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閑話15 夜LINE⑩【青葉昴・渚留衣】

午後八時頃にて。


なぎ

『あ、そうだ忘れてた』


なぎ

『青葉いる?』


なぎ

『今日わたしにボコボコにされた青葉さん?』


青葉

『見とるわ!! 返信する隙を与えずにディスってくるな!!』 


なぎ

『全敗の青葉さん(笑)』


青葉

『事実だけどっ!!! 全敗したけど!!』


なぎ

『ボコボコにするとか言って、結局ボコボコにされたね』


青葉

『うるせぇ』


青葉

『てかお前、相変わらず上手すぎんだろ。なんで相手の技見てからコマンド入力間に合うの?』


なぎ

『普通だって普通。あんたもやればこれくらいできるよ』


青葉

『絶対無理。三フレームだの四フレームだの俺にはよう分からん』


なぎ

『見てから余裕ってやつだね』


青葉

『へいへい、すごいすごい。ま、次は絶対俺が勝つけどな』


なぎ

『楽しみにしてる』


青葉

『んで、なんの用だよ? 愛しの昴くんとお話したいなら素直にそう言えばいいのに』


なぎ

『あーごめん文字化けして全然見えない』


青葉

『便利機能っっ!!!』


なぎ

『はいこれ』


※【画像】キャンプファイヤーの写真


青葉

『え、なにこれ』


青葉

『あー? なるほど?』


なぎ

『そういえば撮ってたなって思って』


なぎ

『あんた、結局見てないでしょ?』


青葉

『おー、萌えとるなぁ』


青葉

『間違えた。燃えとるなぁだわ。火に萌えちゃったわ』


なぎ

『最悪の誤字で笑う』


青葉

『でもアレだな』


なぎ

『なに?』


青葉

『お前、写真撮り慣れてないだろ?』


なぎ

『は?』


青葉

『蓮見だったらもっとこう……画角とかいい感じに撮ってそうだな、うん』


なぎ

『文句あるの? 朝陽君にあんたの住所聞いてもいいんだけど?』


青葉

『おいやめろ!! 特攻してくるな!!』


なぎ

『仕方ないでしょ。普段スマホの写真機能なんて全然使わないし』


青葉

『俺のイケメンフェイスを撮ってもいいんだぜ?』


なぎ

『スマホ壊れる』


青葉

『壊れる???』


青葉

『まぁいいや、サンキュー。キャンプファイヤーがどんなもんなのかは気になってたんだわ』


なぎ

『だったら補習オチなんて、しょうもないことしなければよかったでしょ』


青葉

『ハッハッハ、それはそう!』


なぎ

『まったく……なんでもいいけどさ』


青葉

『丁重に保存させていただきました。今度一緒に写真の練習しようなるいるい(*´ω`*)』


なぎ

『ムカつく。あー送らなければよかった』


青葉

『うそうそ。あんがとさん。思い出になるいい一枚じゃねぇの』


なぎ

『はいはい。用はそれだけ』


青葉

『りょーかい。せいぜい土日はゆっくり休みたまえ』


なぎ

『あんたも……いやあんたは大丈夫か。疲れるって概念ないもんね』


青葉

『あるわ。人間ですよ私』


なぎ

『あ、あと一つだけある』


青葉

『なにかね』


なぎ

『来月もよろしく』


青葉

『はい?』


なぎ

『じゃ、そういうことで。おつおつ』


青葉

『おい! 一方的によろしくしやがって!』


青葉

『おーい!』


青葉

『おまっ! 周回してんじゃねぇぞ! 戻ってこいるいるーい!』


 × × ×


「うるさ……」


 ピロン、ピロン、とわたしが手に持っているスマホから通知音が鳴り響く。

 

 そのたびに、画面上部にはメッセージの通知が表示された。

 

 わたしはそれらを横に向かってスワイプし、次々に通知を削除していく。


「無視無視……っと」


 わたしは素材とイベントの周回をしなければならないのだ。


 いつまでもあの男の相手をしているわけにはいかない。


 ……あの男、か。


 ――ふと、今日の帰りのことが頭に過ぎる。


 『だからこそ――わたしは、あんたを理解()りたい。あんたと出会()いたい』


 アイツの歪みをこの目で見て。


 怒って、悩んで……悲しくて、そして朝陽君との話の中でわたしが出した『答え』。

 

「……」


 寝転がっていたベッドの枕に、ボフっと顔をうずめる。


 思い返すと……ちょっと恥ずかしい。


 わたし、よく平然とあんなこと言えたな。コミュ障のくせに。

 

 すごいよ留衣。自分でも褒めていいと思う。


 でも――嘘はついていない。


 わたしが思ったことを、素直にアイツにぶつけた。


 それに対してアイツがどう思ったのかは分からない。


 なにも響いていないかもしれないし、そもそも意味を理解していないかもしれない。


 それはそれで……問題ない。


 わたしはただ、わたしのやりたいように動くだけだ。


 その結果がどうなるのかは――神のみぞ知る、というわけで。


 わたしは枕に顔をうずめながら大きく息を吐き、数秒ほど経って顔を上げた。


「さ、ナイドラやろ」


 とりあえず、今はアイツのことは頭から放り出しておこう。


 考えてるだけでムカついてくるし。


 合宿期間は夜も勉強をやらされたせいで、全然ゲームができなかった。


 鬱憤が溜まっているのだ。ゲーム欲が溜まっているのだ。


 遅れを取り戻さないと……!


 ナイドラのアイコンをタップする。



 暗転した画面に映るわたしの顔は――とても穏やかだった。







 ──再び、スマホから通知音が鳴る。


 もしかしてアイツまだ……。


 わたしは呆れつつも、画面に表示されたメッセージ通知を見る。


「えっ」


 送り主は青葉……ではなく、全然予想とは違って。


 その名前を見て、思わず声が出てしまった。


 その通知に表示された名前は……わたしにメッセージを送ってきた人物は──




朝陽志乃

『夜分にすみません、渚先輩。今ってお時間よろしいですか?』

 


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