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≪篠原彩華視点≫
今日は川崎君が夏のコンクールのピアノ奏者決めで私に勝ったので、前に約束した通りデートに行く事になった。
この日の為に何時間もかけて服を準備したり、久しぶりにお姉ちゃんに連絡を取ってアドバイスして貰ったり、美人なお手伝いさんにメイクを教えて貰ったりとかなり時間をかけて準備したつもりだ。
「今日の私可愛いかな……?」
何度も鏡の前で自分の姿をチェックしてから家を出る。
本当はもう少し早く出発したかったけど思ったより時間がかかってしまった。
祝日の街中は人が多かった。
人に当たらないように待ち合わせの場所に着くとそこには川崎君が先に待っていた。
「あ、篠原さん!」
私が声をかけるよりも早く、川崎君が私に反応して声をかけてくれた。
「遅れてごめんなさい、待ったでしょ?」
「いやいや、俺が早く着きすぎただけだよ」
待たせちゃったならもう少し早く起きればよかったと反省しつつ、私と川崎君は二人並んで歩きだす。デートと意識してしまうと、何回か一緒に下校をした経験があるのに今日はいつもより恥ずかしく思えてきた。
今日のデートプランは川崎君が事前に考えてくれたらしいので私は川崎君について行くだけでいい。
「篠原さんの私服めっちゃ可愛いね」
「そ、そう? ありがとうね」
歩いていると突然川崎君に褒められてしまった。
自分なりに頑張ったので褒められると頑張った分だけ嬉しいと感じてしまう。
「よし、まずは新しくオープンした猫カフェだな。篠原さん猫好きでしょ?」
どうやら最初に行くのは猫カフェらしい。
にしても何故川崎君は私の好みを勝手に把握しているのだろうか?
私、川崎君に猫が好きだって言った覚えはないのだけれど。
「猫は好きだけど川崎君に言った覚えはないわよ、なんで知ってるのかしら」
「そっちは企業秘密だな。まずは猫カフェに行くぞ」
「そうね……まあ早く猫ちゃんに会いたいし深堀りはしないでおくわ」
訊いてみたけどはぐらかされてしまった。
これ以上考えてもしょうがないので、猫ちゃんについて考える事にする。
猫ちゃんは大好きなのだけれど猫カフェには行った事が無いのでかなり楽しみだ。
早速店内に入るとちょっとぽっちゃりとした黒猫ちゃんと目があった。
猫ちゃーーーーん!
つい私は余りの可愛さに目が合った黒猫ちゃんを抱き上げてしまう。
このモフモフがたまらないのよねーー!
私が猫ちゃんと戯れていると川崎君がカフェのメニュー表を見せてくれた。
ざっと目を通すとかなり多くの種類のスイーツがあるようだった。
私はイチゴが好きなのでイチゴパフェを頼むことにした。
つい、いつもの癖で特大サイズで注文してしまったけど問題無いわよね……?
川崎君は普通サイズの猫ちゃんパフェとやらを注文したらしい。
パフェが来るのを待っている間はふれあいスペースで猫ちゃんを可愛がることにした。
ふれあいスペースに入ると人懐っこい猫ちゃんが沢山私の元へとやってきた。
やばい、可愛すぎるわ。
まるで天国のような空間に入り浸っていると、パフェが完成したらしいので私は席に座りイチゴパフェを食べる事にした。
イチゴパフェを食べていると突然川崎君が「少し食べる……?」と言ってパフェを乗せたスプーンを私に差し出してきた。
しかも「あーん」とか言ってきたのだ。
これは私に対する挑発なのかしら……?
これはわざとこんな恥ずかしい行動をして私を困らせたいって言う魂胆が見え見えよ。
こんな安い挑発に私は負けないんだから……!
私は少し恥ずかしがりながらもパクリと差し出されたパフェを口に入れる。
猫ちゃんパフェはチョコレート味で結構美味しかった。
パフェを食べた後はイタリアンソーダと言うジュースを飲むことになった。
イタリアンソーダはシロップを溶かしたジュースのようで川崎君が解説を交えて、シロップの混ぜ方も教えてくれた。
そこでふとストローで飲む飲み物だったらさっきの仕返しが出来るんじゃないかと私は思いてしまった。
川崎君はさっきの一件で油断してるでしょうし、ここで一度仕掛けてみようかしら?
前みたいに慌ててくれたら面白いしね。
「そっちの味も少し飲んでみたいわ。さっきみたいに一口交換……しない?」
私のターンのはずなのに少しだけ恥ずかしさを覚えつつ、私は自分の思い通りにお互いのグラスを交換することに成功する。
概ね予想通り、川崎君は先ほどよりはマシだったけどあからさまに動揺しながら私の飲んでいたジュースに口を付けた。
それから私も川崎君のイタリアンジュースを飲んでみる。ブルーベリー味も中々美味しかった。
次は水族館に行くらしい、今度はどんな出来事が待っているのか楽しみね。
私は早くも今日一日のデートはいい出来事になりそうだと思うのだった。
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