別の世界に転移したら、聖女と呼ばれるようになりました!?
3作目の短編になります。
「治癒!」
と唱えて魔法を発動した。
私の名前は多咲 幸恵。治癒魔法を使える魔法使い…なのだけど…
「…あんまり…いや、全然効いてないぞ!すこーしだけ、疲れが取れた適度だ!」
「すみません…」
文句を言ってくる患者さんに対して私は、そう言って謝る事しか出来なかった。
ここは通っている高校の近くの病院。授業の一環で、ここで回復魔法によると治療をしている。
だけど…
「そう、今日も駄目だったんだ…」
「うん…」
「でも何で幸恵は、こんなにも魔力が弱いのかな!?血筋的に、回復魔法の名家なのにね?」
「…」
「まぁ元気だしなって…」
「うん、ありがとう…」
友達に励まされる。表向きは明るく振る舞うが、内心は暗かった。
今でこそ、この世界は主に科学で発展しているが、昔は魔法の力で発展していた。そう、科学と同時に魔法が存在する。
かつては地球上、全人口の半数以上を誇っていた魔法使いだったが、時代の流れなのか、科学技術が発展して行くのと反比例して、魔法の使い手は徐々に減っていった。
今でこそ、全人口の一割にも満たない位までに減少しているが、それでも根強く残っている。科学では解決できない部分を補う為、政府等の支援の下、魔法は脈々と受け継がれて来た。
一口に魔法と言っても様々で、空を飛ぶ飛行魔法、火・風・水等を生み出して操る属性魔法、モノを操作する魔法と多岐にわたる。
それらを、一族で受け継ぐことで、後世に残して来た。
私の一族は、回復魔法を得意としている一族で、親兄弟、親戚一同全員、強弱はあるものの、皆回復魔法が使える。
しかし、私は…
「治癒!」
そう言って、お婆さんに回復魔法を使う。
「ふぅ~、少し身体な痛みが和らいだよ。ありがとう、幸恵ちゃん!」
「いえ、このくらいしか出来なくて申し訳ないです…」
私の魔法はかなり弱く、疲労を和らげる程度の効果しかない。かなり時間をかければ、効力を増やせるが、それなら普通に休んだのと大差ないだろと言われる始末。
その位、私の魔力は一族の歴史上でも、例を見ないくらい微弱だ。
それでも私は、この魔法を誰かの役に立てたいと思い、近所のお年寄り達に、魔法を使っている。 ここは敬老会の寄合所。元気だけど、年相応に足腰が弱った人が多い。その人達に、少しでも楽になってもらいたく、ボランティアで魔法を使っている。上記の通り、せいぜい疲労を和らげる程度にしかならないが、それでも少しは人の役に立っているという事が、救いだった。
「ほらほら、次はアンタね!」
「よろしく幸恵ちゃん!本当に助かるよ…」
「いいから早くしなって!」
スカジャンを着た女性が、誘導している。
少し口は悪いが、決して手は出さない。
「ふぅ~少し楽になったよ!」
「よーし、次!」
そう言って次々と、捌いていく。
そして、この日の分の治癒が済んだ。
「ふぅ~」
「お疲れ、お嬢!ホイ!」
「ありがとう!」
缶ジュースを手渡し、私をお嬢と呼ぶこの人は、御厨 紅音さん。私の活動手伝いをしてくれている。スカジャンを着ていて、茶髪に染めた髪にピアスといった、ヤンキー風の女性。いや、風ではない、本当にヤンキーの人だ(正確には、元だけど)。 昔はかなり荒れていたけど、故あって今はこうして、私の仕事を手伝ってくれている。しかも無償で。
「ほら、家まで送って行くよ、お嬢!」
「ありがとう紅音さん!」
ジュースを飲みながらの休息後、紅音さんからフルフェイスのヘルメットを受け取り、それを被り、私は彼女の中型バイクの後部に乗った。送迎も彼女の役割だ。
エンジンをかけ、方向指示器を入れ、安全確認をした後、バイクは走り出した。
法定速度・一時停止等、道交法をしっかりと守りながら、私の家を目指して、バイクを走らせる紅音さん。
「何時もありがとう紅音さん…」
途中、信号待ちしている時に、話しかけた。
「藪から棒に何言い出すんだよお嬢!?」
「だって私みたいに、一際出来の悪い魔法使いにこんなにも尽くしてくれて…」
「それは言わない約束だろう、お嬢!?」
「ごめん…」
「アタイは自分の意志で、お嬢に仕えてるんだ。出来なんて関係ねー!」
「うん…」
彼女の思いを染み染みと感じだ。
「信号変わった。動くよ!」
再び走り出すバイク。
私の家までもう少しの所まで来た。そこは、大きな屋敷の側だ。
「相変わらず、大きなお屋敷…」
「だね…」
一時停止で止まっている時に思わず呟いた。
その家は、私の家系とは別の、魔法使いの一族の屋敷だ。
それも、国内でも五本の指に入る名家で、本来魔法は一家系で一種類程しか扱えない。多くてもせいぜい二〜三種類位だ。そんな中、この家は各種魔法を使える魔法使いを何人も輩出している。
属性魔法に飛行魔法、回復魔法も。最近、召喚魔法を使える魔法使いも誕生したらしい。
