5話 こじらせ達の聞き込み調査
「すみません。新聞部です。ちょっとお聞きしたいのですがお時間宜しいでしょうか?」
次の日の放課後、俺は白雪に言った通り新聞を作成するため、聞き込み調査へと繰り出していた。
正直、俺自身も全くの他人に話しかける行為はあまり好ましくないが、流石に白雪ほどではない。
一応、最初は白雪にもついて来て貰い、俺だけじゃ考えられない質問を考えてもらい、聞き込みをすることにしたのである。
「うん? 新聞部なんてこの学校にあったっけ?」
「実は今年から新しく創設されたんですよ」
今、俺は廊下を行く文化部らしい男子生徒に話しかけることに成功していた。
「いいよ」
「ありがとうございます! では早速質問させていただきます」
俺がそう言うと後ろの白雪からサッとメモを渡され、質問事項を頭に入れる。
「最近、学校内で何か困ったこととかってありますか?」
「学校内で困ったこと? う~ん、特に無いかな~」
「では質問を変えます。最近、学校内で流行っていることとかって何かありますか?」
「学校全体で流行ってるかは分からないけど、僕の周りでは共円って遊びが流行ってるかな」
「共円? どんな遊びですか?」
「まず格子点があるノートを用意して、四人くらいで順番にそのノートに点を打っていくんだ。それで同一円周上に3点までしか書いちゃダメってルールで、同一円周上に4点目を書いた人が負けってゲーム」
うん、知らない。あまりにもニッチ過ぎる。
「どこの部活に所属してます?」
「数学研究会だよ」
うん、だと思った。流石に学校全体で流行っていることでもないし、これは書けないな。
「なんか他に学校で気になる噂とかってありますか?」
「何かあるかな? あっ、そういえば最近入学した子の中に滅茶苦茶可愛い子が居たって聞いたな。確か白雪姫とかいう名前……」
「ありがとうございました! 失礼いたします!」
後ろから流れる不穏な空気を察知した俺は咄嗟にその数学研究会に所属する男子生徒に感謝を述べると、足早にその場を立ち去る。
「全然有益な情報、手に入らなかったな」
「そうですか? 共円という遊び自体は楽しそうでしたけれどね。要は四点を結んで等脚台形や長方形を作らない様にすれば良いのでしょう?」
何か理解している人がここにいらっしゃるんだけど。数学がそこまで得意ではない俺からすればそんな単語を聞くだけで憂鬱になってくる。
「やっぱり今の時間帯ですとなかなか校舎内ではお手頃な人に出会えませんね」
「だな」
俺も白雪も極度の人見知りであるため、単独行動をしている生徒を探しているわけだが、なかなかそんな人は見つからず、すれ違う大半の生徒が数人で行動している。
「こりゃあ二人とか三人もターゲットにするしかないか」
「えぇ……仕方ありませんか」
それから俺達は単独行動をしている生徒だけでなく三人までのグループの生徒たちにも声を掛けるようになった。
「最近、学校で気になってることは?」
「入学してきたって噂のめっちゃ可愛い子かなって君めちゃくちゃ可愛くない!?」
「最近、学校で気になってることは?」
「白雪姫って呼ばれてるすげー可愛い子の事かな? てかそっちの子すんごいタイプなんだけど! え、連絡先……」
「最近学校で気になってることはッ!?」
「え、えー白雪姫の事とか?」
――――――
――――
――
「なあ、お前人気者すぎだろ」
部室へと戻り、開口一番に俺はそう告げる。誰に聞いても一番最初に出てくるのは白雪姫の事である。
流石に本人を前にして続きを聞くことはできなかったため、質問しては逃げてを繰り返す羽目となっていた。
「――だから男の人は嫌いなんです」
好奇の目に晒されるのがこんなにも嫌な気持ちになるのだということを初めて知った。
承認欲求が強いのならばまだしもそうでない者からすればかなりのストレスとなる。
今も机の上でぐたりとしている白雪を見て初めて同情する。
「それもこれもあなたが男の人にしか話しかけないからこうなったんです」
「仕方ないだろ? 俺が女子に話しかけたら気持ち悪いとかセクハラとか言われて詰むんだから」
「考えすぎです」
「いや、分からないぞ。最近は特に」
俺も俺で女子生徒に話しかけようとしないため、白雪の被害がこうも拡大してしまった。
中には白雪に対して連絡先を聞いてくるような輩まで発生していたのである。
「新聞のネタ探しって難しいな。こうなりゃ白雪姫の記事を書くしかないのか? ちょうど本人が居るわけだし」
「冗談でも許しませんよ」
「ごめんなさい」
とはいえ書く物が無いのは事実である。本来なら水曜日の朝、つまり明日の朝には掲示板に貼らないといけないんだけど、こりゃ間に合わなさそうだ。
ていうかせめて毎週一冊にしてもらわないと無理だな。
「取り敢えずあまっちゃんに交渉して毎週月曜日だけにしてもらうか。こんなんじゃ週二日は不可能だ」
「ですね」
そうして俺達はあまっちゃんの下へと向かい、新聞の掲示を週一日だけにしてもらうのであった。
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