1 彼女が黒幕?
翌日の月曜日、柊さんの元に、再び殺人予告状が届いた。
日時は次の木曜日の夕方五時。
今度はこちらから柊さんの元にお伺いしますとの事。
今回も丁寧な文体で予告状はつづられていた。
その日の放課後、この前と同じ資料室に集合した私と綾芽と園真会長を前に、
柊さんはきっぱりとした口調で言った。
「私も行きます」
「ええっ⁉それはダメよ!
この殺人予告状が本物だとわかった以上、絶対に柊さんを殺し屋に会わせる事はできないよ!」
私は慌ててそう言ったが、柊さんは強い口調でこう返す。
「だからこそよ!本物の殺し屋が襲ってくるって分かった以上、
習志野さんや花巻さんをこれ以上危険な事に巻き込みたくないの。
それにこの殺し屋に依頼した人にも頭にくるし!
コソコソ他人なんかに頼まないで、殺したい程憎いなら、直接私を殺しに来ればいいのよ!」
おお、柊さんが本気で怒っている。
普段は人当たりがよくて優しい感じだけど、怒る時は結構激しいのね。
しかも友達が危険な目にあう事にこんなに怒るなんて、柊さんは本当にいい人なんだな。
なんて感心していると、園真会長が立ち上がって言った。
「まあ、殺しの依頼主の特定は、引き続きこちらで進めていくわ。
うまくすれば、あの殺し屋とやり合わずに事を治める事ができるかもしれないし」
「はい、お願いします。私、依頼主に言いたい事が山ほどあるんで」
柊さんはそう言うと、資料室から出て行った。
これは一刻も早く依頼主を突き止めないと、話がますますややこしくなっちゃうなぁ。
なんて他人事のように思っていると、柊さんが完全に立ち去ったのを確認した園真会長が、
机の上に一枚の写真を出して言った。
「さて、ここからが本題よ。殺しの依頼人だけど、ある程度特定できたわ。
瞬きの潟奈が丸山第三ビルに現れた時、その様子を違うビルの屋上から見ていた人間が居たのよ」
その言葉を聞いて写真を覗き込むとそこに、
向こうのビルからこちらの様子をうかがう一人の人物が写っていた。
遠いので少しぼやけてはいるけど、その人物はシテ高の制服を着た女子で、
この人物には私も見覚えがあった。
柊さんに片思いをしている与田君に、片思いをしている数人の女子の中の一人。
しかも一際熱い視線で与田君の事を見つめていたあの子だ。
クラスは違うけど、少なくともシテ高の生徒である事は間違いない。
「この人が、柊さんを殺そうとしている人なんですか?」
私が尋ねると、園真会長は至って冷静な口調で続けた。
「限りなくその可能性が高いわね。
けど、本当に偶然この場に居合わせただけかもしれないし、確実な証拠はまだ掴めてないわ」
すると机の写真を摘みあげた綾芽が、それをひらひら振りながら言った。
「この人、私と同じクラスの人ですよ。明日呼び出して、話を聞いてみましょうか?」
「ちなみにこの子、何て名前なの?」
私が尋ねると、綾芽はう~んと考え込んだ後、やっと思い出したようにこう言った。
「信濃根さんです。信濃根多美!」




