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第280話 青葉昴は目的のクラスに到着する

話数がおかしくなっていたので、ここ数日投稿していたエピソードの削除を行い、改めて正しい順番で投稿させていただきます!

ご困惑させてしまい申し訳ございません。

「そう言えば志乃ちゃん」


 目的のクラスへと向かっている途中、隣を歩く志乃ちゃんへと話しかける。


 歩きながらふと思うことは――


 周囲から感じる……『視線』。


 皆様ご存知の通り、志乃ちゃんはそりゃもう大変素敵な美少女様だ。


 廊下を歩く人とすれ違うたびに、男女関係なく『おっ』という好気的な視線を向けられているのを感じる。


 誰が見ても美少女だと答える容姿。

 艶やかな長い黒髪に、優しげな雰囲気。


 まさに日本人が好む『ザ・大和撫子ちゃん』なわけで……。


「なんですか?」


 ――もっとも、本人はそんなことに気が付くことなく……平然と歩いているのだけど。


 こういう自分に向けられる感情に鈍感なところも、兄貴そっくりだ。 


 まぁそれに? 俺もイケメンだし?

 美男美女的な感じで目立ってるのかもなぁ! はっはっは!


 ……っていう戯言は置いておいてだ。


 首をかしげる志乃ちゃんに、俺はニッと笑う。


「俺たちの……っていうか、司お兄ちゃんたちの劇はどうだったよ」


 そういえば、ちゃんと感想を聞いていなかった気がする。


 体育館で話したときは、よっちゃんのカップリングが云々っていう話とか、日向の自慢話しか聞いてなかったからな。


 反応的には、結構楽しんでくれていたようには思えるけど……。


 ……つーか日向のヤツ、今頃司と楽しんでんのか。その光景をニヤニヤしながら、後ろで見てたかった気持ちもある。


 月ノ瀬たちは……三人でなんか適当に遊んでんのかね。知らんけど。


「面白かったですよ。だって私たち、午前と午後どっちも観に行ってますからね?」

「おぉ、リピーターさんだ」

「そうです。リピーターさんですよ?」


 可愛い。言葉を繰り返すリピーター志乃ちゃん可愛い。


 でも言われてみれば、たしかにそうだったな。

 

 少なくとも、二回以上観に行く価値はあると感じてくれたらしい。


「兄さんの晴れ舞台ですから。もちろん明日も観に行きますね」

「そりゃ助かる。アイツも喜ぶよ。ついでにほかの友達にも宣伝よろしくな」

「任せてください」


 可愛い妹が観に来るんだ。司もやる気が漲ることだろう。


「それに昴さんが考えたお話も……とても感動しました。素敵だなぁって思いながら観てましたよ?」

「マジ?」

「マジ、です。飽きっぽいあの日向も『おもしろい!』って言ってましたもん」


 優しく微笑んで志乃ちゃんは言う。


 日向もそう言っていたのか……。

 

 アイツは飽きっぽい性格で、良くも悪くも正直に意見を言うヤツだ。


 面白いものは面白いと。

 つまらないものはつまらないと。


 自分が飽きたものや、興味を失ったものにはとことん関心を向けなくなる。


 そんな日向が面白いと言ってくれたことには、誇っていいかもしれない。


 ……ま、アイツの場合は司がいればなんでもいいんじゃね? って思う部分もあるが。


「ぬふふ、サンキューな。珍しく俺も頑張っちゃったぜ!」

「お話も上手くて、作ることも出来て……昴さんって本当に多才ですよね。すごいです」

「おーおー、そんなに褒めんなって! ……俺のイケメンブロマイド集いる?」

「いりません」

「あ、そうすか……」


 バッサリである。

 ちょっとは恥ずかしい感じを見せてくれたっていいじゃない!


「兄さんたちの演技も、昴さんが書いたお話も、蓮見先輩が用意した衣装も……本当に素敵でした。羨ましい……って思っちゃうほどに」

「羨ましい?」

「はい。私も、兄さんや昴さんたちと……夢中になるくらい同じものを作り上げてみたかったなぁって」


 以前も似たようなことを言っていた。

 

 それだけ、羨ましいという気持ちは本物なのだろう。


 とはいえ……こればかりは流石にどうしようもない。

 

 学校のルール。学園の違いなど……いろいろあるからな。


「別に汐里祭にこだわらなくても、今後そういう機会はあるって」

「そう……でしょうか」

「そうそう。多分な!」

「多分じゃないですか……。もう、昴さんはいつも適当なんですから……」


 呆れたような、拗ねたような……。

 

 唇を尖らせる志乃ちゃんに、俺はとりあえず「はっはっは!」と笑っておく。


 来年には志乃ちゃんも、俺たちのように出し物を考えて準備する側に回る。


 日向やよっちゃんと、また同じクラスになれるかどうかは分からないが……。


 もし同じクラスになれたら、そのときは一緒に好きなもんを作り上げていけばいい。


 そのためにも――


 まずは、今日という日を楽しまないとな!


