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パペットの調教を済まし、取りたかった『火魔術師』と『パリィ』スキルはほとんど作業で手に入れることができた。


火魔術師は火魔法の威力を上げてくれるスキルでメイン火力を上げる手段、パリィは薄い防御を補う方法で、どちらも取得方法は楽な部類だ。


火魔術師は火魔法で100体のモンスターを倒す、パリィは相手の攻撃に武器や盾を合わせて攻撃を弾く。

どちらも楽に手に入れることができた。


スキルを取得した私は宿屋でログアウトをする。


流石に今日は切り上げだ。

SLOを落とすと意識がリアルに浮上して、ヘッドギアを外した。


真っ暗な自室で軽く手を振ると、部屋の電気がつき、ぐっと伸びをする。


……お腹空いた。

時刻は午前3時。これでもまだ早めだと感じてしまうのは大学生に毒されているからだ。


何か食べるか。


部屋を出て、リビングへ向かうとリビングの電気がついていた。

扉を開けると、良い匂いが充満していて、カップラーメンをすすっているその人に声をかける。


「姉さんも夜食?」

「ん?ああ、日色か」


姉さんがラーメンをもぐもぐしながら、返事をする。

行儀が悪いからやめてほしい。


「こんな時間までやってたんだ」

「……まあね」


視線を冷蔵庫に向けながら返事をすると、視界の隅に姉さんのにやにや顔が見える。


「なに?」

「いやぁ、ハマらせちゃったなぁって」


してやったりなしたり顔が腹立つけど、実際ハマったのは間違いない。


何もなかった日常に、色が戻ってきたような感覚が心をずっと揺さぶっている。


「どこまで進んだの?」

「エトルタ」


「早すぎない?」


「そう?」


「いくらゲーム内で時間がゆっくり進むって言っても流石に早すぎるから!」


ツキノさんにも言われたけど、やっぱりほぼ初日での草原突破は早いらしい。

正直、あれは運もあったと思う。


「運が良かっただけだよ」


「あんた、何事も器用にこなすタイプだけどゲームでもそうなのね」


若干あきれ顔の姉さんが、ため息をつく。

そして笑みを浮かべた。


「たのしい?」


その問いに、照れくささを覚えながら「うん」と呟く。


姉さんは嬉しそうに笑みを浮かべた。


「そういえば日色、フレンド交換しようよ」

「いいけど」


スマホを開いて、SLOのアプリと連動させればスマホでもフレンド交換ができる。

ただそれを手で止めたのは姉さんだった。


「いやいやいや、どうせならSLOで会って交換しようよ!」

「えぇ……私、これから寝ようと思ってたんだけど……」


「なら明日!」


そう言われて、しぶしぶ頷くと姉さんが嬉しそうに跳ねる。


姉さんはその勢いでカップラーメンのスープも全部飲み干して、「ギルドメンバーを待たせてるから私はゲームに戻るね!」と走って部屋に戻っていく。


騒がしい姉に、私は呆れながら何か食べようと冷蔵庫を漁った。


◆◆◆


夜食を食べて部屋に戻る。

ベッドに寝転がり、うとうとしながらも動画投稿サイトMetubeを開いて、SLOで検索する。

するとたくさんのライブ配信が表示される。


やっぱり人気らしく、1番人気の配信では同時接続数が6万近い。

そんな配信で気になるものを探していると『腐乱研究会』の文字が見えた。


腐乱研究会、それはツキノさんが参加しているギルドだったはずだ。

有名ギルドなのか、同時接続数は2万人。

気になって、配信を見てみる。


配信画面には大槌を持ったツキノさんが映っていて、酒場のようなところで木のコップを持って、雑談をしている。


知っている人が配信に映ってるのは変な気分だ。


どうやら攻略というよりは雑談メインらしく、ギルドホームで配信しているらしい。


ギルドホームなんてあるのか。


……でも、なら見ないでもいいかな。

画面を閉じようとすると、『お待たせー!』と何やら聞き覚えのある声が聞こえてきた。


『遅いですよ。()()さん』


モチと呼ばれたのは女性だ。

リアルモジュールの見覚えのある元気な女性は、ツキノさんの言葉ににこにこと笑っている。


『みんなごめんねー!夜食食べてた~。カップラーメン!』

『食テロやめてください』


モチが登場して加速するコメント欄。

そしてそのコメントの内容から察せるのは、彼女が腐乱研究会のギルドマスターということで、そんなギルドマスターとやらは先ほどまで私と話していた姿ほぼそのままで頭を抱える。


「なにやってんだ姉さん……」


腐乱研究会のギルドマスター、私の姉は私をあざ笑うかのようにからからと笑った。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ゲームを楽しそうにしている所 [一言] VRゲームものが好きなので、楽しみにしております
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