閑話10 青葉昴・誕生日LINE②【青葉昴・星那沙夜】
六月二十日。午前零時十五分頃にて。
星那
『青葉昴 様
この度はお誕生日誠におめでとうございます。
昴様には日頃よりお世話になってお……おり……なってるか……?
心から感謝をしています。……多分。
貴方様のそのハイテンションには好感を抱いています。
今後ともよろしくお願い申し上げます。
星那沙夜』
青葉
『先輩』
星那
『おや、返信が早いな』
青葉
『おや、じゃないんですよ。なんですかこの丁寧になりきれなかった挨拶たちは』
星那
『ふむ。先輩らしくここはそれっぽい挨拶をしようと思ったのだが……』
星那
『いかんせん、昴に対して丁寧に接するということへの拒絶反応が出てしまってな』
星那
『フッ、私もまだまだだな』
青葉
『あれこれバカにされてる? そういうこと?』
星那
『気のせいだ』
青葉
『気のせいか』
星那
『で、昴は十七歳か』
青葉
『そうっすね。てか、よく俺の誕生日覚えてましたね』
星那
『前に言っていただろう? こう見えて私は物覚えには自信があるんだ』
星那
『高二という時期は高校生活の中で最も貴重で楽しい時期だ。精一杯青春するといい』
青葉
『うわ先輩が先輩みたいなこと言ってる』
星那
『うっかり昴のスマホにウイルスを送るところだったよ。危ない危ない』
青葉
『うっかりで極悪非道なことするのやめて?』
星那
『十七歳ということは……しばらく私とは同い年になるのか』
青葉
『あ、先輩って十二月でしたっけ誕生日』
星那
『うむ。君もよく覚えているな』
青葉
『いやめっちゃ司にアピールしてましたやん。十二月は私の誕生日だから~って。あわよくばクリスマスに予定取りつけようとしてましたやん』
星那
『フフフ』
青葉
『いや怖い怖い。ホラーだよこの人』
星那
『そういうキミはどうなのだ?』
青葉
『ほえ。どうとは?』
星那
『恋人とか、好きな人とか。そういうのないのかい?』
青葉
『いたらこんな人間になってないっすよボク』
星那
『それはそうだ』
青葉
『素直に肯定されたっ!』
星那
『それこそ留衣とかどうなのだ? いつも仲良さそうに喧嘩してるそうじゃないか』
青葉
『それ本人に言ったら東京湾に沈められますよ』
星那
『ほう。彼女はその筋の人ということか』
青葉
『まぁそんな感じっすね』
星那
『なるほど。伝えておくとしよう』
青葉
『絶対やめて? 俺がホントに沈んじゃうルートになるから』
青葉
『まぁでも渚とはそういうのじゃないっすね。だってアイツ』
星那
『アイツ?』
青葉
『あ、いや。だってアイツほら。俺のことどこからどう見ても嫌いでしょ。前世が敵同士だったんかってくらい噛みついてきますし』
星那
『ほう……? キミにはそう見えているのか』
青葉
『?』
星那
『いや、ここから先を言うのは無粋だろう』
星那
『そうだな。せっかくの誕生日だ。先輩として私が一つ、アドバイスをしておこう』
青葉
『お、なんすか』
星那
『米を炊くときは氷を入れてみるといい。美味しくなるぞ』
青葉
『うううううん地味にタメになるアドバイスっ! けど反応に困るっ!』
星那
『というのは冗談で。いやこれに関しては冗談ではないが』
青葉
『マジだった。明日からやろ』
星那
『離れすぎると本当に大事なものが見えなくなる。それに注意することだ』
青葉
『離れすぎる……?』
星那
『以上、先輩からのお節介だ。それでは私は風呂に入って寝る』
青葉
『え、今からすか?』
星那
『私は寝る前に入る派でな。……なんだ昴、ひょっとして想像したのか?』
青葉
『バッチリしました。ありがとうございました』
星那
『フフ、キミは素直で面白い。ではな昴。また学校で』
星那
『誕生日おめでとう』
青葉
『あ、あざす!』
× × ×
「離れすぎると……か」
会長さんはいつもあんな感じだ。
大事な部分は決して言わず、あくまでも助言に徹する。
そして、核心は本人に気付かせることを重要視していた。
彼女には、俺に見えない『何か』が見えているのだろう。
それに、あの人と話していると……なにもかもを見透かされているような気持ちになってくる。
――『離れすぎると本当に大事なものが見えなくなる。それに注意することだ』
本当に大事なもの……。
それを指す言葉の意味は――
今の俺にはまだ、分からない。