なんでも、何代か前の先祖が、優秀な魔法使いを、嫁入り・婿養子にしたり、養子縁組したりと、あの手この手で一族に取り込んだとか(かなり強引な手を使ったともっぱらの噂だ)…
要は、優秀な魔法使いの血が、大量に流れているという理由だ。最も、その甲斐あって、優秀な魔法使いの一族という地位を維持している訳だけど。
回復魔法だけの、しかも、歴代きっての出来の悪い私とは雲泥の差だ…
「…」
「お嬢…お嬢の家までの、最短ルートだから通ったんだけど…もうこの道は、もう二度と使わないよ!」
気落ちした私を察して、そう言う紅音さん。
「ううん、いいの気にしないで紅音さ…ん!?」
途中で異変に気づいた。
パァアアア!…
「えっ!?」
「何だ!?」
私達のいる位置の地面が突如、光りだした。
眩しくてよく見えないが、魔法陣が展開されているように見えた。
「キャッ!?…」
「お嬢!?」
次の瞬間、光は完全に消えた。
先程まで光っていたその場所には、何も残って無かった。
そう。バイクやヘルメットに荷物。そして、私と紅音さん自身も…
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2人がこの世界から姿を消した直後、屋敷から某有名ギャンブル漫画にでも出てきそうな、全身黒服にサングラス姿の男達が出て来た。
「おい、何かいるか!?」
「いや、何も…」
「失敗か…」
「みたいだな…」
彼等はこの屋敷に仕える者達だ。
先程述べられた、最近誕生したという召喚魔法の使い手。その魔法使いが、召喚魔法を使用したのだ。
召喚魔法。それは、この世ならざる存在を、召喚する魔法だ。召喚し、従わせる事が可能なのだ。
しかし、
「なんだって屋敷の外に、魔法陣が出るんだ?室内で発動したのに、庭に出るのならまだしも、屋敷の外に…」
「召喚魔法はかなり高度な魔法らしいからな。そもそも、坊ちゃまは6歳だしな。何よりも、使えると言っても、成功率は低いらしい。」
「ああ。しかも、呼べても小動物程度のモノが限度らしい。」
「そうか…まあいい、何もいなかった。召喚は失敗だった。そう報告しよう。」
「だな…」
「…でも…」
「どうした?」
「魔法陣が展開された時、人の声がした様な気がするんだが…」
「マジか?」
「俺、人一倍耳は良いからな!」
「でも、誰もいねーぜ!?」
「気のせいだったんじゃねーか?」
「そうか…な…」
「そうだって!」
そう言いながら、屋敷に戻って行く黒服達。
彼等は、いや、その屋敷の全ての人間は気付かなかった。
召喚魔法は確かに失敗だった。しかし、運悪く魔法陣が展開された場所にいた2人の人間。
この世界に召喚するどころか、逆にその2人の人間を別の世界に飛ばしてしまった事に…
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ブロロロ…プスンプスン!!
全く舗装されていない道を走るバイクは、減速し始めたと思ったら、ついには、動かなくなってしまった。
「…ガス欠だ…」
「この世界に来て、随分走ったものね…」
「すまないお嬢、もっと入れときゃよかった…」
「仕方ないよ紅音さん。こんな事になるなんて、誰にも予想できないよ…」
光に包まれたと思ったら、気付けば全く見知らぬ土地にいた私と紅音さん。少なくとも、私達が住んでいた日本の東京ではないことだけは確かだった。
空を見上げて私達は驚愕した。なんと、太陽が2つあった。
その瞬間、ここが地球ですらないことに、気が付いた。
『異世界転移』
今や、ラノベや漫画ではすっかりお馴染みとなった言葉なので、その単語がすぐに頭に浮かんだ。
「まさか、自分達がするなんて…」
「あぁ、読んでて少し憧れたりするけど、イザ本当にしたら、困るな…」
ラノベとかだったら、召喚した王様とかがいて、召喚した経緯を聞けたり、元の世界に帰れるかを問えるけど、私達の場合は、人っ子一人いない、森の中だった。
人里を目指して紅音さんのバイクで走っていたが、ここでガス欠になった。
燃料が無ければ、バイクは1ミリも動かない。ガス欠して暫くは、紅音さんが押して移動していたが、人里はまだまだ先で、その上全く舗装されていない道を押して行くのは、体力的にもかなりキツい。
やむを得ず、バイクは置いていく事にした。バイク用のカバーを掛け、一応、バイクロックを付けた状態で茂みの中に隠した。
「必ず取りに来るからな、グロイア号!」
「…」
グロイア号とは、紅音さんのバイクの名前。彼女は幼少期、三輪車の頃から、自分の愛車に名前を付ける習慣があるらしい。見かけからギャップがあって、カワイイと密かに私は思っている。
暫く山道を2人で歩き続けたけど、人里は中々見えてこなくて、日が暮れてしまった。
チャプチャプ!