 × × ×


 ――その後、てくてくと校内を歩いて。


 道中、他校の男子に志乃ちゃんが声をかけられそうになったのは別のお話。

 野郎どもに俺が『ニコッ』ってしてあげたら退散していったのも、また別のお話。


 そんなわけで。 


「よーし! 目的の階に到着!」

 

 ひとまず目的のクラスが位置している階に辿り着くと、俺は満足げに腰に手を当てる。


「ここって……()()()の……?」


 志乃ちゃんが周りをキョロキョロを見回しながら言った。

 

 その通り、ここは三年生の教室が並ぶ廊下。


 今日、ここに来るのは二度目であり……。

 

 一度目は渚と来たとき。そして二度目が今回。


 俺の視界に映るのは、たくさんの来場者と呼び込みを行う先輩たちの姿。


 午前中に来たときよりも、フロア全体が賑わっているように感じた。

 

 午後というのもあって、全体的に人の数も増えているのかもしれないな。


 三年一組で呼び込みをしていた男の先輩は……見当たらない。現在は違う先輩が立っていた。


「この階、ほかと比べて人が多いですね……なにか特別な出し物でもあるのかな……?」


 志乃ちゃんもそう感じるほど、やはりこの階は特別賑わっているようだ。


「その理由、もうすぐ分かるぜ」

「え? それってどういう……」

「『そこ』が俺たちも目的地だからな」

「そこ……? あっ、昴さんの行きたい場所ってもしかして……」

「お? 想像ついた?」


 志乃ちゃんはこくりと頷いた。


 三年生の教室。

 賑わいを見せるほど、人を惹きつけるなにか。


 まぁ『三年生』という時点で、どこへ行こうとしているのかは予想できるだろう。


 俺は志乃ちゃんを連れ、廊下を歩く。


 道中すれ違う人……主に女子たちが、なにやら上機嫌な顔をしていた。

 歩く足取りもルンルンである。


 彼女たちの会話にふと耳を澄ませると――


「すっごくかっこよかった……! アレは推せる……!」

「でしょ!? あたしも最初に行ったときはドキってしたもん! マジでイケメン!」

「漫画から出てきたような感じだよね!」

「あたし、ここに転校しようかな……」


 とか、なんとも盛り上がっている様子。


 そういえば渚と歩いていたときも、同じような会話を耳にした覚えがある。


 あんときも『かっこいい』だのなんだの言ってたよな……。


 この感じ……やっぱり『去年』を思い出すな。


 去年の汐里祭でも()()()がいろいろな意味で目立って、かなり話題になったっけ。まるでその再現を見ているようだ。


 まーた派手なことやってんのか……?


 なんて思いながら歩き、俺たちはついにお目当てのクラスの前に到着した。


「ここって……」


 志乃ちゃんがクラスプレートを見上げたあと、ドアの前に設置された看板へと目を向ける。


 俺も同じように看板を見た瞬間……思わず笑いがこみ上げてきた。


「ははっ、おもしれぇ出し物やってんじゃん」


 看板には――


 『イケメン女子がおもてなし♪ 3年3組の男装執事喫茶♡』


 と書かれていた。


 文字通り、執事風の男装をしている女子生徒たちがおもてなしをしてくれるカフェのようだ。


 三年三組。

 

 それ即ち、わが校が誇る最強生徒会長を要するクラスで――




「お気をつけて行ってらっしゃいませ、お嬢様」



 すぐ近くから聞こえてきた、凛々しい声。 



「また来ます……! 絶対来ます!」

「フフ、待っていますよ」

「キュン――!」



 

 教室の扉から出て来たのは、一人の若い女性客と……。

 

 青みがかった髪を頭の後ろで結った……一人の、イケメン。

 

 男の俺ですら、思わず釘付けになってしまうほどの……ガチのイケメン()()だった。


 こ、こりゃあ……たしかに人気も出るわ。

 

 こんな人に接客なんてされちゃあ、目がハートになってもおかしくねぇ。


「わ、わぁ……すごい……」


 志乃ちゃんもそう言葉をこぼしてしまうほどの相手。


「む?」


 その声に反応し、イケメン女子は俺たちへと顔を向ける。


 そして――


「フフッ」


 ()()()()()クールな微笑みを浮かべた。


 皆様ご存知――星那沙夜である。


 執事服に、白い手袋。

 全身から溢れるイケメンオーラ。


 な、なるほど……今年はそう来たかぁ……。


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