9 由奈ちゃんの心配
とか思っていると、由奈ちゃんは私と綾芽の制服の袖を両手でそれぞれキュッと掴み、
真剣な顔つきで言った。
「私、しぃちゃんや綾芽ちゃんの詳しい事情はわからないけど、
くれぐれも危ないお仕事はしちゃダメだよ?
二人は私の大事な大事なお友達なんだから、そんな二人が大けがしたり、
その、死んじゃったりしたら、私、私・・・・・・」
そう言って由奈ちゃんはうつむいて言葉を詰まらせる。
そんな由奈ちゃんを見て私と綾芽は慌てて声をかける。
「だ、大丈夫よ由奈ちゃん!
この前のは本当に特別な状況だっただけで、普段はそんな危ない仕事とかはしないから(多分)!」
「そうですよ由奈さん!私たちの仕事は本来そんなに危険なものじゃないんですよ?
せいぜい銃や刃物を持った男をぶっ飛ばしたり、
麻薬の密売組織をぶっ潰したり―――――モガガッ」
おバカな事を口走る綾芽の口に、私はウサギの形にカットされたお弁当のリンゴを突っ込み、
由奈ちゃんにこう続けた。
「と、そんな映画みたいな危険な仕事は絶対しないから、安心して?ね?」
「うん・・・・・・」
由奈ちゃんは頷いたが、それで心配が消えた訳ではないというのは、私の目からもはっきりとわかった。
胸の中がギュウッと締め付けられるように痛んだけど、
それ以上由奈ちゃんの心配を和らげるような言葉が、私の頭には浮かばなかった。