「ふぅ~、気持ちいい…」
「沢山歩いたもんね。疲れた足には尚更だよ…」
その日の内に、人里は見つけられなかったけど、なんと、温泉を見つけることができた。とはいえ、タオルはあるけど着替えはない。なので足湯だけにしておいた。それでも、沢山歩いて疲れのたまった足にはたまらなかった。
服の袖をまくって、両手も浸けた。
その時、私の左腕の傷が目についた紅音さんが、気まずそうな表情になっていた。
「あぁ…紅音さん、本当に、コレのことは気にしないで!?」
「お嬢…でも…」
「もう、それは言わない約束!」
「……」
黙ってうつ向く紅音さん。
この傷は、彼女と出会った時のものだった。
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1年程前。東京のある裏路地にて。
「ほら、さっさと出すもん出しな!」
「…」
当時の私と紅音さんが、他に人気のないトコにいた。
「寄越せっていってんじゃないよ?貸してくれって言ってんの!まぁ、永久にだけど!」
国民的漫画に出てくるガキ大将みたいな事を言ってくる紅音さん。
そう。今の私達の関係からは想像できないけど、当時ヤンキーだった彼女の、カツアゲのターゲットにされたのが、私だった。
持っているお金を全部出せと要求されている。逆らったら何されるか分からないし、もう大人しく、出した方が身のためかなと思い始めていた。
そこへ、
「そこ何している!?」
「ヤベ!お巡りだ!!」
巡回中のお巡りさんに見付かり、逃げ出す紅音さん。
しかし、
ドン!!
「!!」
「い、いかん!」
彼女は逃げた先で運悪く、走って来た車に激突されてしまった。
「ガッ……」
ほぼ全身を強打。当たりどころも悪かったらしく、息も絶え絶えの状態。
「し、至急至急!」
お巡りさんが無線で連絡、救急を呼ぶ。
「(アタイ…ココで死ぬのか…まぁ、色々と悪さしてきたもんな…因果応報って…やつか…)」
後で聞いたところ、薄れゆく意識の中、紅音さんはそう思っていたらしい。
そんな彼女に、
「治癒!」
私は回復魔法を使った。勿論、当時も今と変わらず、その力は微弱なモノだ。殆ど効果はなかった。
それでも、何もしないよりはマシとばかりに、休む事なく使い続けた。
「お巡りさん、救急車はまだなんですか?」
「それがタイミング悪く、この辺りの道全体が渋滞してて、スグには来れないみたいなんだ…」
「そんな…」
眼の前の彼女は、もうそんなに持ちそうにない。
「(どうして…なんで…私にもっと、魔力さえあれば…)」
この時ほど、自分の魔力の弱さを疎ましく思ったことはない。
「…どうしたら…!」
その時、近くにガラスの破片が落ちているのに気付いた。彼女とぶつかった時に割れた、車の窓ガラスだ。
私は咄嗟にそれを拾い上げた。
そして迷う事なく、
ザク!
ガラスの破片で、自分の左腕を斬った。
「な、何をしてるんだ君!」
驚くお巡りさんを尻目に私は、腕から滴り落ちる血を、彼女の傷口にかけた。
すると血をかけたところの傷が癒えていった。
その後も私は、傷口の周囲に圧をかけ、血を絞り出し、その血を彼女にかけ続けた。
お陰で彼女の顔色は良くなっていき、呼吸も安定した。
その直後、ようやく救急車のサイレンが聞こえてきた。安堵した途端、私の意識を途絶えた。
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数時間後、事故現場から最寄りの病院にて。
「!?ココは?…アタイ…生きてるのか…何で?」
完全に死ぬと思っていたらしく、生きている事に困惑している紅音さん。
「よかった、目が覚めたんですね!」
「アンタは!?…」
隣のベットにいる私を見て驚く紅音さん。
「御厨さんでしたね?…」
「あぁ…って何でアタイは生きてんだよ!?」
「それは、その娘のおかげたよ!」
「!?あん時のポリ公!」
「ポリ公…まあいい。その娘が体を張って、アンタを救ったんだよ!」
「え!?…」
あの時私は、瀕死の重症の紅音さんに自らの血をかけた。実は一般的には知られていないが、回復魔法の使い手の魔法使いの血には、本人の魔力に関係なく、非常に高い治癒力があるのだ。私みたいな微弱な魔力の者であっても、生きてさえいれば、どんな重症でも治せる程に。
ただし、それには大量の血が必要となる。怪我か大きければ大きい程に。なので、おいそれとは使えない。
「マジか…何でアタイなんかに!?アンタは碌でもない人間だ!アタイはアンタから…」
そこまで言ったところで、私は紅音さんがそれ以上言うのを静止した。
