閑話41 月ノ瀬玲・誕生日LINE【お勉強組!】
十月十日。零時にて。
晴香
『玲ちゃん誕生日おめでとー!』
ひなた
『姉御! おめでとうございます姉御!』
星那
『おめでとう、玲』
朝陽志乃
『おめでとうございます、月ノ瀬先輩』
なぎ
『おめでとう』
朝陽司
『おめでとう月ノ瀬さん!』
青葉
『Happy Birthday to You~』
青葉
『Happy Birthday to You~』
なぎ
『なんか始まったんだけど』
青葉
『Happy Birthday Dear...』
青葉
『My Rei!!!!』
青葉
『Happy Birthday to You~!!!』
青葉
『Fooooooooooooo!!!』
ひなた
『先輩、満足しました?』
青葉
『したっ!』
ひなた
『ならよしっ!』
青葉
『楢由!』
朝陽司
『誰だよ』
朝陽志乃
『昴さん』
青葉
『あぇ?』
朝陽志乃
『My Reiってなんですか? どういう意味ですか?』
青葉
『ヒエッ』
朝陽志乃
『Myってどうして入れたんですか?』
青葉
『あ……』
青葉
『姉御ぉ! 助けて姉御ぉ!』
晴香
『志乃ちゃん相手だとタジタジだね青葉くん……』
朝陽司
『まぁ気持ちは分かる』
朝陽志乃
『兄さん?』
朝陽司
『なんでもない!』
星那沙夜
『フフ、志乃には逆らえないな』
なぎ
『志乃様だ』
朝陽志乃
『渚先輩やめてください……!』
月ノ瀬玲
『まったくもう……誰が姉御よ』
青葉
『姉御!!』
ひなた
『よっ! 待ってました姉御!』
月ノ瀬玲
『やめなさい』
青葉
『はい』
ひなた
『はい』
月ノ瀬玲
『みんな、ありがとね。日付が変わると同時にお祝いされたのは初めてだったから……ビックリしちゃった』
青葉
『て言うわりには登場が遅かったじゃねぇの』
月ノ瀬玲
『あぁ。ちょっと有木……前の学校の子からも連絡来てたから。軽く話してたわ』
朝陽司
『そっか。なんだか安心したよ』
青葉
『同じく~』
月ノ瀬玲
『これで私も十七歳組の仲間入りね』
星那
『そうだな。私と同い年だ。タメ口でいいぞ』
月ノ瀬玲
『絶対無理です』
星那
『むぅ……それは残念だ』
青葉
『あんたどんだけタメ口使われたいんですか』
星那
『仕方ないだろう? 同級生ですら私に敬語を使うことが多いのだ。いわば私はタメ口に飢えている』
晴香
『あー……でも敬語になっちゃう気持ちはちょっと分かるかも……』
ひなた
『沙夜先輩って、二年生とか三年生とかじゃなくて……なんていうか、沙夜先輩って分類ですよね!』
朝陽司
『俺も分かるかも……』
青葉
『おい星那! 焼きそばパン買って来いよ!』
星那
『む? では知人が経営している超一級品の焼きそばパンを仕入れよう』
星那
『ただし……キミに払えるのか?』
青葉
『ほんますんませんした』
なぎ
『馬鹿じゃん』
朝陽志乃
『もう……』
月ノ瀬玲
『先輩なら本当にそういうパンを仕入れそうで怖いですね』
青葉
『じゃあアレか? 二年生メンツで十七になってねぇのは司と蓮見か』
朝陽司
『ああ、うん。そうだね。俺は十一月だからな』
晴香
『私は早生まれだからまだ先だねー!』
月ノ瀬玲
『お先に失礼するわね。司、晴香』
なぎ
『お先、晴香』
晴香
『ぐぬぬぬ……』
月ノ瀬玲
『でも……本当にありがとう』
月ノ瀬玲
『私、こんなに幸せな気持ちで誕生日を迎えられたのって初めてだから』
月ノ瀬玲
『正直、ちょっと泣きそうになっちゃった』
ひなた
『あの。あたしも泣きそうになっちゃったんですけど』
晴香
『私も』
朝陽志乃
『私もです……』
青葉
『あてくしもよ』
月ノ瀬玲
『アンタは絶対泣いてないでしょ』
なぎ
『絶対泣いてない』
青葉
『酷いわっ! ぐすんぐすん!』
朝陽司
『大丈夫だよ月ノ瀬さん』
朝陽司
『俺もそうだし……みんなもきっと、これから毎年月ノ瀬さんのことをお祝いするからさ』
月ノ瀬玲
『司……』
月ノ瀬玲
『ありがと』
星那
『良い友人を持ったものだな、玲』
星那
『大切にするといい』
月ノ瀬玲
『はい。もちろんです!』
青葉
『司』
朝陽司
『なんだよ?』
青葉
『よく言った。危うくお前に惚れそうになったぞ』
朝陽司
『ごめんなさい』
青葉
『振られたので誰かあてくしを貰ってください』
ひなた
『仕方ないですねー。あたしが面倒を見てあげてもいいですよ♡』
