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【連載版】そんなに姉が大好きで、私に興味が無いのでしたら私も無関心になりますね  作者: 野良うさぎ(うさこ)
一章

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セイヤ愛を込めて

 セイヤ・マシマ。


 学園理事長室でレオン様との面談。ジゼルの婚約破棄の件についてだ。


「本当に婚約破棄でいいのか? しかも今後は誰とも婚約をしないというのか? もう少し欲張りになっていい、と俺は思うぞ」


「いいんです、これで全部白紙にして下さい」


「まあ、ジゼルとディットが婚約する事は問題ない、と俺は思う。女帝次第だがな。そうなると、ピオネもまっさらな状態になってしまう。皇国と帝国の橋渡しは必ず必要だ。ピオネに婚約者は必要だろ?」


 そう言いながらもチラチラと俺を見るレオン様。


「ピオネさんは自分で決めた人と幸せになって欲しいです。俺は……自由都市の落ちこぼれ、親父にも逆らった俺はこの先茨の道しかありません」


「しかし……セイヤ君。君は自分の気持ちに嘘を付いていないか?」


 レオン様の鋭い口撃。一瞬だけ怯みそうになった。それでも俺は耐える。


「嘘なんて……、ずっと吐いていましたから」


「ん、んん? よくわからないが、向こうに戻る決意は固いようだな。……はぁ、ていうか、ぶっちゃけてうちの皇女と婚約しないか、と俺は思う」


「帝国皇女クリス・フィルガルド様、ですか。いえ、俺には勿体ないお方です」


「いやいや、あいつグレちゃってさ、帝都臨海地区薔薇騎士団っていう変な自警団作りやがって超面倒なんだよ! 『わたし、恋なんてしません! 剣と共に生きます!』って言いやがってさ……。はぁ……皇国のセイヤ君の御兄弟と婚約するんだろうけどさ……」


 俺の兄弟は2つ上のクレハ・マシマ以外は全員婚約者が決まっている。


 とにかく、俺は愛する人以外誰とも婚約するつもりはない。

 ……ピオネさんには、帝国で愛する人を見つけて、穏やか日常を歩んで欲しい。


 その幸せに――俺は必要ない。


 レオン様は再度ため息を吐いた。


「はぁ〜〜、皇国のセイヤ君の評価はよく理解している。皇帝ハヤト様とその側近たちの性格も重々承知だ。セイヤ君、俺はあまり他人を褒める事はしない。一つだけアドバイスしよう」


 レオン様はその瞳で俺を射抜く。


「……君の能力は高い、いや、成長期待値も含めてとんでもない原石だ、と俺は思っている。国を背負う英雄になる、と俺は『確信』している。いいか、冗談でもなんでもない。――セイヤ君、自分を過小評価して自己犠牲をするな。君は輝ける存在だ」


 息が詰まった。


 レオン様の言葉に何も返せない。


 お辞儀をして部屋を出ようとするしかなかった。


 レオン様が俺の背中に声をかける。


「なんなら俺の養子になるか? それもいい、と俺は思うぞ!」


 冗談混じりのその言葉に何故か俺は救われた気持ちになれた。


 ……まるで帝国での親父、だな。


 学園でレオン様との面談を終えた俺は行く宛もなく街を歩く。


 気がつくと、あのデートの場所を巡っていた。


 どこに行ってもピオネさんとの思い出はすぐに蘇る。


 ずっと苦しかった。ピオネさんとの恋心を失くせば苦しみが消えると思っていた。


「違ったんだな」


 今、俺の気持ちは穏やかだった。


 純粋にピオネさんとの思い出を懐かしむ事ができる。


 きっとこうやって恋心が違う形に変わり、ずっと心に残る大切な思い出になるんだろうな。


 俺がピオネさんと婚約者になる資格なんてない。


 ジゼルと婚約破棄したことによってジゼルがディットと婚約する可能性も出てきた。


 これによってピオネさんが自由になれる可能性もある。


 ……そこに俺のわがままはないのか? 下心があったんじゃないのか?


 俺は頭を振った。



 こんな自由都市の落ちこぼれが求婚したとしても、ただの迷惑でしかない。


「ルアン様みたいな素晴らしい男はきっといる。……ただあの人は色んな女性と縁がありすぎる。駄目だ、ディン師範は……、いや、飲んだくれだ。くっ、アリス君は……」


 そんな事を呟いているうちに、自然公園のあのベンチにたどり着いた。

 そして――俺が見た光景は――


 ピピンを抱きしめながら夕日に照らされているピオネさん……。


 込み上げてくる感情を抑える。悲しむ必要なんてない、これからピオネさんはきっと幸せになるんだ。

 俺がジゼルに婚約破棄出来たのも全てピオネさんのおかげだ。


 ピオネさんが俺に勇気をくれた。


 ピオネさんが俺に愛を教えてくれた。


 ピオネさんが俺に思い出を作ってくれた。


 もう十分もらいすぎた。


 涙はもう流さない。君に逢えて俺は涙の意味を知った。


 悲しい涙は過去のモノだ。


 嬉しい涙は前に進む力がある。


 だから君も大丈夫、前に進むんだ。


 その時までは、俺は横にいる――


 俺はピオネさんの横に立ちながら夕日を見つめる。


「セイヤ様――」


 ありがとう、その名を呼んでくれて。


「すごいですね! セイヤさま――」


 君に名前を呼ばれる度に鼓動が速くなっていたんだよ。それにすごいのは俺じゃない、君なんだ。


「……あの、自由都市に帰るんですか?」


 そんなに悲しそうな顔をしないで欲しい。君に迷惑がかかると俺はまた泣いてしまう。


「……私、セイヤ様に出会えて良かったです」


 ああ、俺も君に出会えて幸せだった。こんな奇跡二度と起きない。


 抱きしめたくなる衝動を必死で抑える。


 ピオネさん、君は自分の魅力に気がついてないよね? 


 君が素敵すぎて俺の心がおかしくなりそうだ。


 レオン様に言われなくても、君を婚約者にしたいなんて何度も思った事か。


 それは許されない事だ。結果的に君を傷つけてしまう。


 あの化物どもから君を守れない。


「――エスコートお願いします」


 俺は感じたよ、君が何かに気がついた事を。ずっと君を見てきたんだから当たり前だ。愛する人の気持ちがわからないわけがない。


 ずっとずっと好きだった。


 好意は愛に変わり、愛は苦しいに変わり、それでも、愛を突き通すと、苦しみもさらなる愛に変わる。

 だから、俺は自分の最善を尽くす。


 君の前に跪く。

 それは俺の忠誠の証でもある。


 俺はピオネさんの手を取り――手の甲に口づけをする。


 想いを込めて。





 ――愛を込めて。





 セイヤ・マシマ。

 15歳の初恋の終わり、だ――



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