サムスト運営委員
少年とバトナーになることを決意したまさるは相性度を計測するため、サムスト運営委員が所属している建物に案内された。
サムスト運営委員の建物はトーナメント会場を挟む形で二つに分かれている。左側の建物は会議や事務などのトーナメントを運営するための建物である。右側の建物は参加者の控え室やトレーニングルーム、食堂などが完備されている。
今回案内されたのは左側の建物の2階にある測定室である。
「では、お二人の相性度を測る前に軽くサムストについて説明させていただきます。まずサムストに参加するためには、バトナーを組んでいだだく必要があります。なおかつ相性度が80%以上必要になってきます。」
「電柱に貼ってあったチラシには相性度とか書いてなかったですけど」
「チラシはあくまで参加者を集めるために書いているので。細かくは書かれていないのですよ。」
くすくすと笑う山田に対し、怒りが込み上げてくるがどうにか抑え込む。おほんと咳払いをし、山田は話を再開する。
「まぁ、相性度が80%以上なかったら参加出来ませんので、とりあえず測定しましょうか。おふたり共、そちらの機械に1人ずつ入って頂けますか」
山田が指さした機械は酸素カプセルのような蓋付きのベッド。少年が先に行くかと少し待つが動く気配がないため、まさるからカプセルの中に入る。中に入ると蓋が閉まり、小窓がないため視界は黒に染まり外の状況が一切分からなくなる。
「心拍数が早いですねぇ、緊張してますかぁ」
頭上から山田の声が聞こえ、一瞬びっくりするが聞き方に悪意があったため返事はしなかった。
「はぁい、終了です。お疲れ様でした。次は君が入ろうね」
促されるままに交代で少年がカプセルの中に入る。
「あの子には名前が無いのか?」
「あるとは思うんですけどねぇ。答えてくれないんですよ。」
少年は道端で死にかけていたのをサムスト運営委員の人が見つけ、保護したらしい。本人の意思でトーナメントに参加することにはなったらしいが、保護された日から一言も喋らないそうだ。
「良かったら、まさるさんからも名前聞いてあげてください。」
カプセルの蓋を上げながらそう答える山田。確かに名前が分からないとトーナメント中とか少し不便だ。そういえば出会ってから声をかけていなかったなとカプセルから出てくる少年に声をかける。
「お疲れ様。これからバトナーになるかもしれないっていうのに自己紹介を忘れていたね。僕はまさる、君のことはなんて呼べばいいかな」
できるだけ目線を合わせるようにしゃがみながら、ゆっくりと聞き取りやすいように声をかける。
「まさる……名前……」
初めて聞いた少年の声は酷くかすれていたけど、耳が聞こえないとか喋れないというわけではないようで少しほっとする。
「そう、僕はまさる。君の名前はなんていうのかな」
「……名前……ない」
「……そっか。君のこと僕が呼びたいように呼んでもいいかな。例えばカゲとか」
最初出会った時、山田の影に隠れていたから"カゲ"なんて少し安直すぎるかな。
「カゲ、かっこいい」
そんな安直な名前でもかっこいいと言ってくれる。
なんて優しいんだ。
「気に入ってもらえてよかったよカゲ。これからよろしくね」
自己紹介を終え、2人は握手をする。
握ったカゲの手は少し力を入れただけで折れそうで、まさるはこの子も残酷な世界で生きてきたんだなと少し悲しくなった。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
言い回しの引き出しが少なすぎて、頭パンクしそうです(๑_๑;)