表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
324/483

閑話34 夜LINE㉔【青葉昴・星那椿】

午後八時頃にて。


星那椿

『夜分に失礼いたします。こちらは青葉昴様のアカウントでお間違いないでしょうか』


青葉

『うわビックリした。誰かと思ったら星那さんじゃないですか。なんで俺の連絡先知ってるんですか』


星那椿

『沙夜様から教えていただきました。改めて、本日のお礼を……と思いまして』


青葉

『律儀っすねぇ。別にたいしたことしてないからいいのに』


星那椿

『では……本日は貴重なお時間をいただき誠にありがとうございました。大変有意義な時間でございました』


青葉

『や、やりづれぇぇぇぇ』


青葉

『あの、星那さん?』


星那椿

『はい』


青葉

『もうちょっと砕けた感じっていうか……全然あの、ラフにしてもらっていいですからね?』


星那椿

『ラフ、とは』


青葉

『業務連絡っていうんですか? なんかそんな感じがするので……もっとこう、プライベートっぽくというか……』


星那椿

『申し訳ございません。業務連絡以外で、こうして連絡をすることがないので分かりかねます』


青葉

『え』


青葉

『あー……なんか、うん。すんません』


星那椿

『どうして謝罪を?』


青葉

『キニシナイデクダサイ』


星那椿

『かしこまりました』


青葉

『まぁこっちもありがとうございました。身体も動かせましたし、楽しかったっす』


星那椿

『\( ˙-˙ )/』


青葉

『!!!???』


星那椿

『\(•ㅂ•)/』


青葉

『ちょ、ま、え? え???』


青葉

『どうしたんすか!!??』


星那椿

『いえ◝(⁰▿⁰)◜✧』


星那椿

『ネットで検索したところ、文章に顔文字を使用することで相手にラフな印象を与えられる……と書かれていたものですから( ¨̮ )』


星那椿

『さっそく取り入れていこうかと(°ロ°٥)』


青葉

『ダメだこれ笑うわ。面白過ぎるわ』


青葉

『だとしても選ぶ顔文字のセンスどうなってんだよ。おかしいでしょそれ』


星那椿

『なにか問題でも?(•́⍛•̀ ; ≡ •́⍛•̀; )』


青葉

『腹いてぇ。明日には俺腹筋バキバキになるかもしれない』


星那椿

『腹痛ですか? 腹痛を甘く見てはいけませんよ✧=͟͟͞͞(꒪ᗜ꒪ ‧̣̥̇)』


青葉

『どんな感情だよそれ。てか原因あなたですから』


青葉

『あのですね星那さん。顔文字ってただ使えばいいってわけじゃなくて、時と文章を選ぶっていうか……』


星那椿

『( °᷄д°᷅; )⁾⁾』


青葉

『顔文字だけ送ってくんのやめてください』


星那椿

『((( ; ´•ω•` ; )))』


青葉

『あ、シュンとしちゃった……ごめんなさい』


青葉

『っておい。絶対ちょっと楽しんでるでしょ。なんとなく使い方分かってきたでしょ』


星那椿

『( ; ^o^)アレレレレ…』


青葉

『アレレレレじゃないんですよ』


青葉

『つかやばいって。キャラ崩壊起こしてるって』


星那椿

『顔文字とは奥深いものなのですね。勉強になります』


青葉

『あぁ戻った。マジでよかった』


青葉

『あと奥深くないですから。顔文字のこと奥深いとか言ってるの、星那さんかネット掲示板の連中くらいですから』


星那椿

『今度沙夜様にも顔文字について聞いてみることにします』


青葉

『嬉々といろいろ教えそう』


星那椿

『(;゜ ロ゜ )ナン!( ; ロ゜)゜ デス!!( ; ロ)゜ ゜トー!!!』


青葉

『もう絶対使い方理解してるじゃん。なんですとーとか、絶対星那さんが言わない言葉じゃん』


青葉

『星那さんがネット掲示板の住民みたいになるの嫌なんだけど』


星那椿

『少しお話が過ぎましたね。昴様のお時間を奪うわけにはいかないので、私からは以上になります』


青葉

『あーそっかもう昴様か』


星那椿

『それがなにか?』


青葉

『いや、別になにも』


青葉

『俺から話すことは特にないんで。改めて今日はあざした』


星那椿

『ありがとうございました。では失礼いたします』


青葉

『うっす』


星那椿

『( ゜д゜)ノシ サラバジャー』


青葉

『おい』


 × × ×


「さて。そろそろお風呂掃除をしましょうか」


 スマホをテーブルの上に置き、お風呂場に向かって歩き出そうとすると――


「フフ。椿、なにやら楽しそうではないか」


 自室から出てきた沙夜様にお声をかけられました。

 

「楽しそう……? 私が、でしょうか」

「うむ。それ以外に誰がいるのだ? 楽しそうな顔をしていたぞ」

「楽しそうな顔……」


 とは言われたものの、沙夜様のお言葉を理解することは出来ません。


 そんな私を見て、沙夜様は嬉しそうに微笑みました。


「やはりキミと昴を関わらせて正解だった」

「私と昴様を?」

「ああ。キミたちはよく似ている。大切なもの以外に興味はなく、大切なもの以外に目も向けない。『舞台』外の人間としての役割に徹し、決して表舞台に上がることはない」


 沙夜様の言っていることは間違っていません。


 私は沙夜様に関わるもの以外に興味はなく、沙夜様以外に目を向けることもありません。


 私にとってはこの方こそがすべてであり、関係のないものを気にする理由がないのですから。


 そしてそれは――彼、昴く……いえ、昴様も同じことで。


「だからこそ――キミたちは互いに目を向け合える。『鏡』は自分とよく似ていて、決して目を逸らすことができないものだ」

「……」

「椿、キミの目に青葉昴という男はどう映っている?」

「強い方だと思いますよ。あそこまで自分自身を俯瞰して見られる方はそういないでしょう。それも……あの年で」

「ああ、その通りだ。彼はきっと最後まで道具に徹するだろう。それこそ彼の望みなのだから」


 以前、初めて青葉昴様を見たとき――私は思いました。


 なんて空虚な目をしているのだろう。

 なんて壊れた目をしているのだろう。

 

 それでいて。


 なんて綺麗な目をしているのだろう、と。


 矛盾しているかもしれませんが、私には彼の目がとても綺麗に見えたのです。


 大切な誰かのために道具に徹し。

 大切な誰かのために己を破壊し。

 大切な誰かのために物語を歩む。


 とても素敵なことだと思います。


 しかし――彼の心の奥底には、まだ微かに己という名の灯が宿っています。


 彼を求め、彼を愛する者たち。

 彼を慰め、彼を支える者たち。


 『彼』はまだ――沈んでいない。


 『彼』はまだ――消えていない。


 なにか大きな『きっかけ』があれば……彼はきっと、戻ってこられる。


 今日、彼と過ごしていて改めて理解しました。


 青葉昴という男性は――とても素敵な方なのだと。


 そんな彼を……私のように『成らせる』わけにはいきません。


「椿」

「はい」

「キミに頼みがある。彼にまつわる……()()()()()だ」

「……なんなりと」

「『結末』を変えることはできないだろう。それでも、せめて少しだけでも……」


 昴様。

 

 貴方様が思っている以上に――


 彼らは。

 彼女らは。


 貴方様を願い、求めているのですよ。


「椿、私は」


 沙夜様は――私に告げます。



「彼の描く舞台(物語)を――壊す」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