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第304話 青葉昴はお誘いする

『……』

「……」


 どういう意味でしょうか――という星那さんの問いかけ対し、俺はすぐには答えられなかった。


 沈黙のあと……俺は考える。


 ストレートに言うべきか。

 それとも遠回しにするべきか。


 いろいろ悩んだ末に出した結果は――


 うん。


 アレコレ考えるのめんどくさいわ。だるいわ。


 そもそもこれって会長さんからの頼みなのに、どうして俺が悩まないといけないんだって話だよな。


 たとえ断られたとしても、別に俺にデメリットなんてない。


 むしろ、気が楽になるまである。


 となれば……さっさと済ませることにしよう。


「星那さん。今って時間あります?」


 やはりこういうのは複雑に考えず、ストレートにいくのが一番だ。


 ダメで元々。


 どんな反応が返ってきても、そのときはそのときだ。


『時間……? ありますが……それがなにか?』

「汐里祭、ちょっと一緒に回りません?」


 ――瞬間、電話越しに星那さんが僅かに息をのんだ……気がした。


 電波の乱れや雑音かもしれないから、断定は出来ない。


 ……言葉だけ聞くとアレだな。まるでデートのお誘いみたいな感じだな。


「二人ではなく、もちろん会長さんも一緒にですけど」


 変に勘違いされても困るし、これは伝えておこう。


『……』


 一瞬の無言ののち、返ってきたのは――


『お断りします』


 一切の迷いも躊躇もない、見事なストレート返答だった。


 ったく……清々しいほどの即答だな。


「返事はえぇな。少しくらいは考えてくださいよー。年下のイケメン男子からのお誘いなんですよ? もうちょいこう……迷ったりしません?」

『いえ。迷いません』

「どうしよう悲しくなってきた」

『即断即決が私のモットーでございます』

「そりゃ素晴らしいことで……初めて聞いたけど」


 たしかにこの人、性格的に悩むってことはなさそうだ。

 

 余計なことを考えず、自分がやると決めたらすぐに行動するタイプだろう。


 ブレるところが一切想像できない。


 ……まぁ、速攻で断られるのはある程度予想していたけどな。


 ここですんなりオッケーがもらえるほど、俺とこの人の関係は近くないわけで。


『私を誘う理由が不明です。私よりも……ほかのご友人と過ごされては? 例えば司様や留衣様がいるでしょう?』


 ごもっとも。


 もし俺が星那さんの立場でも、同じことを言うだろう。


 俺みたいな人間が電話をしてきて『一緒に回りませんか?』とか……普通に怪しすぎる。


 コイツなにが目的だ……? ってなる。


 ……うーむ。


 もうちょっと遊ぼっと。


「いやいや……麗しの椿お姉様や沙夜お姉様と一緒に遊びたいなぁっていう、思春期男子の健全なお願いですよ」

『健……全……?』

「そこに疑問を抱かないでください。どこからどう見ても、爽やか健全ピュアボーイでしょうが俺は」

『……失礼しました。都合よく電波が乱れてしまって、上手く聞き取れませんでした』

「マジで都合いいなおい」


 自分で都合いいとか言っちゃってるし。


『――沙夜様でしょうか?』


 ……。


 その言葉に、ピクリと眉が反応する。


 いつの間にか、星那さんの声の雰囲気がいつも通りに戻っていた。


「と、言いますと?」


 あえて答えず、俺はただ聞き返す。


 ……ま、流石にすぐ分かるよな。


『私が知っている昴様は……。ご自身の意思で、誰かをお誘いするとは思いません』

「ほう」

『そして貴方様は、理由もなく()()()()()をする方ではございません。つまり……他者の意思が介入していると考えるのが当然かと』

「ほーん……なかなか言い切りますね」

『はい。間違いではないと確信しているので』


 確信に満ちた言葉に、俺は思わず感心した。


 疑問形ではなく、断定。


 俺という人間をある程度理解したうえで、星那さんはきっぱりと言い切ってみせた。


 知り合ってから、そう長くはない。たった数ヶ月程度だ。

 数えきれないほど会話をしたわけでもない。


 ――私が知っている昴様、ね。


『そして、誘う相手が()という時点で……沙夜様が関係しているのでしょう。むしろ、沙夜様以外に考えられません』


 星那さんは、ただ冷静に事実を並べる。


『沙夜様が、私を誘うよう、昴様にお願いをした。……と、いうことですね?」


 ……やれやれ。

 しょうもない遊びはここまで、か。


「大正解です」


 俺は間をあけず、すぐに答えた。


 星那さんがここまで理解しているのだ。


 これ以上の『ぼかし』は不要だろう。


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