止まらないよ」

「と言ってもこの三人で一緒の部屋なんだぞ? 恋バナはちょっと厳しいんじゃないか?」

「別にそんなこと無いですよ! だってこの班には俊君と篠原さんがいるじゃないですか」


 陽太が笑顔で俺の事を指差して言ってきた。


「別に俺と篠原さんは恋愛的な関係じゃ……」

「でもそのペンギンのストラップお揃いですよね? しかもそれは最近できた水族館の限定品。ここから導かれるのは俊君と篠原さんがその水族館でデートしたという事です!」


 す、全てを当ててきやがった。

 陽太は探偵なのか? 名探偵陽太と呼んだ方がいいのか?


「陽太は凄いな。概ね正解だよ……」

「本当!?」

「す、すげえな陽太」


 自分の推理が当たって喜んだ顔をした陽太と、驚いた表情の達也。


 そして似たような会話は教室の別の場所でも行われていた。


「あらあらアヤちゃん、もしかしてそのストラップ、愛しの俊君とお揃いですかい?」

「ちょ、芽衣!? 勘違いする事言わないでよ」


 ニヤニヤした表情の芽衣と焦った姿を見せる彩華。

 芽衣は「凄い事気がついちゃった」と言う気持ちで詮索を続けていく。


「それってどこで買ったの? もしかして水族館?」

「め、芽衣には関係ないでしょ?」

「あらあら恥ずかしがっちゃって。言わないと大声で色々バラしちゃうかもよ?」


 笑顔で軽い脅しをする芽衣に流石の彩華も屈して先ほどまで固く閉ざしていた口を開く。


「これは一昨日川崎君と一緒に水族館に行った時にお揃いで買ってもらった物なの!」

「もしかして水族館デートですかい? それはまた面白い事を……」

「これだから言いたくなかったのよ」


 その後も色々と詳細を聞いてくる芽衣に彩華は軽くうんざりしてしまう。


「「ストラップ、目立つところに付けたの失敗だったなぁ」」


 そしてとある男女の心の声は偶然か、それとも必然か重なるのであった。


ここまで読んでくれてありがとうございます!!!

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