「確かにアナタは悪い人かもしれません…でも、だからといって、見捨てる理由にはなりません。この世には、悪い人は沢山います。けど、だからといって、死んでいい人なんていない。そう私は思ってます。だから…」
「……」
紅音さんは、そのまま俯いたまま黙り込んだ。が、涙目になっているのが微かに見えた。
私は、沢山の血を失ったことで貧血を起こし、意識を失っただけなので(腕の傷は大したことはなかった)、翌日には退院出来た。
紅音さんの方も、ギプスを付けたままだが、1月程で退院出来た。
退院当日、私は紅音さんに会いに行った。
「御厨さん、退院出来て良かったです!」
「あぁ、瀕死の重症を負ったのが嘘みたいだよ…!?アンタそれ…」
紅音さんは私の腕の傷跡に気付いた。
大したことはなかったが、くっきりと傷跡は残ってしまった。
「残っちゃいました…」
「ましたって…家の人達も回復魔法使えんだろ!?それでキレイに治して貰わなかったのか?」
「それは出来ないんです…回復魔法の使い手自身が付けた傷は、魔法でも完全には治らないんです…」
「えっ…」
「そういうものらしいんです!まぁ、長袖の服を着てれば隠せますし、特に支障は無いですよ!」
「で、でも、アタイのせいで…」
「御厨さん、気になさらないで下さい。自分で決めたことです。それに、アナタの命が助かったんですから、この位、安いものです!」
「!?…うっ…ううっ…」
「ちょ、ちょっと、こんな所で…」
人目も憚らず、大泣きし始めた紅音さんに困惑する私。
その後、紅音さんは更生した。悪事からはキッパリと足を洗った。今まで迷惑をかけた場所や人に謝りに行き、真面目に働き始めた。
私のしているボランティアを、手伝ってくれてるようにもなった。そして何時からか、私の事を
「お嬢!」
と呼ぶようになった…
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そんな感じで知り合った私達だけど、まさか、一緒に異世界に行くことになるとは、夢にも思わなかった…
「……」
足湯で身体を温めた後、その日はそのまま野宿することになった。野宿するなんて、生まれて始めただった。温泉の側なので、寒くはないのがせめてもの救いだ。
身を寄せ合い、荷物のバックやタオルを枕代わりにして、紅音さんのスカジャンや上着を2人で羽織って寝た。と言っても、寝心地はかなり悪く、私は1〜2時間位しか寝れなかった。
因みに紅音さんの方は、熟睡していた。逞しい人だなと改めて思った。
翌朝。再び人里を目指し歩みを進める。
「人里はまだかよ…」
「食べ物も残り少ないしね…」
この世界に飛ばされた時、持っていた荷物には、お茶やジュースのペットボトルと、お菓子か入っていた。それで飢えをしのいできたが、それも残り少ない。飲み物は、小さな沢を見つけ、そこで補給できたが、食べ物の方はそうはいかない。
早く人里に、と思っていたら、人の声が聞こえてきた。私達は声の方に向かって走った。
しかし、そこで見た光景は…
「サッサと済ませろ!」
「うわ~ん!」
と言う、男性と子供の鳴き声が。
崖の上で、ガラの悪い男達と、何人もの人達が檻に入れられていた。檻の中には、老若男女・種族を問わず、首輪をされた沢山の人が入れられている。
私達は草葉の陰で様子を見ていた。
すると男の人が檻を開き、中にいた子供の1人を乱暴に出した。
「最初はオメーだ!悪く思うなよ…」
そう言ってその男はなんと、その子を崖から投げ捨てようとした。
それを見た私は、無意識に、草葉の陰から飛び出していた。
「待って下さい!」
「!?」
飛び出した後でハッと我に返った。
見るからに、カタギでない人達。出て行けば、何をされるか分からない。対抗する手段なんて無い。格闘技の心得なんて無い。せいぜい、スイミングスクールに通っていた位だ。
「お嬢!」
紅音さんも駆け寄ってきた。
元ヤンの紅音さんがいるとはいえ、向こうは多勢に無勢。勝ち味はほぼ無い。
無計画過ぎたと後悔したが、子供の危機に動かずにはいられなかった。
「なんだ、誰だねーチャン!?」
「わ、私達は、通りすがりの者です!それは置いといて、何をしてるんですか?その子を、いえ、その人達をどうする気なんですか?」
「あっ、どうするって、捨てんだよ。ココに!」
悪びれる様子もなく、あっさりと答えた男。
捨てる。人をまるで粗大ゴミを不法投棄するみたいに言う彼の言葉に私は一瞬凍り付いた(不法投棄自体、違法だけど)。
「な、何でそんな酷いことを…」
「何って、コイツラは奴隷なんだよ、ド・レ・イ!ところがだ、コイツラは一生物の大怪我してな、もう商品価値ねーんだよ!」
