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シティーガールハンター2  作者: 椎家 友妻
第一話 新しい生活と狩人の相棒
3/37

3 園真探偵事務所の朝食

 そして何とか朝食の席に着く園真会長と綾芽と私。

さっきちょっとした修羅場(しゅらば)が発生したけど、それはこの朝食の席でも発生する。

その修羅場の原因は言うまでもなく園真会長と綾芽で、

二人は毎朝、本当にささいな事でケンカを始めるのだ。

今日の朝食のメニューは焼鮭定食だったんだけど、その鮭が原因で、今日はケンカが勃発(ぼっぱつ)した。

まず園真会長が自分の鮭と綾芽の鮭を見比べて言った。

 「ちょっと、あんたの鮭の方が私の鮭より大きいんじゃない?

私はこの事務所の代表なんだから、あんたの鮭と取り換えなさい」

 それに対して綾芽は自分の鮭の皿を背後に(かく)し、思いっきりアッカンベーをしてこう返す。

 「イヤですよーだ。私は食べざかりの育ちざかりなんだから、

むしろ况乃さんの鮭を半分私に寄こしてしかるべきです」

 「ほほう、随分(ずいぶん)ナメた口を聞くようになったわね綾芽。

あんたの主人が誰なのか、今一度ここではっきりさせてあげようじゃないの」

 「いいですよ。私もいつまでもあなたの都合のいい飼い犬じゃないって事を、この場で分らせてあげますよ」

 そう言って立ち上がり、憎悪(ぞうお)に満ちた視線をぶつけ合う園真会長と綾芽。

この二人はどうにもソリが合わないらしく、事あるごとにこんな感じでケンカを始めてしまう。

こんなんでよくコンビを組んで仕事をしているものだと思うけど、

そこはビジネスとして割り切っているのかしら?

しかしこのままケンカを勃発させるとこっちの朝食まで被害が及びかねないので、

私は立ち上がって二人の仲裁に入ろうとした。

が、その時、

 バァン!とキッチンのドアが乱暴に開け放たれたかと思うと、

そこに若い男(二十歳くらい?)が現れ、綾芽の姿を見るなり叫んだ。

 「見つけたぞシティーガールハンター!てめぇよくも俺の組織を(つぶ)してくれやがったな!

ぶっ殺してやるから覚悟しやがれ!」

 そして男は両手で拳銃を構え、それを綾芽に向けた!

ちょっとちょっと何なのよいきなり⁉

組織を潰したとかぶっ殺すとか、大層おだやかじゃないんだけど⁉

 パニックに(おちい)る私に構わず、園真会長は瞬時にさっきの拳銃を取り出し(デザート何とかだっけ?)、

さっきと同じく何の躊躇(ちゅうちょ)もなくその引き金を引いた!

 ドゴォン!

 そしてさっきと同じく凄まじい銃声が響き、男の拳銃が文字通り吹き飛ばされた。

 「ぎゃあっ⁉」

 その衝撃に男はそう声を荒げてよろめく。

と、次の瞬間綾芽が一足飛びで男の目の前まで間合いを詰め、

強烈な右ストレートパンチを男の額にお見舞いした。

 ボゴォッ!「ぐへぇっ⁉」

 男はそのまま仰向けに倒れる。

そして綾芽はまだ宙に舞っている男の拳銃を(つか)み、その銃口を男の口の中にねじ込んで言った。

 「私は今猛烈に機嫌が悪いんです。

あなたの組織を私が潰したかどうかは覚えていませんが、とりあえずここで死んでもらえますか?」

 何か究極におだやかじゃない事言ってるんだけどあの子⁉

あれは止めないとまずいんじゃないの⁉

とハラハラしていると、

「待ちなさい!」

と、園真会長が声を荒げた。

よかった、さすがに園真会長もこれはまずいと思ったのね。

私が少しホッとする中、園真会長は綾芽の元へ歩み寄り、

綾芽を止めるのかと思いきや、自分の拳銃を男の額に押し付けて言った。

 「私の方が機嫌が悪いのよ。だからこの男は私が殺すわ」

 あの人も綾芽と同類だったーっ!

 「んもががーっ⁉」

 二人の殺人鬼に拳銃を押しつけられ、恐怖にうめく男。

両足をジタバタさせるが、綾芽が馬乗りになっているので動けない。

どうやらあの男は、以前綾芽が潰した悪の組織の生き残りか何かみたいだけど、

むしろ悪の組織なのはこちら側で、あの男の方がかわいそうに思えてきた。

 とりあえずこのままだと本当にあの男は三途(さんず)の川への乗船券をゲットしてしまうので、

私は慌てて二人を止めた。

 「二人ともストーップ!何て事してるんですか!その拳銃を引っ込めて!」

 すると園真会長と綾芽は私の方に顔を向け、まだ怒りが治まらない様子で言った。

 「どうして止めるの?この男は以前、綾芽が壊滅させた麻薬グループの生き残りよ、多分(多分て何だ!)。

その逆恨みでこうしてやって来た訳だから、返り討ちにあっても文句は言えないはずよ」

 「そうですよ、以前私が潰したような気がする(記憶があいまいだな!)悪の組織の人間なんだから、

ここで死んでも誰も悲しみませんよ」

 ダメだ、この二人は倫理(りんり)というものが絶望的に抜け落ちている。

ここは私がしっかりしないと。

そう思った私は負けじと園真会長に訴える。

 「とにかくそれでも人殺しはダメですよ!

ここは警察を呼ぶなりしてこの人を捕まえてもらいましょう!」

 それに対して園真会長。

 「あら、知らないの詩琴?

この世に害しか及ぼさないどうしようもないゴミクズ同然の男は、

殺して生ゴミの日に出しても罪にはならないように法律が変わったのよ?

私の法律が」

 「あなたの法律に従っちゃダメでしょ!日本の法律に従ってください!」

 必死に(うった)える私に、綾芽は軽い口調で口を挟む。

 「詩琴さんって、結構マジメなタイプなんですね」

 「毎日ちゃんと予習復習する子みたいに言うな!

とにかく人殺しはダメ!今すぐ二人とも銃をしまいなさい!」

 半ばヤケクソでそう叫ぶと、園真会長と綾芽はシブシブ拳銃を男から離した。

ちなみにその男は、恐怖のあまりに口から泡を吹き、

(また)の間はお()らしでビショビショになっていた。

 もう、朝から最悪だ・・・・・・。



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