1-1 はい、二人組作って~
(ああ、いやだな・・・)
今日は苦手の体育、女子はバドミントン、
先生は2人組を作って練習をしなさいと言う。
そう、機械的に、
うちのクラスの女子は奇数なのだから、少しは気を使って欲しい・・・
「そのペアで試合をするからな、ちゃんと練習しろよ~!勝敗も成績に加味するぞ~!」
「はーい!」
・・・
1年生の時のクラスは、男女ともに物静かな子がわりと多かった。
だからグループを作る時も、わたしを含めなんとなく残った人たちで集まれていた。
2年生になり、クラス替えという博打が待っていた。
わたしはそのギャンブルに大敗した。
初めて顔を合わせた時から、クラスの雰囲気が明るいというか、わたしには眩しすぎる。
スポーツマンの男子も多ければ、優秀な生徒、イケてる様相の女子も多い、
わたしは 姫野 林檎14歳、
元々内気な性格で人と話すのも凄く苦手、
140あるかないかの小さな背丈に、天然パーマ交じりのもさっとしたショートヘア、
勉強もついていくのがやっとだし、スポーツなんてとんでもない、
自分でもわかる、人に好かれる要素なんてまるでない。
このクラスでは際立って、浮いてしまっている・・・
いじめられているわけではないが、一か月が経っても特に親しく話せる人もいない。
でもそれでいい、そんな環境には十分慣れている。わたしなんてそんなもんだ。
それなのに・・・
「ほらほら!あっち一人あまってるわよ!」
「エリカ組んであげれば?」
「ちょっとやめてよ~!」
「あはは!負け確だよね!」
「組んだら成績下がっちゃうじゃん!」
クラスでも、特にイケてるであろう女子5人組が大きな声を荒げている。
わざと聞こえるボリュームで。
ひとりぼっちなんて慣れている、いつものことだ。
でも、そういったアクションがあると、関係ない周りの意識もわたし向けられる。
衆人環視の思考の的になる、それがいやなのだ・・・
あの子、絶対余っちゃうよね、
わざと聞こえる声で言ってるよ、かわいそう、
先生と組むのかな?
あいつ運動できないから、ペアになったら絶対負けちゃうよね、
私はペアが居て良かった~
被害妄想かもしれないが、周り声がそう言っている。
まだ運動もしていないのに、汗と、顔の紅潮が止まらない。
早くこの時間が過ぎ去って欲しい、
なのに、こういう時間は中々進まない。
「おい!あたしと組もうぜ!」
「!?」
威勢のいい声が、堂々巡りの思考を貫いた。
わたしの事?、わたしに話しかけてるの?
恐る恐る振り向くと、少しだけ怖い目つきがわたしを真っ直ぐに見ていた、
「どうした?、一緒にやろうぜ!」
彼女の名前は、京 叶子、ちょっと怖いタイプのギャル系の娘だ、
正直わたしとは真逆のタイプで、クラスでは浮いた存在。
学校に顔を出さない時も珍しくはないし、校外で危ないことをしているという噂が尾ひれをつけて走り回っている。
校則上髪は黒いが、思い込みからか一部が金髪に色づいているように見えてしまう。
わたしよりも首一つ程背が高く、あごを30度程見上げて話さなければならない。
「え、あ、あの・・・わたしで・・・」
初めて話す人、ちょっと怖そうな人、思いがけない問いかけ、内気なわたし、
当然口がうまく回らなくなってしまう。
「よし!あっちの空いてる所でやろうぜ!」
「は、はい・・・」
考えが追い付く間もなくぐいぐいと手を引かれ、わたしを針のむしろから救い出してくれた。
わたしを面白おかしくいじっていた女子5人組も、予想外の光景にポカンとしてわたしたちを見ていた。
今日ひとり余るのはあの中の誰かだ。