何でも数日前、奴隷屋が盗賊に襲撃され、その時に、奴隷の人達も巻き込まれ、重症を負ってしまったらしい。
「盗賊共め、逃げ際に放火しやがって、更に被害が広まっちまったんだよ!」
「でだ、コイツラの怪我は一生癒えない。後遺症でもう、マトモに動けないヤツもいる。」
見れば檻の中の人達は皆、ボロボロだ。
「ツー理由で、商品価値の無い奴らなんて置いといても一銭にもならねー。飯代もかかるしな。だから、捨てんだよ!」
状況は解った。とわいえ、納得は出来ない。命を何だと思ってるのよこの人達は。
「解ったな?そんじゃあ、邪魔しないでくれよ!」
そう言って、改めて、子供を捨てようとする男性。
「だ、駄目!」
「ンだよ、邪魔すんなって言ったろが!」
面倒くさそうな顔をする男性。
そこへ、
「待ちなさい!」
「ダンナ!」
羽振りの良さそうな姿をした少し小柄の男性が、近くに留めてあった馬車から出て来た。どうやらこの人が、奴隷屋の代表者らしい。
「お嬢さん、この奴隷達のことが気になさるようですね!?」
「えぇ…」
「どうでしょう。彼らを買い取りませんか?」
「か、買う!?」
「そうですとも。価値は無いにしても、一応はまだ、我が店の商品です。買われるというのであれば、お売りします。どうです?私共も不良在庫が処分出き、あなた方は彼らを助けられ、彼らも生きながられる。皆が皆、得をする。正にウィンウィンです!いや、ウィンウィンウィンですかな!?」
代表者は言葉遣いこそ丁寧だけど、奴隷の人達を不良在庫呼ばわりしてるあたり、そこはこの人達と同類らしい。
聞くに耐えない話したが、確かに、そうすればあの人達は助かる。
けど…私達は今、この世界のお金を持っていない。財布に入ってるのは、地球の日本の通貨だけだ。勿論、電子マネーだって使えない。
そう思っていると、代表者が切り出した。
「とわいえです、どうやらお二人共、お金は全然無いようですね!?」
鋭い。
「そこでどうでしょう?」
代表者の私達を見る目が変わった。
紅音さんが、私を庇う様に前に出た。
「早合点しないで下さい。身体を売れなんて言いませんよ。こう見えても私共は、真っ当な奴隷商です。仕事は全て、合法の範囲内でしています。人攫いなんてもっての外。」
何処まで本当なのか。
「アナタの首にしているペンダントと、お連れの方のピアスと指輪。見たところ良い品みたいですね!?」
私の首から下げているペンダント。
紅音さんのピアスと指輪は、アクセサリーショップで買ったものだと聞いている。
「どうでしょう!?それらと引き換えでなら、彼等をお譲りしますよ!?」
「このアクセサリー等とその人達を交換しないか!?と、言いたいんですか?」
「その通りです!」
このペンダントはおじいちゃんとおじいちゃんかかってくれた物だ。魔法使いとしての才能のない私にも優しくしてくれた2人。2人共、数年前に亡くなってしまった。そんな高価なものではないけど、私の大切な宝物。でも…
紅音さんの顔を見る。私の考えを察したのか、黙って頷いてくれた。彼女も考えは同じ様だ。
「解りました…」
私達は、ペンダント・ピアス・指輪と引き換えに、この人達を購入した。
部下の人達と手続きを済ませた。手続きと言っても、誓約書に血を付けるだけだ。針で指を刺し、にじみ出た血を誓約書に擦り付けた。
「ほい、契約完了でーす!」
「まいどどうも!」
一応、客という事で、(彼等なりには)愛想よく振る舞う部下の人達。
「ご利用ありがとうごさいました。ではまた何処かで!」
そう言って奴隷商達は、馬車を走らせ、去っていって。後には私と紅音さん、そして奴隷の人達が残された。
「えーと…始めまして…私は多咲 幸恵…ユキエでいいです。こちらの人は御厨 紅音さんです…」
「ベニネでいいよ!」
簡単に奴隷の人達に自己紹介をした。奴隷の人達も自己紹介をしてくれたけど、長くなるので省略。
奴隷の人達は、
①ウサギの獣人の子供リアちゃん(両耳共に欠損)
②犬の獣人のコロくん 子供 (鼻(嗅覚)が完全に麻痺しているらしい)
③・ ④ケンタウロスのエディさんとリナさんご夫妻 (それぞれ脚を欠損)
⑤老婆のシンディーさん (左手以外、身体の殆どが麻痺してマトモに動かせないらしい)
⑥推定年齢3〜40位?の男性、ブラウンさん (全身大火傷で包帯状態)
⑦二十代位の女性、ステラさん(両眼とも失明)
といった面々。一度に7人も奴隷の人達の主人になってしまった私。しかも全員、何かしらの障害を持っている。五体満足なら解放して、自由にさせてあげられるけど、そうもいかない。ただでさえ、お金ないのに、これだけの人達をどう面倒見ればいいんだろう…
