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「おい、男女混合5人班ってどうする?」
「ああ、達也か。実は俺もそれについて考えてた」
顔を上げると机の前には達也がいた。
そして達也も俺と同じ事で悩んでいたらしい。
「まだこのクラスになって1カ月にもなってないのに男女混合班なんて先生も無茶言うよな」
「でも達也は女子と仲良さげだろ?」
「あれは表面上仲いいだけだな、別に特別仲のいい女子はいない」
「陽キャの世界は難しいな」
人脈のありそうな達也でも困ってしまう班決め、俺にどうにかする事は出来るのだろうか?
「それなら篠原さんと中口さんを誘えばいいんじゃない?」
今まで話してなかった陽太が会話に入ってきた。
「確かに俊はその二人と仲が良かったよな? 丁度5人だしいいんじゃないか?」
「篠原さんと芽衣を誘うね……、分かった誘ってみ_____」
「私たちならもうここよ」
俺が彩華の席に行くために立ち上がると既に俺の真後ろに彩華が立っていた。ついでにその後ろには芽衣も立っている。
「話は聞いたわ。丁度5人で全員顔見知り、こんな都合のいいグループも珍しいでしょ?」
「そうだな、篠原さんの言う通りだ。俺達5人で班になろう」
達也も彩華の意見に同調する。
「よし、決まりね。班長は川崎君、頼んだわ」
「え、俺!?」
それだけ言い残すと彩華は足早に自分の席に戻って行ってしまった。
周りには笑顔の二人が「班長頑張って」と言っている。
「まさかあの篠原さんと中口さんと一緒の班になれるなんて夢にも思わなかったぜ」
「そうだね、思い付きで言ったもののまさかこんなあっさり決まるとは僕も思わなかったよ」
「君たちは幸せそうでいいな、俺は班長とか言う柄にもない事を押し付けられて……」
「大丈夫だ俊、俺がフォローしてやる」
「僕もいるからね、俊君」
「お前ら愛してるぞ」
班長なんて本当にやっていける自信が無いのだが、彩華が俺にやれと言った以上恐らく拒否権はないので一先ず頑張ってみる事にした。
因みに校外学習と言うのはバスで2時間ほどの田舎に一学年全体で行き、そこでキャンプをしたり、炊事をしたり、森を散策したりする所謂新しい友達と仲良くなるためのイベントなのだ。
それと進学校なのでアウトドア活動の他に、室内で自習の時間があったりするちょっと頭のおかしいイベントでもある。
そして開催日時は2週間後の土、日、月である。
そして気が付けば5限目まで授業が進み、俺らは班決めをクラス内でしていた。
「私たちは元から決めてるからこれで問題ないわね」
「そうだね、俊君が班長でアヤちゃんが副班長。うんうん、我ながらいい班だと思うよ」
字が綺麗という事で芽衣がスラスラと班員の名前を書いて提出する紙に俺らの名前を書いていく。
驚いた事に芽衣は達也と陽太の名前も迷わずに漢字で書いていた。
これには達也も「よく迷わず名前を書けるな」と独り言を呟いた。
「ん?まあ私はクラスのみんなと友達になりたいしもう全員の名前覚えちゃったんだよね」
「わりぃ、独り言のつもりだったんだが聞こえてたか。にしてももう全員か凄いな」
「僕の名前も覚えてくれてるなんて嬉しいです」
ここで昔から芽衣は人の顔と名前を一致させたら絶対に忘れないタイプだったなと俺は思い出す。
ふと周りを見渡せば先ほどまでぼっちで席に座っていた真島がどこかの班に拾われているのが見えた。
あの場にいなかったが事の顛末を知っている達也や芽衣もあまりいい表情で真島の事を見ていない。
あの時はついかッとなって脅迫まがいの事を言ってしまったが実際俺は真島に退学して欲しいとは本心では思っていない。
昔のよしみも含まれているが彼には更生して欲しいのだ、だから俺はあの出来事を彩華に謝るまでは基本的に無視をする予定だ。
勿論また彩華に害意を持って接するようであれば即座に証拠のビデオを学校に提出するつもりでもあるけどね。
「さて、紙は完成したことだし提出しましょうか。班長お願いね」
班員の名前を書いた紙を先生に提出し、次に班活動の内容を考える事になった。
「さて、次は班活動の内容なんだが……何かやりたいことはないか?」
「私はなんでもいいわ」
「私もアヤちゃんと同じ」
「俺は俊のやりたいことについていく」
「僕はなんでも……」
「うん、君たちは思ったよりも主体性が全然ないな!」
困った、このメンバーだと基本的に俺が決めないと何も進まない。
まず男子勢は何故か俺への信頼度が高い、故に俺に決めて欲しい。
そして女子勢は端的に言えば若干めんどくさがりが二人だ。
しゃーない、ここは人生二週目の俺が決めてあげるか。
「そうだな、この学校の班活動は3日を通して何かを研究し、レポートにまとめると言うものだ。レポートにまとめると言う都合上学問に関連するものだとレポートが楽になる。例えば今回の宿泊地である戸谷湖周辺の山の自然と生物の授業で習った事をミックスしてレポートを作るって言った感じ。そこで俺は校外学習の立地を生かして天体観測をレポートのメインにしたいと思う」
「天体観測? 星を見るのって少し手間がかかりそうね」
「いい着眼点だ篠原さん。勿論しっかりと星を見るのなら望遠鏡が欲しいだろう。しかしこの問題は校外学習の活動場所が解決してくれる」
「そう言う事か! 確か戸谷湖周辺には天文台があったはず!」
「その通りだ陽太。戸谷湖天文台、ここには天体観測セットの貸し出しプランが存在している。そして今回は校外学習のレポート研究に各班予算が付いているから貸し出しの値段は気にしなくて結構だ。そしてもう一つ、俺は昔家族で戸谷湖に行った時にかなり天体観測によさげなスポットを見つけている。どう思う? 三日間の天体観測をレポートにする案は」
俺なりに校外学習二回目である事を使ったアイディアを提案してみた。
戸谷湖天文台で望遠鏡を借りれると言う話を1周目の校外学習の時に小耳に挟んだのを辛うじて覚えていたのでそこからプランを組み立ててみる事にした。
「確かに、満点の星空を見ながら深夜にみんなで星を見るって楽しそうかも」
「俺も賛成だな、なんだか青春って感じがするし面白そうだ」
「僕も賛成です」
最後は彩華だけなのだが彩華は少し腕を組んで考え事をしているようだった。
「少し思う所はあるけど私も概ね賛成よ。川崎君の案で班活動を進めましょう」
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