閑話18 夜LINE⑫【青葉昴・朝陽司】
午後九時頃にて。
青葉昴
『司きゅーん! 起きてるー?』
朝陽司
『寝てる』
青葉
『よっし。お前が寝てる間に月ノ瀬にあんなことやこんなこと言ってやろっと』
青葉
『まずはお前の生着替え写真を送ってと……』
朝陽司
『おいやめろ! 起きてる! 起きてるから! てかなんでそんなの持ってるんだよ!』
朝陽司
『なんで既読付かない!? お前まさかホントに送ってるのか!?』
青葉
『あ、わり。送っちゃったZE(@’ω’@)』
朝陽司
『おい嘘だろ?』
青葉
『嘘なんだZE(๑´ڤ`๑)テヘ♡ 』
朝陽司
『…………志乃に色々言いつけてやろ』
青葉
『ホントにすみませんでしたそれだけはマジでやめてくださいあと色々って適当すぎだろ!!!』
朝陽司
『お前なぁ……。で、なんだよ』
朝陽司
『渚さんとの恋愛相談か?』
青葉
『お前それ本人に言ったら、五十メートルくらい助走付けてぶん殴られるぞ』
朝陽司
『渚さんへの風評被害』
青葉
『ほら、お前ら昨日三人でデートしてただろ?』
朝陽司
『デート……?』
青葉
『そこに疑問を抱くなアレはデートなんだよ!!!』
朝陽司
『お、おう』
青葉
『んで、どうだったんだよ?』
青葉
『告白した?』
青葉
『告白された?』
青葉
『ねぇねぇねぇ』
朝陽司
『なんだコイツ』
朝陽司
『別にお前が期待してるようなものはないっての』
青葉
『んだよつまんな』
朝陽司
『昨日の件についてなんだけど、昴』
青葉
『?』
朝陽司
『お前に伝えておかないといけないことがある』
朝陽司
『本当はテストが終わってから伝えようと思ったんだけど……大事な話だから今言っておくことにした』
青葉
『え、なんだよ』
青葉
『怖くなってきた』
朝陽司
『単刀直入に言うぞ』
朝陽司
『有木さんと会った』
青葉
『は』
朝陽司
『有木恵麻。覚えてるだろ? 小学生のときクラスメイトだった』
青葉
『おい』
青葉
『間違いなくあの有木恵麻なのか』
朝陽司
『うん。会って、話した。そのあたりは明日以降また話すよ』
青葉
『司』
朝陽司
『分かってるよ』
青葉
『え?』
朝陽司
『連絡先は聞いておいた』
朝陽司
『会いたいんだろ。有木さんに』
青葉
『ああ』
青葉
『正直、顔はハッキリ覚えてないが……絶対に会わないといけない』
青葉
『帰って来てたんだな、アイツ』
朝陽司
『去年戻って来たみたいだよ』
青葉
『そうか』
青葉
『教えてくれて助かった。すまねぇ司』
朝陽司
『気にするなよ。有木さんも今のお前がどんな感じなのか気になってたようだし』
朝陽司
『だけど、会うとしてもテストが終わってからな。有木さんの迷惑になる』
青葉
『もちろん』
朝陽司
『お前、急にしおらしくなったな。さっきまでのあのウザさはどこにいったんだよ?』
青葉
『ほっとけ。今動揺してんだよこっちは』
青葉
『出てくる名前が予想外過ぎるんだよ』
朝陽司
『とりあえず有木さんには俺から連絡取っておく』
青葉
『頼んだ』
朝陽司
『昴』
青葉
『なんだよ』
朝陽司
『あまり自分を追い詰めすぎるなよ』
朝陽司
『今のお前には、ちゃんと自分を見てくれる人が、見ようとしてくれる人がいるんだからな』
朝陽司
『お前の感情はどうであれ、その事実はちゃんと受け止めておけ』
青葉
『んな物好きなヤツいるのかね』
朝陽司
『分かってて言ってるだろ? 名前出したほうがいいか? 試しに二人くらい』
青葉
『へいへい、もうやめてくれって。俺が悪かったよ』
青葉
『ご忠告どうも』
朝陽司
『そういうわけで。まずは俺らもテスト頑張ろう』
青葉
『だな。いろいろ手間かけさせてすまねぇ』
朝陽司
『いいんだよ。あとで借りをたっぷり返してもらうからな』
青葉
『ちゃっかりしてんなぁ』
朝陽司
『それじゃあな、また明日も勉強会よろしく!』
青葉
『はいよ。またな』
× × ×
「有木……恵麻……」
小学生四年生の始めに転校していった女子。
友達が少なくて、大人しくて、いつも端のほうにいるようなタイプ。
成績が良くて、先生から褒められていた……ような気がする。
――んなことはどうもでもいい。
俺はただ。
アイツに会わなければならない。
重要なのは――それだけだ。