そう思ってると、最初に口を開いたのは、ケンタウロスのエディさん。
「何故助けた?」
「えっ!?」
「ちょっとあんた…」
「脚を失い、走る事か出来なくなったケンタウロスに、生きている意味など…無いに等しい!」
ケンタウロスの夫婦のお二人。故郷の村で狩りをしながら慎ましくも幸せに夫婦水入らずで暮らしていたが、ある日、悪い人に騙され、借金まみれになり、その後、夫婦揃って奴隷落ちしたらしい。
脚は例の盗賊に、切り落とされてしまったという。ケンタウロスは足の速さが自慢。脚を失い、走ることは愚か、歩く事いや、ただ立つ事も満足には出来ない。自慢の脚を失い、すっかり生きる気力を失っている。
「ゴニョゴニョ…」
と、ゴニョゴニョ言っているのはシンディーさん。
身体の殆どが麻痺して、まともに喋ることも出来ない様子。身を近づけて聞くと、
「早く楽になりたい…」
と。他の人達も、目に生気がない。
皆、死んだ方がマシと思っている様だ。
「……」
かける言葉が見付からず、何も言えないでいる。
犬の獣人のコロくんと目が合う。
さっきから、ビクビクと怯え震えてばかり。本来、高い嗅覚を持つコボルトだけど、この子は達の悪い病気が原因で鼻が麻痺し、臭いを全く感じられないらしい。犬の特性持つ彼にとって臭いを感じないのはとても辛いみたいだ。昔は明るく活発な性格だったらしいけど、今は見る影もない。
と、ウサギの獣人のリアちゃんより聞いた。2人は幼馴染みらしい。彼女は、盗賊に斬りつけられて耳を失った。それにより、彼女は耳が殆ど聞こえない。
「……」
怯え続けるコロくん。私は思わず彼をギュッと抱きしめた。少しでも楽になって欲しかった。
「!?あれ…」
「どうしたの?」
「匂いを感じる…」
「えっ、もしかしてコロ、鼻が…」
「鼻が、嗅覚が戻った…」
突然、コロくんの鼻が治ったのだ。
「なんだって急に…」
困惑する紅音さん。
「私の回復魔法かも…」
「えっ、でもお嬢の力は…」
「うん実は黙ってたんだけど、こっちの世界に来てから、妙な感じだったの。」
「妙な感じ?」
「うん。なんて言えばいいのか、分からなかったんだけど、今ハッキリした。私の魔力が、大幅に増幅してる!」
「魔力が!?」
「そう。コロくんを抱きしめながら、彼の鼻が治してあげたいと思ってたら、出来たの。今の私なら、もしかしたら…」
そして私は、他の人達に掌を向け、
「治癒!」
と唱えた。するとリアちゃん達の身体が輝いた。
するとなんと、
「!み、耳が…元通りに…あっ、音も聞こえる!」
「あ、あんた…」
「おぉ…脚が生えた…」
「どうしたことだい!?声が、喋るよ。身体が、動く!しかも、持病の腰痛も治ってるよ!」
「あぁ、目が見える…光が…」
奴隷の人達の身体の悪いところが全て、瞬時に治っていった。
「う、うぉー!」
ブラウンさんが叫びながら包帯を外す。すると健康体そのものの、ガタイのいい身体をしたイケメン男性が現れた。頭には2本の角が生えている。ブラウンさんは鬼人で、野党の襲撃の際の放火で、全身大火傷し同時に喉を焼かれ、まとも動く事はおろか、喋れなくなったらしい。
「マジかよ…アレだけ痛々しい姿だったのが嘘みたいだ…」
唖然とする紅音さん。
正直、私にも信じられなかった。出来の悪い回復魔法使いだった私がどうして…
疑問に感じていると、奴隷の一人、ステラさんが教えてくれた。
「それはおそらく、主様が周囲の魔素を余すことなく、全て取り込んでおられるからだと思われます!」
「魔素!?」
「作用でございます!」
主様とよばれるのに、いささか抵抗あったけど、そこは置いといて。
ステラさんの説明によると、大気中には目には見えない魔素というものがあり、魔法使いはそれを取り込み、それをエネルギーにして魔法を使う。しかし、魔素には様々な種類があり、人によって取り込めるものが違う。一人辺り、魔素全体中の二割程度しか取り込めない。才ある者でも四割程度という。
しかし私の場合、なんと、その全ての魔素を身体に取り込んでいるのだとか。その為、私の回復魔法の魔力が桁違いにアップしたようだ。
そう言えば、「脳の10%神話」といって以前は、
『人間の脳みそは、全体の僅か約10%くらいしか使われていない!』
と、言われていると聞いたことがある。
だけど、近年の研究で、それは間違っていることが解ったらいしけど…
話を戻して。
なんでそんなことが分かるのかというと、ステラさんの目は特別で、魔素の流れを見れる上に、千里眼の力まであるのだとか。その力で巫女として扱われていた。しかし、不運な事故で劇薬が目に入り、失明してしまっていたという。
