閑話25 夜LINE⑱【青葉昴・蓮見晴香】
午後十時頃にて。
青葉
『おいこらてめぇ蓮見』
晴香
『いきなり物騒過ぎない!?』
晴香
『ほんとにどうしたの青葉くん?』
青葉
『どうしたのじゃねぇ!!!』
青葉
『さっきまで司とイチャイチャLINEしてたんだろうが、幸せな気持ちのまま終わらせんぞ!』
晴香
『イ、イチャイチャって……! そういうのじゃなくてただ普通にお話してただけだよ!?』
晴香
『って待って青葉くん、なんで知ってるの? え、あれ?』
青葉
『え』
晴香
『え?』
青葉
『あ、ホントに君ら話してたの?』
晴香
『え、朝陽くんからなにか聞いたんじゃないの?』
青葉
『え、聞いてないよ?』
晴香
『え、なんで分かったの!?』
青葉
『え、勘。またの名を適当』
晴香
『またの名をっていうかもう適当だよねそれ』
青葉
『マジかよいいじゃーん! なんの話してたんだよ~! 教えろよ~!』
晴香
『おいこらてめぇって話しかけてきた人とは思えないんだけど?』
青葉
『俺と蓮見ちゃんの仲じゃん♡』
晴香
『もう……。海楽しみだねって話してただけだよ?』
青葉
『私の水着見て! ってか? お前なら司を悩殺できると思うぜ、うん』
青葉
『なんなら俺が水着選んだるわ! えっーと、胸元大胆に開いたやつ……で検索、と』
晴香
『青葉くん?』
晴香
『セクハラされたってるいるいに言うよ?』
青葉
『ホントすんませんでしたマジでそれだけではやめてください』
晴香
『全力の謝罪だ……!?』
晴香
『えっと……私のことはいいの! それで青葉くんの用事は?』
青葉
『君の声が……聞きたくて。ふっ……』
晴香
『えっと……私のことはいいの! それで青葉くんの用事は?』
青葉
『あれループしてる? 都合よくループした?』
晴香
『用件はなんですか』
青葉
『他人行儀になっちゃった。まぁ冗談はここまでにしていて』
青葉
『おめぇよくもとんでもねぇ兵器送り込んでくれたな』
晴香
『兵器?』
青葉
『あのサラサラロング気だるげるいるいのことだわ』
晴香
『あーそうそう! それ青葉くんに感想聞きたかったんだ!』
晴香
『るいるいどうだった!? 超可愛くなかった!?』
青葉
『おかげさまで超目立って大変だったわ!』
晴香
『おお、さすがるいるい! 磨けば光る原石だからねあの子は!』
青葉
『本人は自覚ゼロだったけどな』
晴香
『やっぱり? 支度してるときずっと言ってたんだよね。わたし絶対似合わないから~って』
晴香
『楽しかったな~! るいるいは普段の姿でも可愛いけど、やっぱりたまにはオシャレさせたくって』
青葉
『バッチリオシャレるいるいだったわ』
晴香
『でしょでしょ! ドキっとした?』
青葉
『ヒエっとした』
晴香
『おかしくない? ヒエはおかしくない?』
青葉
『ったく……お前さ、渚と出掛ける相手が俺って知ってたんだよな?』
晴香
『うん、それはもちろん。それがどうかしたの?』
青葉
『だったらなんであんなオシャレさせたんだよ』
晴香
『どういうこと?』
青葉
『もっと別の機会でいいじゃねぇかって話だよ。それこそお前と遊びに行くときとか司たちとかさ』
晴香
『なに言ってるの?』
青葉
『んだよ?』
晴香
『青葉くんだからじゃん』
青葉
『おん?』
晴香
『ねね、青葉くん』
青葉
『なんですか蓮見さん』
晴香
『細かいことは聞かないから……これだけ質問させて?』
青葉
『嫌です』
晴香
『拒否……!』
青葉
『一個だけな。なんだよ』
晴香
『今日のるいるい、可愛かった?』
青葉
『その質問意味あんの?』
晴香
『あるよ。少なくとも、私にとってはすごく重要だから』
青葉
『そらそうか。お前が時間かけてセットしたわけだからな』
晴香
『そうだけどそうじゃないっていうか……まいっか。それで答えは!』
青葉
『ありゃ完璧に美少女だったわ』
晴香
『おぉ! ほんと!? ちゃんとるいるいのこと見た?』
青葉
『見たから言ってんだろ? これで満足か?』
晴香
『ふんふん、なるほどなるほど』
晴香
『いつものるいるいとどっちが良かった?』
青葉
『おい質問増えてんじゃねぇか』
晴香
『いいじゃんこれだけ! 私と青葉くんの仲……なんでしょ?』
青葉
『ぐぐ』
晴香
『ふっふっふ』
晴香
『それでそれで、どっちのるいるいが可愛かった?』
青葉
『どっちも可愛いかったよ♡』
晴香
『あ、逃げた』
青葉
『やれやれ……蓮見に付き合ってあげたんだぜ? 感謝しろよ?』
青葉
『さーて寝よ寝よ』
晴香
『いや最初に送ってきたの青葉くんだよね!?』
青葉
『うるせぇ! お前のスリーサイズ司にバラすぞ!?』
晴香
『完全にセクハラだ!? というか知らないでしょ!?』
青葉
『100-120-160』
晴香
『誰!?』
青葉
『聞け蓮見』
晴香
『え、なに?』
青葉
『俺に対して余計なことをする必要はない』
晴香
『青葉くん?』
青葉
『お前はお前の欲しいもののために頑張ってりゃいい』
青葉
『いらねぇことは考えんな』
青葉
『以上。おやすみはるちゃん♡』
晴香
『青葉くん!?』
晴香
『ちょっとどういうこと! 青葉くん!』
× × ×
「青葉くん……?」
結局、私が送ったメッセージに既読は付かなかった。
余計なことって……。
お前の欲しいものって……。
それに、いらないことって……。
彼の言いたいことがすべて理解できるわけじゃない。
彼はいつも自分の中で考えて、勝手に正解だと決めて、私たちには……なにも話してくれない。
私……ううん、るいるいたちの言葉が届いているのかも分からない。
青葉くん。
あなたは部外者でも、無関係の人でもなんでもない。
私は……みんなが大好きで、みんなに笑顔になってほしい。
私が欲しいものは、みんなと笑顔で過ごせる毎日。
その中には……もちろん。
あなたもいるんだよ。
あなたは私を助けてくれた。
励ましてくれた。
前に進む勇気を、向き合う勇気を――あなたはくれた。
例えそれが、すべて打算的なものだったとしても。
私は……すごく嬉しかった。
ねぇ、青葉くん。
あなたは――『どこ』にいるの?




