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「で、デート!?」
「しーー、静かに」
彩華の声が静かな住宅街に響き渡ってしまったので咄嗟に人差し指を彩華の口元に運んでしまった。
俺の人差し指と彩華の唇がつい触れそうになってしまい少しだけドキドキしてしまう。
「か、川崎君は本気で私とデートがしたいの……?桃崎さんとじゃなくて?」
「そこで何故凛の名前が出てくるのかは謎なんだが俺は本気でデートしたいと思ってるぞ。だって男子なら一度くらい可愛い女の子とお出かけしたいだろ?」
「か、可愛い女の子ね……」
彩華がすっごく恥ずかしがっているのが伝わってきた。
流石に攻めた台詞を言いすぎただろうか、俺って肉食系ではないもんな……。
「いいわ、私が負けたらデートしてあげる。その代わり私が勝ったらクレープと追加で何か奢りなさい」
「いいぞ、負けるつもりは絶対にないからな」
そう言って俺と彩華はまた二人横になって歩き始めた。
「その、さっきの話とは関係ない事で聞いておきたいんだけどいいかしら」
「別に俺に秘密なんてないぞ」
「なら川崎君は桃崎さんの事をどう思っているのか訊いてもいいかしら」
「そうだな、難しいけど……______やっぱり幼馴染って気持ちが先行するよな」
「可愛いとか思ったりしないの?」
「そりゃ客観的に見たら可愛いけど、ずっと昔から一緒にいる人をあまり恋愛的に捉えられないな」
「そう、なのね」
普段あまり恋バナをしてこない彩華が珍しく恋バナらしき話を振ってきた。
どうやら彩華は今日の凛の姿を見て何か勘違いをしてしまったぽいけど凛は昔からあんな感じなので凛が俺の事を好きとかそう言う事は無いと思う。
それに俺は彩華一筋でやってるから、彩華以外の女の子なんて恋愛的には眼中にない。
「話はそれだけか?」
「そうね、それだけよ。そして私の家はここだから、さよならね」
「そうだな、また明日」
彩華が家に入って行くのを見送った俺は家に着くと直ぐにピアノの練習に取り掛かった。
本気を出した彩華、それに今川先輩に勝つのは簡単な事ではない。
いかに俺が20年分の記憶でリードを取っていたとしても少し油断をすれば簡単に俺を超えてくるのが真の天才たちだ。
夏のコンクールでのピアノ奏者の座をつかみ取り、彩華とデートをする。これを目先の目標にして俺はただひたすらに鍵盤を叩くことにした。
「今日のお兄ちゃんはいつにもまして練習熱心だね」
深夜、ピアノに熱中しすぎたあまりお腹が空いたので夜食を食べていると妹の香奈が話しかけてきた。
ピアノは防音室にあるので音は漏れていないはずだがずっと練習していたことはバレていたようだ。
「もう少ししたら夏のコンクールのピアノ奏者決めがあるんだ、だから練習してるんだよ」
「なるほど、でもお兄ちゃんの実力なら別にそこまで頑張らなくてもいいんじゃない?」
「香奈、この世には彩華とか今川先輩みたいな天才がいるんだ。そう言う人たちが本気を出したら俺みたいな凡人は一瞬で抜かされる、だから油断は禁物なんだ」
「お兄ちゃんだって十分天才でしょ……」
「と言う訳でお兄ちゃんはもう少し練習するからおやすみ」
「うん、おやすみお兄ちゃん」
妹に手を振ってまたピアノの練習に戻る。
そうして練習を終えたら少しだけ長く感じた俺の一日が終わった。
翌朝、眠そうな顔をして学校に行くと達也が話しかけてきた。
「俊、少しだけ陽太からメールで聞いたんだが昨日の件どうだったんだ?」
「ああ、達也か。ちょっと予想外の事もあったけど無事何とかなったよ」
「それで犯人は誰だったんだ?」
「ああ犯人はあそこの真島だよ、あまり広めたりすんなよ」
「分かってるよ、なんとかなったら安心したぜ」
達也はいいやつなので部活のせいで現場にいれなかったのを気にしているのだろう。
「俊君と達也君、おはよう」
「おお、陽太かおはよう」
丁度いいタイミングで陽太も教室に入ってきた。
「なんだか俊君はお疲れの顔だね」
「ああ、昨日夜中までピアノの練習をしてて寝不足気味なんだ」
「吹奏楽部もサッカー部と同じくらい大変そうだな」
達也は部活の練習は大変だよなと首を縦に振りながら同情してくれた。
「まあ今は特別気合を入れないといけない時期だからな、コンクールの奏者決めがまじかに迫ってる」
「なんだか俊君だけテスト前って感じだね」
「本当、そんな感じだよ陽太」
そんなタイミングで朝のHRのチャイムがなり俺の席の近くにいた達也と陽太はそれぞれの席に戻っていった。
「本日の5限目は校外学習の班決めを行います。詳細は5限目に説明しますが男女混合5人の班分けを行うので事前にある程度決めておくように。では今日も一日頑張りましょう」
HR担任がそう言って朝のHRが終わった。
1年生の校外学習はある程度記憶が薄れているけど、かなり地獄な班を引いてしまった記憶がある。
たしか2泊3日ほとんど班員と話さなかったのだ。
悪い記憶を振り払うかのように首を振った俺は班分けどうしようかなと思いながら机に突っ伏したのだった。
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