7 泣くほどウマイお弁当
その日の昼休み、私は由奈ちゃんと屋上のベンチに座り、
一緒にお昼ご飯を食べる事にした(ちなみに綾芽も一緒だ)。
由奈ちゃんは私と綾芽のために二段重ねの重箱にいっぱいのお弁当を用意してくれて、
その中にはフワフワに焼き上げられた卵焼きに、
可愛く作られたタコさんウインナー、
色鮮やかなサラダや様々な具の入ったおにぎり等、
どれもおいしそうでたまらないものばかり入っていた。
それを目の当たりにした私と綾芽は感動の声を漏らす。
「うわぁ、おいしそう・・・・・・」
「凄いですね!これ全部由奈さんが作ったんですか?」
「私はちょっとお母さんを手伝っただけ。
でもこの卵焼きは私が作ったんだよ?ちょっと自信あるんだ」
そう言って得意げな笑みを浮かべる由奈ちゃん。
さっそくいただくと、口の中にほのかな甘みとフワフワした食感が口いっぱいに広がり、
まるで由奈ちゃんの甘くてフワフワした可愛らしい気持ちがそのまま私の中に入って来るようで、
胸の中が幸せな気持ちでいっぱいになった。
そして心の中からあふれた幸せな気持ちが涙となって目からにじみ出てきた。
「う・・・・・・く・・・・・・」
「え?し、しぃちゃんどうしたの⁉泣くほどおいしくなかった⁉」
「違うよ、その逆。とってもおいしくて涙が出ちゃったの」
「そんなぁ、大袈裟だよぉ」
私の言葉に由奈ちゃんは照れ臭そうに笑う。
そしてその隣では、綾芽が大泣きしながら由奈ちゃんの卵焼きをバクバク口にかき入れていた。
「大袈裟なんかじゃないですよバクバク!
こんなおいしい卵焼きモグモグ!
食べた事ムシャムシャ!
ありませんゴックン!」
「ちょっと綾芽!あんた由奈ちゃんの卵焼きばっかり食べてんじゃないわよ!
私の分がなくなるでしょうが!しかも食べるか喋るかどっちかにしなさいよ!」
「モシャモシャ!」
「食うんかい!」
などと私と綾芽が言い合っていると、由奈ちゃんはニッコリ微笑んで言った。
「こんなにおいしそうに食べてもらえて私も嬉しいよ。明日はもっといろいろ作ってくるね」
明日も由奈ちゃんの手作りお弁当を食べられる。
そう思うと、私は明日への希望が湧いてきた。
すると由奈ちゃんはそんな私に尋ねる。
「ところでしぃちゃん、高校での部活はもう決めた?
私はまた家庭科部に入ろうと思うんだけど、しぃちゃんはどうするの?」
「部活かぁ、私もまた家庭科部に入りたいなぁ」
まあ私が中学の時家庭科部に入ったのは、
単に由奈ちゃんと同じ部活がいいからというだけの理由だったんだけどね。
特にやりたい事がある訳じゃない私には、その理由が一番大事なんだ。
と、そこに、綾芽でも由奈ちゃんでもない人物が口を挟んできた。