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図書館での再会?

エトルタにある図書館にやってきた。


受付でお金を払って中に入ると何段にも積み重なり一面を囲む本棚とぎっしり詰まった本の数々が視界に入ってくる。

NPCの男性が長い木製のはしごをかけて、数人にはしごを支えてもらいながら上の方の本を取っているのが見えた。


明らかに不便だがこれこそファンタジーといった図書館だ。


プレイヤーには多少優しくなっているようで、中に入ると本のジャンル分け一覧がウィンドウで表示される。


近隣の魔物図鑑やらはじめてのまほう、なんて本もある。

その中で、気になる本を見つけた。


『あなたの種族がよく分かる本』


図書館にきた理由のひとつが種族関係の本だ。

もしかしたらドッペルゲンガーの能力の使い方についてもっと何かが分かるかもしれない。



本を開くと、ど真ん中に『ドッペルゲンガー』とだけ表示されていた。

タイトルの通り、自分の種族のことしか知ることはできないようだ。


私は近場にある椅子に腰かけて、本を読み始めた。



『ドッペルゲンガー』


ドッペルゲンガーのルーツは魔人にあるとされている。

力を持たず、ひ弱な魔人が種を存続させるために擬態という能力を手に入れたというのが俗説だ。

だが擬態という能力は平和な時代が続いたため、年月を重ねるたびにその力を失っていき、現在のものになったという研究者もいる。


自分の姿をしたドッペルゲンガーを見たら死ぬという伝説がある。

それはドッペルゲンガーという種族がそれほど恐ろしい存在であったことの証左であると種族研究の第一人者『ルガ』は結論づけた。

擬態という能力は、敵から隠れるためだけじゃなく、獲物を狩るために使っていて、その能力は未知数であると、もし、現代のドッペルゲンガーが種族として進化することで過去の力を身につけることができれば、答え合わせができるだろう。



……なんか見覚えのある名前だ。


『ルガ』、話に出てきたその名前は私のチュートリアルを担当した人と同名だ。


これはルガさんからのヒントなんだろう。

ドッペルゲンガーの種族進化とやらの。


未だに活躍を見せていないこの能力だけど、進化先があるのは確実だ。

そう考えると、モチベもうなぎ登りだ。


ドッペルゲンガーについて書いているのはこれだけで、次のページは白紙になっている。


これから、どうしようかと考えていると白紙のページにテキストカーソルが現れる。

細い縦線が点滅していて、そして白紙のページに文字を刻み始めた。


『こんにちは。リンクス。ルガだ』


まさかの本人登場に、驚き目を見張る。


『活躍は見守っていたよ。まさにドッペルゲンガーの星だね。優秀なキミに助言を上げようと思って、コンタクトの機会を伺っていたんだ』


『できることなら与えられるものならなんでもあげたいのだが、貴女が思っているものを一つでも上げたらバランスが崩壊するとフィリス様から釘を刺されてしまってね。進化の一つでもさせてあげれば良かったが。まあ、第二陣の最速ボスクリアだとか、ドッペルゲンガーでの初めてのソロボスクリアだとか、色々理由をつけて助言ぐらいならしてもいいってことになった。一応、監視もついてるから変なことを言うと検閲されて見えなくなるからセーフな範囲で一つだけ』


『どんなに不遇だとしても使いようのない能力なんてない。進化しなくても、きっとキミになら使いこなせる。そしていつかドッペルゲンガーの仲間が増えたときにはキミが道しるべになってあげるんだ。じゃあね」


最後の一文字を読み終えると、本が手から消える。


一瞬の出来事、だが今の私はルガさんの言葉が頭から離れなかった。


『どんなに不遇だとしても使いようのない能力なんてない。進化しなくても、きっとキミになら使いこなせる』


ステータスを見る。

1度もまともに使っていない『擬態』の文字。

使いようのない能力はない、とルガさんが言った。

それは言葉の通りに捉えればいいのか、それとも……別の使い道があるのか。


私はルガさんの言葉の真意を確かめるために、図書館を急ぎ足で出る。


私はこのドッペルゲンガーという種族のことを全然知らない。


使いようがないわけじゃないが、ただただ弱い種族だと認識していた。


今のままでの可能性を考えていなかった。


プレイスキルがあるから大丈夫だとか、私はぜんぜんこの種族を活かす方向に思考を働かせていなかった。


掲示板で見聞きしただけのことで、諦めていた。


____それは『リンクス』にとってあまりにも失礼なことじゃないか?


ルガさんの言葉で気づいた悔しさをかみしめながら、私は誰もいない海岸へと走った。

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