閑話13 夕方LINE①【朝陽司・朝陽志乃】
午後五時頃にて。
朝陽司
『志乃! 今大丈夫か?』
朝陽志乃
『うん。もう学校は終わってるから平気だよ。兄さんも?』
朝陽司
『今は自由時間だからね。学校お疲れさん!』
朝陽志乃
『ありがと! 兄さんもお疲れさま! 合宿はどう?』
朝陽司
『勉強ばかりで大変だよ』
朝陽志乃
『そういう合宿だもんね。まさか寝てたりしてないよね?』
朝陽司
『そういえばさぁ志乃』
朝陽志乃
『兄さん?』
朝陽司
『はい。普通に寝落ちしかけて渚さんに起こされてます……』
朝陽志乃
『やっぱり。ちゃんと起きてないとダメだよ兄さん』
朝陽司
『それは分かってるんだけどなぁ』
朝陽志乃
『もう。兄さんは仕方ないなぁ……。改めて渚先輩にお礼言っておかないと』
朝陽司
『お礼って……志乃は俺の保護者かなにかなの?』
朝陽志乃
『保護者みたいなものですー』
朝陽司
『ずいぶん可愛らしい保護者だなぁ』
朝陽志乃
『か』
朝陽司
『か?』
朝陽志乃
『兄さん。そういうことほかの女の子に言ってたりしてないよね?』
朝陽司
『え、言ってないけど? そんな軽々しく可愛い可愛い言えるわけないだろ?』
朝陽志乃
『兄さん……それ本気で言ってる?』
朝陽司
『お、おう』
朝陽志乃
『……今はとりあえずそれで許します』
朝陽司
『ありがとう? いったいなにが許されたんだ……』
朝陽志乃
『それでどうかしたの? 私になにか話があるんだよね?』
朝陽司
『あ、そうだった。これ見てくれよ!』
※【画像】昴が作ったカレーライス
朝陽志乃
『えっ、すごい! これってカレーだよね?』
朝陽司
『そう! 今日の昼は班でカレーを作って、それを食べるって感じだったんだ!』
朝陽志乃
『へぇすごいね! 楽しそう! ……兄さん、カレーの話になったから急に元気になったね』
朝陽志乃
『あ、じゃあひょっとして兄さんたちが作ったの? わー!』
朝陽司
『違うよ』
朝陽志乃
『え、そうなの? じゃあそのカレーって……』
朝陽司
『昴』
朝陽志乃
『昴さん?』
朝陽司
『昴たちの班で……というかほぼ昴が作ったカレーなんだよこれ。すごくない?』
朝陽志乃
『たしか昴さんってお料理が上手だったよね。となると、味も当然……?』
朝陽司
『超うまかった……!』
朝陽志乃
『わわ! いいなー!』
朝陽司
『改めて昴の料理スキルの高さを思い知ったよね』
朝陽志乃
『ふふ、よかったね。兄さんカレー大好きだもんね』
朝陽志乃
『でも羨ましいなぁ。私も食べてみたかったよ』
朝陽司
『それならまた今度作ってもらうか。うちで』
朝陽志乃
『うちで?』
朝陽司
『うん。家に昴を呼んで、カレーを作ってもらおう。そしたら志乃も食べられるだろ?』
朝陽志乃
『それってつまり……昴さんがうちに来るということ……?』
朝陽司
『あれ、俺そう言ったよな?』
朝陽志乃
『どうしよう……! 部屋のお掃除しなきゃ!』
朝陽司
『待て待て志乃! なんでそうなるんだよ。今すぐ来るわけないだろ?』
朝陽志乃
『あ、そうだよね! 焦っちゃった……』
朝陽司
『それに昴が来るってなっても今更だろ? もう数えきれないほど遊びに来てるわけだし……』
朝陽志乃
『それは……うん、そう』
朝陽司
『部屋の掃除なんてする必要ないって。志乃の部屋に入るわけじゃないんだから』
朝陽司
『中学のとき、昴が遊び半分で志乃の部屋に突撃して行ったことあったじゃん』
朝陽司
『アレで志乃がガチギレしてからは絶対に入ろうとしてないぞ昴』
朝陽志乃
『ガ、ガチギレって……たしかに怒ったかもだけど……』
朝陽司
『だから別におこれるえ』
朝陽志乃
『兄さん? 大丈夫?』
朝陽司
『あーごめんごめん。昴に邪魔されてた』
朝陽志乃
『昴さん?』
朝陽司
『暇だからか知らないけど邪魔してきた』
朝陽志乃
『昴さんらしいね』
朝陽司
『でも、志乃と連絡取ってるんだぞ? って言ったら急に静かになった』
朝陽志乃
『え、えぇ……なんで昴さん……』
朝陽司
『とりあえずそんな感じ! いきなり連絡してごめんな』
朝陽志乃
『ううん。兄さんが家にいなくてちょっと寂しいけど……私待ってるね』
朝陽司
『明日には帰るって』
朝陽志乃
『うん!』
朝陽司
『あ、昴とちょっと話す?』
朝陽志乃
『え! どうして?』
朝陽司
『あーいや。最近の志乃、昴の話をすること多いから話したいかなって』
朝陽志乃
『私そんなに昴さんの話してる?』
朝陽司
『あれ、俺の気のせいかな』
朝陽志乃
『そうじゃない? 昴さんの話多いかなぁ私……』
朝陽司
『まぁいいや。じゃあ、そろそろこのあたりで! またな!』
朝陽志乃
『またね! 勉強がんばって!』
朝陽司
『おう!』
× × ×
「やっぱ俺の気のせいなのかな……?」
改めて自分に問いかけるが、志乃もよく分かっていないようだったし俺の気のせいかもしれない。
でも昴が家に来るって下りの反応もそうだし、なんか最近の志乃……うーん。
前からあんな感じだった気もするし……そうじゃない気もするし……。
「むむむ……」
「司? なに唸ってんだよ?」
ベッドでスマホを弄りながらゴロゴロしていた昴が話しかけてくる。
「いや、なんでもないよ。ちょっと志乃のことを考えてた」
「へぇ? 流石妹想いだねぇ。志乃ちゃん寂しがってんじゃないの?」
「俺もちょっと心配だけど父さんたちがいるし大丈夫だろ」
「そりゃそうだな」
あ、そうだ。
せっかくだし昴に聞いてみるか。
「なぁ昴」
「んぁ?」
「今度うちに来てカレー作ってくれよ? 志乃に昼のことを話したら羨ましがってたからさ」
「おいおい、青葉シェフはお高いんだぜ?」
「そこは……志乃の喜ぶ顔で一つどうだろう」
「うーーーん!! 問題なしっ!! 志乃ちゃんが喜んでくれるなら俺も頑張っちゃう! ま、今度の休日にでも行くよ」
「サンキュー!」
あとで志乃にも連絡してやろう。
きっと喜んでくれるはずだ。
付き合いが長いせいか、昴も志乃のことを大事に想ってくれているようだし……。
兄として嬉しい限りである。
志乃だって昴のことは好きだと思う。
それこそ、もう一人の兄みたいに慕っているのではないだろうか?
まぁなんにせよ。
昴がうちに来るのが楽しみだ。