「魔素ね…」
「もしかして、私が元の世界で魔力が弱かったのと関係あるのかも…」
「可能性はあるかもね…」
確認されていないだけで、地球にも魔素があったのかもしれない。しかし私は、地球上の魔素とは、相性が極端に悪かったのかもしれない。だから、私の魔力は弱かったのかも。
と、言ってもコレはあくまでも、推測に過ぎないけど…
等と考えていると、私の側で奴隷の人達が、皆が皆、平伏していた。
「主殿、先程は失礼いたしました。」
「まさか、我等の身体を治して下さるとは…」
と畏まるエディさんとリナさん。
「何なりとお申し付け下さい!」
ガタイによらず腰の低いブラウンさん。
「主様、こうしてまた自分の目でものを見れる日が来るなんて夢にも思いませんでした…あぁ、そうか…貴方様は聖女様ですね!?」
と言うのはステラさん。
「へ!?聖女…」
「おお、そうだ!間違いない!聖女様だ!」
「いえ、私は平凡な高校せ…」
「「「「聖女様!!」」」」
「いやだから…」
こうして私は、一方的に聖女認定されてしまったのだった…
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「むこうの方から、イノシシの鳴き声がするよ!」
「承知した!」
リアちゃんが言う方向に走って行くブラウンさん。一分程して、大きなイノシシを抱えて戻ってきた。
「我等も鳥と魚を獲って参った!」
「おお、見事なイノシシだね。こりゃあ、腕が鳴るよ!」
イノシシと、ケンタウロスのエディさんとリナさんご夫妻が獲って来た獲物をシンディーさんが調理する。
シンディーさんは元貴族のお屋敷のメイド長で、階段から落ちて骨折し、後遺症が残り、辞めさせられた後、流れ流れて奴隷商に売られ、そこで後遺症がどんどん悪化していき、あの有様になったとのこと。
「出来たよ!さぁ召し上がれユキエちゃん!ベニネちゃん!」
一応、立場的に奴隷ながらも、私達をちゃん付けで呼ぶシンディーさん。私も紅音さんも、主様等と呼ばれるのにはいささか抵抗あるので、丁度良かった。
「美味しい!」
「ウマ!」
こっちに来て初めてのマトモな食事に舌鼓を打つ。他の奴隷の人達にも、遠慮しないように命じ一緒に食べた。やっぱり、大人数で食べるとより美味しく感じた。
食事が済むと、改めて町を目指した。
エディさんとリナさんご夫妻の背に乗せてもらった。流石ケンタウロス。脚が速い。
エディさんの背に私と紅音さんが、リナさんの背にリアちゃんとコロくん、シンディーさんが乗っている。全員は無理だったので、ブラウンさんとステラさんは、ブラウンさんがステラさんをお姫様抱っこして後を追うというスタイルとなった。ケンタウロスの脚に付いてこれるのか気になったけど流石は鬼人、大丈夫だった。
ようやく人里の町にたどり着いた。
門番から簡単な手荷物検査を受けた後、入門料を支払った。
お金なかったんじゃないの!?と思う人もいると思うけど、実は、ここに来る途中、コロくんが大岩の下で鼻をクンクンさせたと思えば、大岩の下に何かあると言い出した。ブラウンさんが岩をどかすとなんと、お宝があったのだ。スゴイ鼻だよ。
誰が隠したものかはわからないけど、こういう物は、見付けた人のものにしても構わないらしい。なので、遠慮なく貰うことにした。これからも、色々と入用になるだろうし。
それで入門料は余裕で支払えた。
それから町の宿に入った。そして、今後の事を考えていると、近くの建物が騒がしくなった。
隣は冒険者ギルドの建物らしく、ギルドと聞いて私達は内心少し興奮した。それは置いといて、気になったので向かった。大勢で押しかけてもアレなので、行くのは私と紅音さん、そしてブラウンさんの3人。他の人達は留守番。
ギルドに入ると中は騒然としていた。人混みの向こうを覗くと一瞬、言葉を失った。
冒険者らしき女性が血まみれになっている。しかも、片腕を失っている。
紅音さんが聞いた話によると、森で強いモンスターに襲われ、何とか撃退したが腕を失った。しかも、傷口から遅効性の毒が入ったらしく、このままでは命はないらしい。しかし、たちの悪い毒で、ギルドに居る回復術師全員の力を合わせても、解毒も人体の欠損は治せないという。
「もういい…楽に…してくれ…」
命を諦め、介錯を求める女性冒険者。
彼女の仲間らしき人達が、深刻な顔をしながら、彼女の望み通りにしてやろうという雰囲気になっている。
仲間の一人が、鞘に納めた剣に手をやった。
しかし、そこに私が割って入った。
