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第286話 朝陽志乃は気になるクラスがある

 三年三組の男装喫茶を出て、廊下まで戻って来た俺はキョロキョロと辺りを見渡す。


「志乃ちゃん、お待たせーい」

 

 少し離れた場所に立っている志乃ちゃんがすぐに視界に入り、俺は近付いて声をかけた。


 人通りは多いものの、明らかにレベルが高い美少女が一人立っていたからすぐに見つけることが出来た。


 ナンパとかされていないか心配だったが……特に大丈夫みたいだな。


 この人の数だし、あまり変なことはできないだろう。


 それに美少女過ぎるがゆえに、逆に声をかけられないパターンもあるからね。


 声をかけるだけなら、渚みたいなちょっと大人しめの陰キャっぽいタイプのほうが可能性がありそうだし……。


 ちなみに星那さんをナンパしたら、文字通り宙に投げられるからね。星那さんを狙っている人はそれを覚悟のうえで挑戦してください。……なんの話?


「あっ、昴さん……!」


 俺の声に反応した志乃ちゃんが、表情を明るくしてこちらに歩いてきた。


 小さく手を振っているのが、なんとも可愛らしい。ほっこり。


 家に帰ったときに犬や猫に出迎えられる飼い主の気分って、こんな感じなんだろうか。


「生徒会長さんの話は大丈夫だったんですか?」

「だいじょぶじょぶ。ちょっくら愛の告白されてただけだから」

「愛の告白……!? えっ……!?」

「うそうそ。志乃ちゃんは反応が良くて楽しいな~!」

「も、もう……!」


 嘘って言えなくもないけど……まぁいいや。


 今回の件は志乃ちゃんには関係ないし、詳しく話す理由もない。


 明日のことは明日考えるとして……だ。


 今はこの、頬を膨らませて怒ってらっしゃる志乃ちゃん様と遊ぶことを考えよう。


 邪魔にならないように廊下の端に寄り、俺は腰に手を当てる。


「さて志乃ちゃん、次はどこに行く? 俺が行きたかったクラスには行けたから……今度は君の要望があれば聞くぜ」


 会長さんの雄姿はバッチリ見ることが出来たからな。

 アレは明日も繁盛することだろう。


「それなら気になるクラスがあって……。昴さんを待ってるときに話し声が聞こえてきたんですけど……」

「お? さてはまーた男装系か? 志乃ちゃん、夢中になってたからなぁ……。昴お兄ちゃんは悔しいよ。ぐすんぐすん」

「む、夢中にはなってませんから……! たしかにかっこよかったですけど……見惚れちゃいましたけど……」


 顔を赤くして、志乃ちゃんはそっぽを向いた。


 ぐぬぬぬ……こんなにイケメンボーイがすぐ近くにいるというのに……!


 やはり女性のかっこよさ……というのが、志乃ちゃんのなかでは重要なのかもしれない。


 となると、初めて星那さんを見たとき……もしかしたら結構な衝撃を受けてたんじゃないか?

 

 だってあの人って、外見や雰囲気がまさにかっこいい女性そのものでしょ。


 志乃ちゃんはタイプ的にかっこいい系ではないけど……。まだ十六歳だからまったく判断できない。


 成長したら、会長さんや星那さんみたいになるかもしれないし。個人的には遠慮してほしいけど。


 志乃ちゃんには、ずっとほわほわ天使系でいて欲しい所存。


「はいはい。それで実際どこよ? 気になるところって」

「はいはいって……昴さんが言ってきたのに……」


 志乃ちゃん呆れた様子でため息をついた。


「えっと……」

 

 はてさて。


 志乃ちゃんが気になるクラスとはいったいどこなのだろうか。


 さっき行ってきたところのような飲食系か。

 

 渚と行ったところのようなエンタメ系か。

 

 はたまた別の――


「占いです」


 ……。


 ん?


「え、なんて?」


 俺が聞き返すと、志乃ちゃんは照れくさそうに俯いた。

 

「う、占いです……」


 あー、なるほどなるほど……。

 

 占いですか……。


 そう来ましたかぁ……。


「いいじゃん占い。楽しそうだし。ちなみに学年は?」

「聞いた話では二年生らしいです」

「マジか。……あーでも言われてみれば、たしかにそんな雰囲気の出し物をやってるクラスがあったような……」


 同じ学年とはいえ、ほかのクラスの出し物まで正確に覚えているわけではない。

 

 井口たちの揚げパンうまかったなぁ……くらいの感想で、それ以外は現状全然知らないわけで……。


 占い……占いかぁ。


 女子は占いが好きなイメージがあるし、志乃ちゃんもそれは例外じゃないのかもしれない。


 俺は基本的に占いを信用しない側の人間ではあるが、嫌悪感などがあるわけでもない。


 良い結果だったら信じる。

 悪い結果だったら信用しない。


 ……なんて、そんな都合のいい派閥の人間なのだ。むしろ大多数の人間はこっち側だと思う。


 まぁ断る理由もないし、遊び感覚で行ってみるのも面白そうだ。


 学生の占いなんて、そこまで大層なものでもないだろう。


「オッケー。俺も興味出てきたし、一緒に占われるとするか!」

「やった……! ありがとうございます!」


 可愛い。

 喜ぶ志乃ちゃん可愛い。


「でもどうする? 『青葉昴さん……あなたはかっこよすぎて言うことありませんね。むしろあたしのハートを占って♡』って言われたら」

「それでクラスなんですけど……」

「めっちゃスルーするじゃん」


 すっごい自然にスルーするじゃんこの子。


 俺みたいなタイプには変に否定的なツッコミを入れるより、スルーしたり無視するほうがよほど効果的ですからね。


 うんうん。流石は志乃ちゃん。

 そのあたりをバッチリ分かってるね!


 ……悲しくなってきた。


 で、なんだっけ。

 占いをやってるクラスだっけ?


 果たしてどのクラス――


「四組です」

「へぇ、四組か」


 ……。


 あれ。

 ちょっと待って。


「え? 四組? 二年四組?」

「らしいですよ? 私が聞いた限りは……ですけど」


 二年四組――?


 四組ってたしか……。


 アイツがいるところじゃなかったっけ――?


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