青葉
『ごめんなさい』
ひなた
『振られたので誰かあたしを貰ってください』
なぎ
『笑う』
晴香
『青葉くんと日向ちゃんって息ぴったりだよね笑』
青葉
『そういうわけだから姉御!』
ひなた
『誕生日プレゼントは~!』
青葉
『あてくし♡』
ひなた
『あたし♡』
月ノ瀬玲
『星那先輩、もらったプレゼントを捨てるのってなにか事件になったりしますか? 人間なんですけど』
星那
『ふむ……そうだな。バレなければいいと思うぞ』
青葉
『返しとして最低すぎるんだけど』
ひなた
『捨てる気満々じゃないですか!』
月ノ瀬玲
『だっていらないもの。アンタたち、犬や猫より手間かかりそうだし』
月ノ瀬玲
『ねぇ志乃?』
朝陽志乃
『えっ、え……!? 私ですか……!?』
晴香
『唐突な振りが志乃ちゃんを襲うっ!』
ひなた
『わんわんわん!!』
青葉
『ヒヒーン!!!』
星那
『馬が混ざっているな』
青葉
『どうなのよ志乃ちゃん!』
ひなた
『どうなの志乃! 捨てるの!?』
朝陽志乃
『え、えっと……!』
朝陽志乃
『ど、どう思いますか渚先輩……!』
朝陽司
『まさかの渚さんへパス』
なぎ
『え、捨てるけど』
晴香
『バッサリ!!笑』
月ノ瀬玲
『そういうことよ。昴、日向、アンタたちのことは忘れないわ』
青葉
『姉御ぉ! そんなこと言わないで姉御ぉ!』
ひなた
『姉御ぉ!』
月ノ瀬玲
『本当にアンタたちは……』
月ノ瀬玲
『でも二人のおかげで退屈しないのは確かだわ。ありがとね、二人とも』
青葉
『見たか日向。今のがモテる女子のトーク術だ』
青葉
『一回下げてもいい。でも、そのあとしっかり上げるんだ』
ひなた
『バッチリ見ました! これで明日からあたしもモテモテです!』
朝陽志乃
『日向には無理だと思う』
ひなた
『ししししし志乃ぉ!? え、志乃ぉ!?』
なぎ
『ごめん笑った』
星那
『私もだ』
晴香
『志乃ちゃん急に厳しくなっちゃった……笑』
朝陽志乃
『あっ! 違うよ日向!? そういう嫌味みたいなことじゃなくて……!』
朝陽志乃
『駆け引きとか、頭を使ったトークとか、そういうのは向いてないっていうか……!』
朝陽志乃
『日向は日向らしく、思ったままにぶつかったほうがいいと思う!』
ひなた
『志乃……! やっぱ志乃はあたしのことよく分かってるなー! えへへへ!』
青葉
『……おい。これ遠回しに……アレじゃね?』
朝陽司
『言うな昴』
月ノ瀬玲
『これ以上みんなの時間を取るのも申し訳ないし、そろそろ終わりましょう』
月ノ瀬玲
『改めて……本当にありがとう。これだけでいい誕生日になったわ』
晴香
『いえいえー! あ、玲ちゃん! 明日……っていうか今日の放課後空いてる?』
月ノ瀬玲
『ん? 空いてるけど?』
晴香
『それならそのまま空けといてー!』
月ノ瀬玲
『え、なによ』
晴香
『放課後になったときの秘密!』
月ノ瀬玲
『えぇ……分かったわよ。なにかしら』
晴香
『それじゃあね! おやすみ!』
朝陽志乃
『おやすみなさい!』
ひなた
『おやすみです~!』
星那
『おやすみ。良い誕生日を過ごしてくれ』
なぎ
『おやすみ』
朝陽司
『おやすみー!』
青葉
『おつおつ~ん。きっと月ノ瀬は俺の夢を見るんだろうな~! そして学校で俺の顔を見て思わず赤面しちゃうんだろうな~!』
月ノ瀬玲
『見ないわよ』
× × ×
「まったく……本当に賑やかな連中なんだから」
転校する前まで、友人と呼べるような存在がいなかった私は……誕生日をお祝いされたことなんてなかった。
もちろん両親からはお祝いしてもらえるけれど……。
友人から、というのは今回が本当に初めてだった。
これまで昴や留衣、志乃が誕生日のときもこうしてメッセージを送ってきた。
そして今日は――私の番。
送る側から送られる側になっただけで、気持ちってこんなに変わるものなのね。
やり取りをまた上から見返して……自然と笑みがこぼれる。
転校したのが汐里高校でよかった。
司たちと……出会えてよかった。
これからも一緒に過ごして……また誰かの誕生日をお祝いして……。
楽しい毎日を過ごしていきたい。
楽しい思い出を残していきたい。
この――『素敵な友人』のみんなと。
誰一人欠けることなく、笑い合っていけるのだと。
私は――
私たちは――
そう、思っていた。