「私に一度見せて下さい!」
と言い、息も絶え絶えの女性冒険者に、治癒を放った。
すると瞬く間に女性の傷は癒えていった。
「?…楽になった…!?腕が…」
無事に成功した。女性冒険者は解毒され、無くなっていたはずの、腕も元通りになった。
再び、別の理由で騒然となる冒険者ギルド。それを尻目に私は、目の前の命を救えたことに安堵した。
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「ステラさん、次の町まで後どのくらい?」
「後、1時間程です主様!」
「1時間か…それまでどうするお嬢!?」
「外の景色でも眺めてよう。いい景色だよ。見てれば、1時間なんてすぐよ。」
「馬車の車窓から見る景色もいけど、やっぱ単車で走りたいよアタイは…」
他愛のない会話をしながら、エディさん・リナさんご夫妻の引く馬車に揺られる。馬車の外ではブラウンさんが警備してくれている。
「ご主人様、次の町では何するの?」
「いつも通りよリアちゃん!困っている人がいたら助けてあげるの!」
「流石、聖女様!」
アレから私達は、世界各地を回っている。私の回復魔法を始め、皆の特技を生かし、人助けをして回っている。病気・ケガをした人がいれば私が癒やし、飢えた人達がいればシンディーさんの手料理を炊き出しで振る舞う。壊れた家等があれば紅音さんとブラウンさんが直す(実は紅音さんは女性大工だ)。失くし物や行方明の人をコロくん・リアちゃん・ステラさんが探す。
といった具合にだ。
そんな風に、皆が特技を生かして、多くの人を助けている。
冒険者ギルドでの一件後、パーティーに入ってくれと私は様々な冒険者の人達から勧誘された。何しろ、あの後、ギルド中の怪我人を怪我の大小問わず、全員癒やしてあげたのだから。勿論、無償で。ギルドからも専属の回復術師にならないかと言われた。挙げ句、噂を聞きつけた王族や貴族から、嫁入りの求められまくった(魂胆が見え見えだよ…)。
私はそれら全てを丁重にお断りした。それよりも折角、回復魔法をフンダンに使えるようになった事だし、この力を多くの人の約に立てたいと思い、今のやり方を選んだ。
勿論、元の世界に帰りたい気持ちもあるけど、今のところ帰れる見込みはゼロ。でも、こうやって旅をしていれば何時の日か、手がかりが見つかるかもしれない。なので、今はこの旅に集中している。
そのお陰で、行く先々で聖女呼ばわりされ、崇められてるけど…
しかも、噂を聞きつけた人達が、何かよからぬことを企てているようだ。
でも、
「聖女様!また聖女様を攫おうなどと企てていた不届き者共がいましたが、この右腕たるシャーロッテが成敗して参りました!!」
と、報告に来たのは、例の冒険者ギルドで助けた女性冒険者さんで、名前はシャーロッテさん。若くして高位の冒険者で、剣の達人で各種魔法も使えるみたい。あの一件の後、それまで所属していたパーティーを迷いなく脱退、そして、
「貴方様に永遠の忠誠を誓います!」
と言って旅に付いてきてしまった。
しかも、私の右腕を自称している…
「誰が右腕だ!?お嬢の右腕はアタイだ!」
「(そうだったの?)」
「何を言う。あんたなんてせいぜい、足の小指がいいところだ!」
「アタイが足の小指ならテメーは、足裏の汚れだ!」
「ナニを!?あんなデカくて重たい物体を預かってやっているのだぞ!」
「…それとコレとは別問題だ!」
「もぉ~、2人共、喧嘩はダメ!!」
物体とは、紅音さんのバイクの事で、回収して、今はシャーロッテさんの空間収納魔法に保管して貰っている。
それにしても、右腕でも左腕でもどっちでもいいのに…
と、こんな感じで私達は、賑やかで楽しく人助けの旅をしている。
出来の悪い回復魔法使いだった私が一転、聖女とは…本当に、世の中何が起きるか分からないな…
と、しみじみ思っていると、
「町が見えて来ました!」
そうこうしている間に、次の町だ。
「お嬢、あの町も、様々な問題を抱えていることで有名なとこだよな!?」
「うん。そういう所だからこそ、やりがいがあるよ!問題が多ければその分、助けを求めている人も多いからね!」
私は皆を見渡した。紅音さんを始め、リアちゃんやブラウンさん達に、シャーロッテさんと、私には沢山仲間がいる。皆がいれば何だって出来そうだ。
「それじゃあ皆、行こう!」
私達は町に入って行った。
後に、多くの人々を救った聖女の伝説が、後世に語り継がれることとなるのだけど、それは又、別の話。
――終――
相変わらず、無理・矛盾がある箇所があると思いますが、そこは、ご愛嬌でおねがいします