閑話7 夜LINE⑦【青葉昴・川咲日向】
午後九時にて。
青葉
『おい後輩。お前今機嫌いいだろ』
ひなた
『え』
ひなた
『ちょ、なんでわかるんですか? 先輩あたしのこと大好きすぎません?』
青葉
『いやお前のことは別にどうでもいいんだけど』
ひなた
『どうでも!?』
青葉
『お前にとっておきのリーク情報を持ってきたんだが……やっぱめんどくさくなったからいいや』
ひたな
『先輩から送ってきましたよね!? なに勝手にめんどくさくなってるんですかー!』
青葉
『えー聞きたい?』
ひなた
『なんの話か分かりませんが聞きたいです!』
青葉
『まったく仕方のない後輩だなぁ』
ひなた
『おかしい。あたしが呆れられてるのゼッタイおかしい』
青葉
『ほれ』
※【画像】日向の買い物について、司が昴も一緒に行こうと誘うトーク画面のスクショ
ひなた
『……』
青葉
『いやー最初はな? 面白そうだし俺もついて行くかーって思ったんだよ』
青葉
『でもさすがに日向が勉強頑張ったご褒美だしなぁ、邪魔するのもアレだなぁと思い返事を保留にしてるところでござる』
ひなた
『なんか昴先輩ってアレですよね』
ひなた
『普段はテキトーなのにそういうとこ無駄にちゃんとしてますよね』
青葉
『おうコラ。こうして密告してるんだから感謝してほしいんだが???』
ひなた
『あーもー司先輩はも〜!!』
青葉
『お前さ、ちゃんと二人きりで行きたいって言ったか?』
ひなた
『そんなの恥ずかしくて言えるわけないじゃないですか! なに言ってんですか!』
青葉
『普段あんだけ好き好きアピールしてる人間が言うセリフじゃねーぞ』
ひなた
『も〜!』
青葉
『ま、司に悪気はまったくないからなぁ。むしろお前を想ってのことだと思うぜ』
ひなた
『分かってるから怒るに怒れないんですよ〜!』
青葉
『んで? お前はどうしたい? 来るなってんなら適当に理由つけて断るけど』
ひなた
『え〜』
青葉
『それか、司じゃなくて俺と二人で行くっていう選択肢もだな』
ひなた
『あ、それはありえないです』
青葉
『解散』
ひなた
『じゃー……もういいですよ。昴先輩も来てください』
青葉
『いいのか?』
ひなた
『いいですよ。あと志乃も誘って四人で行きましょ!』
青葉
『お、中学メンツだな。懐かしい』
ひなた
『そゆことです! 志乃にはあたしから声かけておくので!』
青葉
『おけおけ。じゃー司に返事しとくわ。俺は日向とデートするから兄妹仲良くってな』
ひなた
『はぁ? そんなことしたら埋めますよ?』
青葉
『どこにだよ』
ひなた
『校庭の桜の木の下です』
青葉
『お前明らかにあの毒舌眼鏡娘に影響されてんな?』
ひなた
『???』
ひなた
『じゃー場所とか時間とかは決まったら送りますね〜』
青葉
『へいへい。ほんじゃまたな』
ひなた
『またです!』
青葉
『あ、そうだ日向』
ひなた
『なんですか?』
青葉
『ちゃんと言ってなかったと思ってな』
青葉
『勉強よく頑張ったな。お疲れさん』
青葉
『……どう? 惚れた? ドキッとした?』
ひなた
『最後の一言で台無しです! もう知りません! 昴先輩のバーカ!』
× × ×
「あーもう! どうしてあの先輩はいつもいつも!」
ベッドの上でバタバタと。
いつもふざけてるくせに、変なところはちゃんとしてる。
かと思ったら結局いつものおふざけモードに戻る。
別にあたしになにも言わないで、ドッキリ的なノリで当日来ることだってできたのに。
それを今回はしないあたり、あの先輩の変な性格が出てる。
──まぁ、頑張ったご褒美〜って話じゃなかったら間違いなく来るんだろうけど。
昴先輩にはおちょくられてばかりだ。
はぁ……もう。
「ああいうちゃんとした面だけ見せてればモテると思うんだけどなぁ」
勉強はできるし運動もできる。
顔だって悪くないと思う。
性格はあんな感じだけど……いつも楽しく場を盛り上げてくれる。
だけど。
昴先輩はモテない。
中学からの謎だ。