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幕間 だれかの独白
本エピソードより7月編の開始となります。
よろしくお願いいたします!
自分は言った。
『辛い。逃げ出したい』と。
それに対して彼は言った。
『逃げたいときは逃げてもいいんだよ』と。
自分は言った。
『なら……本当に逃げ出したいときは助けてくれるの?』と。
それに対して彼は言った。
『もちろん』と。
そんな、薄っぺらい子供同士の約束。
自分一人ではなにもできない、無力な子供同士の無意味な約束。
それでも。
自分にとっては決して忘れることができない大切な約束だった。
どんなに辛くても。
どんなに押し潰されそうでも。
その約束があったから、自分は倒れずに立ち続けることができた。
進むことができた。
もしも、もう一度彼に『会う』ことができたなら――
また……あの穏やかな笑顔を向けてもらう日が来るのなら――
そう考えるだけで……自分は今日も頑張れる。
あなたは……もう一度笑いかけてくれますか?
あなたは……また『逃げてもいい』と言ってくれますか?
あなたは──覚えていますか?