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2-3 近くて遠い未知の場所


生まれて初めて学校を抜け出し、京さんについて行くこと20分弱、駅前大通りまで来てしまった、

平日の午前中だもの、当然買い物客は多く活気はあるのだが、制服の中学生の姿は格別目立ってしまう。しかも3人組で、


東京のような大都会ではないが山奥のド田舎ではない。

田舎の県ではあるが県庁所在地、駅前は相応に賑やかである。


「こんなとこ・・・見つかったら補導されるわよ!」

口調は強いが、どこか不安そうな口ぶりの委員長がわたしの後ろをついてくる。


「じゃあ奥に入るか」

「奥?」


京さんは店舗と店舗の間の路地を進んでいく、

大通りは何度も通ったことはあるのに、一本奥の道というだけなのに、この先はわたしの地図には載っていない未知の世界だ。


古びた住宅から、アパート、歴史のありそうな飲食店、小さな公園まである、

そんななかあちこち目に付くのは小さな飲み屋さんだった、


当然まだ営業はしていないが、どこもかしこも趣がある佇まいだ、

お父さんもたまに飲んで帰ってくることがあるけど、こういうところで飲んでたりするのかな、

なんとなくだが、ドラマで見たような居酒屋の雰囲気と父親を重ね合わせてしまっていた。


「どこまでいくよの!」

「ここだここ」


1回では覚えられない位の道筋をたどると、京さんの見上げる目線の先には3階建ての古びたビルが現れた、

周りにはもっと大きくて立派なビルやホテルもたくさんあるため、目立ってもいなく、少しみすぼらしい感じもした。

なんだか、わたしみたい・・・


「ここ・・・って」

京さんはまるで自分家の様に、雨ざらしの外階段を上っていく、


居酒屋ケンちゃん

スナックゆりえ

ワインバルコヨーテ

BARエリザベート

山本整体院

テナント募集・・・


壁に目をやるといろんな看板が掲げられている、

こんなビルでもたくさんの人が働いて利用しているんだ・・・

いや、こんなビルなんて言っては失礼だ。


「ちょっと!ここお酒飲むとこじゃない!」

「当然だろ?バーなんだから」

看板の中から目的はどこかをなんとなく推理をしていたが、一番先に除外した所に案内されてしまった。


「チュース!」

「あら!叶子ちゃん!」

「おっす、アイリスちゃん!」

「また学校サボっちゃったの~?ダメよ~」

「へへっ!」


バーというだけあって昼間でも薄暗い店内だ、

そんなに広くない店内にはカウンター席とテーブル席が数席ずつ、大きいテレビが一つ、カウンターの奥にはお酒らしき瓶がこけしの様に並んでいた。

これまたバーなんてドラマでしか見たことがなかったのだ、やっぱり本当に存在するんだと実感した。


「あらら?今日はお友達も一緒なのね」

「こ、こんにちは・・・」

「どうも」

お店の人?だろうか、それとも京さんのお母さん、いや、お父さん?

でも似てない、

それ以前に男の人だろうか、いや・・・男の人だ。


わたしも委員長も口には出さなかったが、ここはオカマバーなんだ、

さすがにドラマでも見た事がなかった・・・


茶髪のショートヘアは女性だが、うっすら見える口周りの髭は男性、

可愛いミニスカートは女性だが、腕っぷしと足腰は男性、

優しい言葉遣いと対応は女性だが、その優しさと心意気は男性だ、

女性と男性の魅力を両方持っている人なんだ。


「勉強するから場所貸してくれよ」

「あらっ!叶子ちゃんがお勉強!?、いいわよいいわよ!お店全部使っていいわよ!」

「あたしじゃねぇ~よ!」

「いいんですか?お席、使わせていただいて」

「遠慮しないで~」


京さんの案内で一番ライトのあたる明るいソファー席に委員長と二人で座らせてもらった、

夜の街で、普段は大人の人が座る席に腰を掛けると、お尻に異様な緊張感が走ってしまう、

冷静な顔はしていても、委員長も同じなのではないだろうか?


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