出会い
まさるは電柱に貼られている"サムスト"の参加者募集チラシに目が釘付けであった。
「俺もサムストに参加したいな」
しかし、まさるには参加条件であるバトナーがいない。
「はぁ……バトナーが降ってくればいいのに……」
半ば投げやりにそう呟き、バトナーが降ってくるはずのない空をぼうっと見つめる。
「あなたサムストに興味があるのですか」
空を見上げるまさるに、背後から声がかかった。
振り返るとそこには分厚い眼鏡をかけ、髪はビシッと七三分けにしているスーツを着た男性が立っていた。
「私はサムスト運営委員会の山田と申します」
「私がバトナーを提供致しましょうか」
人の良さそうな笑顔で問いかける山田に、まさるは少し警戒心を抱く。
「なぜ、後ろの少年に靴を履かせてあげないのですか?
私はあなたが信用出来ない。」
山田と名乗る彼の後ろには、身長140cmくらいの子どもが立っていた。ボロボロの服を身にまとい、靴は履いておらず、むき出しの足は少し血が滲んでいた。
「この子はいわば商品です。この子にお金をかけるのは…
そうですね、こちらに利益があるとわかった時でしょうか」
笑顔を崩さず、淡々と答える山田に警戒よりも怒りが勝つ。
見た目からして山田と後ろの少年は血縁関係ではないはず。
誰かから預かっている子では無いのであろうか。
「この少年は自ら私のところに来て、大会に出たいと志願したのです。であれば私がこの少年にできることは、大会に出られるようバトナーを提供してあげることだけです。」
「俺が断ればとは考えなかったのですか」
「それはないでしょう。何故ならばあなたには守るべき、救うべき妹がいるのですから。あなたは妹を見捨てられないでしょう」
全てを見透かすかのような目が嫌で、まさるは顔を山田から逸らす。
きっと全てを調べてから接触してきたのだろう。妹のことはもちろん、家庭の事情もきっと調べているはず。
ふとまさるは山田の後ろの少年を見る。まだ小学生であろう少年は生気を宿さない目でぼうっと空を見上げていた。その姿を見て昔の無力な自分を思い出す。自分を変えたいと望みながら、何も出来ず大切なものを全て失った自分を。
「分かりました。この子のバトナーになる件、お受けします。」
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